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No.0525 人間学・ホスピタリティ | 評伝・自伝 『中江藤樹』 久保田暁一著(致知出版社)
2012.01.09
『中江藤樹』久保田暁一著(致知出版社)を再読しました。
本書は、教師生活50年になろうとする著者が、偉大な教育者とされる中江藤樹の生き方と思想の本質に迫った本です。
中江藤樹は、江戸時代初期を代表する儒者です。朱子学も学びましたが、日本のおける最初の陽明学者として名高い人です。近江の人で、自宅の藤の木にちなみ、「藤樹先生」と呼ばれて親しまれてきました。「近江聖人」という名で称える人も多いです。
藤樹は17歳で『論語』と出会い、朱子学を独学。19歳で大洲藩(愛媛県)に郡奉行として奉職。27歳のとき病弱な母の世話を理由に官を辞するが許されず、やむなく脱藩して帰郷しました。のちに主著『翁問答』において、「明徳をあきらかにするが孝行の本意にて候」あるいは「身を離れて孝なく、孝を離れて身なき」と述べた藤樹は、まさに「孝」に生きた人であったのです。
本書は、あくまで藤樹を論じつつも、同時に著者独特の視点によるユニークな教育論、人生論にもなっており、引用文献も幅広いです。遠藤周作、三浦綾子、相田みつを、中村久子にヘレン・ケラーと、意外な名前が次々に登場してきて読者を飽きさせません。
また、本書の第二部には、先賢たちの藤樹観が収録されており、これも興味深いです。
ちなみに内村鑑三は、『代表的日本人』の中で藤樹を「日本の産みし最も聖人らしき最も進歩した思想家の一人」「理想的な学校教師」と称えました。
「近代日本最高の知性」と呼ばれた小林秀雄も、藤樹について「偉大な先哲」「生涯をかけて、純粋一途に独自に道を求め続けた人」と述べ、絶賛しています。