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No.0805 芸術・芸能・映画 『別冊映画秘宝・円谷プロ怪奇ドラマ大作戦』 円谷プロ編(洋泉社)
2013.10.04
『円谷プロ怪奇ドラマ大作戦』というMOOKにハマッており、毎晩寝る前に少しづつ読んでいます。全部で160ページにもかかわらず価格は2310円ですが、この高密度の内容なら安すぎるぐらいです。とにかく丁寧に作られており、円谷プロ怪奇ドラマの大ファンであるわたしには失神したくなるぐらい嬉しい企画です。いや、ほんとに。
本書の目次構成は、以下のようになっています。
「円谷怪奇ドラマの世界」 金田益実
怪奇大作戦
●解説(白石雅彦)
●登場人物紹介&出演者コラム
●装備紹介
●全話解説
●pickup review
「壁ぬけ男」 小中和哉
「恐怖の電話」 小中千昭
「青い血の女」 金子修介
「かまいたち」 柳下毅一郎
「美女と花粉」 中野貴雄
「京都買います」 みうらじゅん
●pickup Interview
勝呂誉、桜井浩子、永野路子、田村奈巳、ささきいさお、花ノ本寿、中山克己、高野浩幸、鶴賀二郎、小林正明、藤川桂介、田口成光、東條昭平、安藤達己、中野稔、高山篤
●橋本洋二 10000字インタビュー
●関係者コメント
田村奈巳、田辺和歌子、若山真樹、田村奈巳、深田達郎、佐川和夫、安藤達己
●怪奇大対談
小林哲也×池谷仙克×稲垣涌三
●恐怖と怪奇の間に(上原正三)
●スチールギャラリー
恐怖劇場アンバランス
●解説(金田益実)
●登場人物紹介&出演者コラム
●全話解説
「木乃伊の恋」 大和屋暁
「死を予告する女」 轟夕起夫
「殺しのゲーム」 磯田勉
「仮面の墓場」 木原浩勝
「死骸を呼ぶ女」 真魚八重子
「地方紙を買う女」 馬飼野元宏
「夜が明けたら」 太田愛
「猫は知っていた」 小山正
「死体置場の殺人者」 鷲巣義明
「サラリーマンの勲章」 山田誠二
「吸血鬼の絶叫」 雀野日名子
「墓場から呪いの手」 菊地秀行
「蜘蛛の女」 桂千穂
●pickup review
緑魔子、楠侑子、横山リエ、八代万智子、三谷昇、冨田勲、明田川進、小林正明、上原正三、藤川桂介、滝沢真里、小山内美江子、森川時久、長谷部安春、山際永三、満田かずほ、熊谷健、大岡新一
●関係者コメント
勝呂誉、ささきおいさお、宮坂清彦、鈴木儀夫、江村奈美
●スチールギャラリー
緊急指令10-4・10-10
●解説(青井邦夫)
●登場人物紹介&出演者コラム
●装備紹介
●全話解説
●pickup Interview
黒沢年雄、牧れい、鶴ひろみ、柴田美保子
●pickup review
雪室俊一、原口智生
●円谷プロの幻のTVムービー(中島紳介)
「土曜ワイド劇場 怪奇! 巨大蜘蛛の舘」 真魚八重子
「土曜ワイド劇場 白い手 美しい手 呪いの手」 山田誠二
「土曜ワイド劇場 怨霊! あざ笑う人形」 加藤義彦
「土曜ワイド劇場 怪奇! 金色の眼の少女」 山田誠二
「時代劇スペシャル 怪談累ヶ淵」 高鳥都
東海テレビ「君待てども」 加藤義彦
「火曜サスペンス劇場 麗猫伝説」 真魚八重子
本書の表紙は情報満載!
●円谷怪奇ドラマの後継作品
「サイバー美少女テロメア」 三輪ひとみ
「ムーンスパイラル」 右田昌万
「餓鬼魂」 若狭新一
「AM3:00の恐怖」 笠井正俊
●円谷怪奇ドラマの遺伝子(中島紳介)
●対談 真理アンヌ×久万里由香
●円谷怪奇俳優紳士録
●放送データ
●放映リスト
裏表紙は、こんな感じです
冒頭の金田益実氏による「円谷怪奇ドラマの世界」から、もう素晴らしい! 「空想特撮から現代の怪奇へ」として、「ミステリー・ゾーン」「世にも不思議な物語」「スリラー」「ヒッチコック劇場」「ショック!」、そして「アウターリミッツ」といったアメリカの怪奇テレビシリーズの影響を受けて、日本で「ウルトラQ」や「怪奇大作戦」が誕生したことがよくわかります。ともにTBSの番組でした。怪奇ドラマに詳しい金田氏は、次のように書いています。
「70年代の円谷プロ作品では、『緊急指令10-4・10-10』(NET)が怪奇路線を継承し、昼メロ枠の『君待てども』(東海テレビ)、後の『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日)や数本のテレフィーチャーでも特撮と怪奇の競演は続いていく。これらの原点となった『怪奇大作戦』、そして『恐怖劇場アンバランス』は、『ウルトラQ』からスタートした円谷英二監修による60年代作品の終焉であり、70年代円谷プロ特撮への幕開けでもあった。
空想特撮シリーズ『ウルトラQ』の第2作が『ウルトラマン』であれば、現代の怪奇シリーズ『怪奇大作戦』に続く作品が『帰ってきたウルトラマン』と、その後の『A』、『タロウ』、『レオ』になる。怪奇とロマンに彩られ、怪しい輝きを放つ特撮世界もまた、もう1つの”光の国”かも知れない」
わが円谷怪奇ドラマDVDコーナー
最後の「円谷怪奇俳優紳士録」もナイスな企画でした。岸田森、天本英世、大村千吉、浜村純、柳谷寛、木田三千雄、大泉滉、三谷昇、山本廉といった俳優がずらりと並んでいるのですから、ファンにはたまりません。わたしは円谷プロの怪奇ドラマが昔から三度の飯より好きで、「ウルトラQ」「怪奇大作戦」「恐怖劇場アンバランス」のDVDはすべて所持しており、ときどき思い出したように観賞しています。もちろん、「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」のDVDも持っています。ただ、円谷怪奇ドラマの歴史で忘れることのできない「緊急指令10-4・10-10」は一度も観たことがありませんでしたし、その存在すら知りませんでした。本書の刊行に合わせたかのごとく発売されたDVD-BOXを購入して、たまの休日などにまとめて観ましたが、「ウルトラQ」や「怪奇大作戦」に比べるとチープな印象があります。
「緊急指令10-4・10-10」は、1972年の7月3日から12月25日に、毎週月曜日に放送された特撮ドラマです。「10-4・10-10」とはアメリカのCBや警察無線で使われる用語で、「10コード」と呼ばれるものです。「10-4」(テンフォー)は「了解」、「10-10」(テンテン)は「通信終わり」を意味する略語とか。
アマチュア無線を駆使して民間の捜査チームがさまざまな情報を交換するさまは、まるで現在のLINEを彷彿とさせます。次々に起こる怪事件も興味深く、ストーリーはなかなかのものなのですが、なにぶん怪獣や怪人の造形が決定的にチープです。しかし、児童虐待をテーマにした「僕は泣かない」とか、少年非行をテーマにした「非行少女カオリ」など、「社会派100%」みたいな、まったく怪奇とは無関係な作品もあって、ちょっと混乱してしまいます。でも、いくらチープとはいっても、名作「怪奇大作戦」の残り香を感じて、わたしは全24話を楽しみながら観てしまいました。
本書によってその存在を知り、DVDを購入した作品が他にもあります。中島紳介氏が「円谷怪奇ドラマの遺伝子」の中で触れている「怪奇大作戦セカンドファイル」および「ネオ・ウルトラQ」です。2007年4月2日から16日にかけてNHKデジタル衛星ハイビジョンで放送された「怪奇大作戦セカンドファイル」は、「呪怨」の清水祟、「リング」の中田秀夫といったJホラーの俊英たちを演出で起用し、西島秀俊、田中直樹(ココリコ)、青山草太、美波、岸辺一徳、寺田農といったキャスティングで新時代のSRIを表現しています。エピソードは「ゼウスの銃爪」 、「昭和幻燈小路」、「人喰い樹」の全3話ですが、どれも面白かったです。もちろん、オリジナルシリーズの魅力にはかないませんが・・・・・。
しかし、2013年1月12日から3月30日までWOWOWで放送された「ネオ・ウルトラQ」のほうは、ちょっと残念な感じです。全12話ですが、わたしはDVDの第1巻に収録されている「クオ・ヴァディス」と「洗濯の日」の2作しか観ていません。どちらも何の説明もなく、最初から怪獣が存在しており、どうしても違和感がありました。「クオ・ヴァディス」の怪獣保護という視点は環境問題的でユニークだと思いましたが、いかんせん巡礼怪獣ニルワニエが小さすぎて物足りません。「洗濯の日」の洗濯怪獣ブレザレンはピグモンみたいで愛嬌はあるのですが、最後のオチは「おいおい、それはないだろう!」とちょっと腹が立ちました。やはり、わたしにとっては「ウルトラQ」も「怪奇大作戦」もオリジナルへの魅力に勝てる作品はなかなか現れそうにありません。ただ、「怪奇大作戦セカンドファイル」の美波、「ネオ・ウルトラQ」の高梨臨の両ヒロインは、どちらも美しくて素敵でした。昔も今も、円谷特撮ドラマに美人の存在は欠かせませんね!