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No.0964 人間学・ホスピタリティ | 哲学・思想・科学 『西晋一郎語録 人倫の道』 寺田一清編(致知出版社)
2014.08.09
8月9日は、わたしにとって特別な日です。今年は会社が休みでしたので、長崎原爆投下時間の11時2分に自宅のリビングルームで黙祷しました。
それから、『西晋一郎語録 人倫の道』寺田一清編(致知出版社)を再読しました。「東に西田あり、西に西あり」と、かの西田幾多郎と並び称せられた日本最高の哲人・西晋一郎の語録集です。彼は、書評『一粒の麦』で紹介した社会思想家の丸山敏雄、『人生二度なし』などの多くの名著を残した教育思想家の森信三の共通の師です。
日本における「最後の哲人」と呼ばれた森信三が、「西博士と西田博士」なる講演で2人について語っています。
「このお二人は、ある意味では鎌倉期における道元・親鸞のように、今後も永久にその開始者としての栄誉を保つ方ではあるまいか。即ちこの二人の巨大な創始者の偉業を越える思想家というものは、将来いつの日か果して出現するか、私には見当がつかない」
いかに西晋一郎なる人物がすごかったのかがよくわかりますね。
森信三の薫陶も受けた編者は41歳にして開眼の機を得たといいますが、それは西晋一郎の「父母の恩の有無厚薄を問わない。父母即恩。」という一語であったとか。この一語からもわかるように、西は親の恩、そして「孝」の重要性を特に説いた。日本で「孝」を説いた人といえば、近江聖人こと中江藤樹が思い浮かびますが、西はまさに「藤樹学中興の祖」とされた人なのです。また、藤樹のみならず、石田梅岩、二宮尊徳といった先哲による「忠孝論」の継承者でもありました。
「この身あるは親があり家があるからであり、親があり家があるは国があるからであり、国があるは国の歴史があり、国の精神があるからである。」と喝破した西晋一郎。彼の言葉の数々は、国家意識、親や年長者に対する畏敬の念、物に対する愛重の念、それらを喪失した現代日本人への痛烈なメッセージとなっています。
なお、本書は『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも取り上げています。