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No.1483 プロレス・格闘技・武道 『昭和プロレス版 悪魔の辞典』 井上譲二著(宝島社)
2017.09.10
『昭和プロレス版 悪魔の辞典』井上譲二著(宝島社)を読みました。
この読書館でも紹介した『闘魂最終章』の著者がプロレスの真実を暴露する恐るべき辞典を書き上げました。『悪魔の辞典』といえば芥川龍之介の『侏儒の言葉』にも影響を与えたアンブロース・ビアスの著書が有名ですが、その猛毒性においては本書も負けていません。
本書の帯
本書の帯には、昭和プロレスを象徴するジャイアント馬場とアントニオ猪木の写真とともに、「猪木1000円、カーニー、使用許諾、ケーフェイ、生ジュース、負け役ほか黒歴史がわかる必須114語。元『週刊ファイト』編集長が解説! 禁断の”裏プロレス用語辞典”誕生」と書かれています。
本書の帯の裏
また、アマゾンの内容紹介には以下のように書かれています。
「昭和プロレスの隠語や名言について、『週刊ファイト』のレジェンド編集長が解説します。猪木、初代タイガーマスク、前田の名言、業界の陰口など、いまだ謎に包まれているプロレス村の言語=『プロレス語』を初公開エピソードとともに読み解き、プロレスの構造を浮き彫りにします。『マット界舞台裏』の未解決ミステリーをプロレス語によって解き明かす必携の一冊、いまのプロレスにあきたりないすべてのプロレスファンに捧げます」
全部で114語が取り上げられていますが、どれもショッキングな内容です。
「よく、ここまで書いたなあ」というぐらい、身も蓋もないほどプロレスの裏を暴いています。たとえば、「スティッフ」という言葉があります。攻撃するときに対戦相手に強い痛みを与えないようにするのがプロレスラーの技術です。それができないレスラーは海外では「スティッフ」、日本では「硬い」と見下げられ、仲間から敬遠されて無名のままで終わることが多いといいます。この読書館でも紹介した『1984年のUWF』によれば、前田日明は新日本プロレスで「スティッフ」扱いだったようです。
痛そうでもまったく痛くなく攻撃できる技術を持つレスラーは仲間から歓迎され、問題なく技を出し、受けてもらえるのですが、著者は書いています。
「私が考えるにその手の技で一番凄いのがキラー・カーンのダブルニードロップではなかろうか。135キロもある大男がコーナーポスト最上段から、正座のような姿勢で落ちてくるカーンのフィニッシュホールドは、スリーカウントを奪うのに説得力抜群の技である。技を受けた全レスラーが声を揃えて『全然痛くない』と言う。これぞプロ。どうりでカーンはアメリカでも仕事が途絶えなかったはずだ」
「体臭」のページでは、著者は「魔王」ことザ・デストロイヤーを取り上げ、以下のように述べています。
「魔王の場合はワキガ系の悪臭。しかも徹底した密着戦を得意とするスタイルなので、フィニッシュの足4の字固めに入るまでは、まずヘッドロックから首投げ→ケサ固めと、常に相手の顔面と魔王のワキが密着したまま流れるようなムーブが続くのだからたまらない。足4の字固めに入った瞬間、対戦相手は激痛と引き換えに、ようやく悪臭から解放されるというメカニズムだ。力道山、ジャイアント馬場、アントニオ猪木ら日本マット界の歴代エースは、テレビ画面ではわからない部分でも魔王と闘ってきたのである」
本書にはプロレスラーの知られざるエピソードも紹介されています。
「猪木1000円」では、アントニオ猪木の突出した金銭感覚を取り上げ、著者は以下のように述べています。
「国会議員になっても猪木の壊れた金銭感覚は止まらない。1992年、第1期議員時代、成田空港の書店で本を購入した猪木。猪木はこれで払っておいてと、『本代1000円借りました。猪木寛至』と書いた紙を秘書に手わたし、本代をツケにしようとしたとか。前田日明ではないが、『猪木なら何をやっても許されるのか?』の瞬間だ」
猪木といえば、現在、建国記念日に沸く北朝鮮を訪問しています。
日本の国益を損なうような事態にならないことを願うばかりです。
「ナイフ」では、初代タイガーマスクの佐山聡の「ナイフ」のごときキレ方が以下のように紹介されています。
「佐山のキレやすさは『本物』で、相手を選ばない。若手時代には巡業バスの後部座席からふざけて頭をはたいてきた先輩・長州力を睨みつけて黙らせたり、初代タイガーマスク時代にはマンションの保証人となってくれた恩人・坂口征二に対してもキレた。UFO時代には団体の方向性をめぐってキレかけたり、師匠・アントニオ猪木に対して『ぶっ殺すぞ!』と凄んでしまったエピソードもある」
「おいおい佐山よ、大丈夫か!」と言いたくなりますが、ここに紹介した4つの言葉以外に、なんと110もの言葉が本書には掲載されています。その1つ1つに、プロレスの夢や神秘性を崩壊させかねないような仰天エピソードが明かされているのですから、たまりません。昭和プロレスに熱狂した思い出のある方は、ぜひ本書を手に取り、大いにぶったまげて下さい!