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No.1614 オカルト・陰謀 『UFO事件クロニクル』 ASIOS著(彩図社)
2018.10.16
『UFO事件クロニクル』ASIOS著(彩図社)を読みました。「この一冊でUFOの謎と歴史が分かる!」というふれこみの本です。ASIOSとは、2007年に日本で設立された超常現象などを懐疑的に調査していく団体で、名称は「Association for Skeptical Investigation of Supernatural」(超常現象の懐疑的調査のための会)の略です。海外の団体とも交流を持ち、英語圏への情報発信も行うそうです。メンバーは超常現象の話題が好きで、事実や真相に強い興味があり、手間をかけた懐疑的な調査を行える少数の人材によって構成されているとか。
本書の帯
本書のカバー表紙には森の上空を飛行する空飛ぶ円盤の写真が使われ、帯には「ケネス・アーノルド事件から70年…。」「マンテル大尉事件、ギル神父事件、ソコロ事件、介良事件、甲府事件」「なぜUFOは現れるのか?空飛ぶ円盤の謎に迫る!」「『UFO人物事典』『UFO用語集』『UFO事件年表』も収録!」」と書かれています。
アマゾンの「内容紹介」には、以下のように書かれています。
「1947年6月、実業家のケネス・アーノルドがアメリカ西海岸のワシントン州を自家用機で飛行中、レーニア山付近で超高速で飛行する謎の物体を目撃する―これがすべての始まりだった。この日以降、世界中の空で未確認飛行物体が目撃され、従来の常識では説明できないような数々の怪”事件”が巻き起こるようになる。
首都ワシントンの上空を複数の未確認飛行物体が襲った『ワシントンUFO侵略事件』、大勢の人々がUFOとその乗員を目撃した『ギル神父事件』、森林作業員がUFOにさらわれた『トラビス・ウォルトン事件』、日本の貨物機がUFOと遭遇『日航ジャンボ機UFO遭遇事件』…。
なぜUFOは現れるのか。その謎を解くべく、UFO史に名を残す難事件の真相をASIOSが解説。UFO人物辞典や用語集、UFO事件年表など、付随する情報も網羅。この一冊を読めば、UFOの謎と歴史がよくわかる。UFOファン必携の書」
本書の「目次」は、以下のようになっています。
「はじめに」
第一章 1940年代のUFO事件
モーリー事件
ケネス・アーノルド事件
ロズウェル事件
マンテル大尉事件
アズテック事件
イースタン航空機事件
ゴーマン少尉の空中戦
【コラム】ナチスドイツとUFO
第二章 1950年代のUFO事件
捕まった宇宙人の写真
ワシントンUFO侵略事件
フラットウッズ・モンスター
プロジェクト・ブルーブック
ロバートソン査問会
チェンニーナ事件
ケリー・ホプキンスビル事件
トリンダデ島事件 ギル神父事件
【コラム】実在した空飛ぶ円盤 円盤翼機、全翼機の世界
第三章 1960年代のUFO事件
イーグルリバー事件
リンゴ送れシー事件
ヒル夫妻誘拐事件
ウンモ事件
ソコロ事件
ブロムリー円盤着陸事件
コンドン委員会
エイモス・ミラー事件
【コラム】宗教画に描かれるUFO
第四章 1970年代のUFO事件
介良事件
パスカグーラ事件
ベッツ・ボール事件
甲府事件
トラビス・ウォルトン事件
セルジー・ポントワーズ事件
バレンティッチ行方不明事件
ブルーストンウォーク事件
【コラム】円盤の出てくる活字SF
第五章 1980、90年代のUFO事件
レンデルシャムの森事件
キャッシュ・ランドラム事件
毛呂山事件
開洋丸事件
日航ジャンボ機UFO遭遇事件
マジェスティック12
カラハリ砂漠UFO墜落事件
ベルギーUFOウェーブ
異星人解剖フィルム
【コラム】7人のオルタナティブ・コンタクティー
【コラム】オカルト雑誌「ムー」正しいUFO記事の読み方
第六章 UFO人物事典
海外のUFO関連人物
日本のUFO関連人物
【巻末付録】UFO用語集
【巻末付録】UFO事件年表
「執筆者紹介」
このように本書には、年代順に主なUFOに関連する出来事や事件が取り上げられ、その概要が説明され、さらにはASIOSによる真相解明が御紺われています。もちろん、懐疑的なASIOSですので、彼らが推測する内容は推して知るべしですが、なかなかの説得力がありました。UFOに関心のある人なら、資料として1冊備えておくと便利ではないでしょうか。
「【はじめに】UFO時代の幕開けから70周年によせて」の冒頭では、ASIOS代表の本城達也氏が以下のように書いています。
「1947年6月24日――この日、アメリカのワシントン州レーニア山上空で、実業家のケネス・アーノルドが9つの謎の飛行物体を目撃しました。世に言うケネス・アーノルド事件です。アーノルドによれば謎の飛行物体は、音速の2倍のスピードで飛んでいたといいます。当時、そのような超音速の航空機は知られていませんでした。この謎の飛行物体に関するニュースは、またたく間に全米を駆け巡ります。さらに翌月までには日本を含む海外にも広まっていきました。こうして幕を開けたのが現代のUFO時代です」
ASIOSは心霊、超能力をはじめ、さまざまな超常現象を調査する団体ですが、今回UFOをテーマに選んだきっかけは、本書が刊行された2017年が、UFO時代の幕開けから70周年にあたることでした。本城氏は以下のように述べます。
「UFOの世界には、夢やロマンを抱く人もいます。陰謀論を主張する人もいます。自分が本気を出せば24時間で問題解決できると豪語した哀れな天文学者もいました。ですが実際は、深く入り組んだ迷路のようでもあり、進めば底なし沼が待っているような世界でもあるかもしれません。理性を携えることは重要です」
一条真也のハートフル・ブログ「UFOについて」にも書きましたが、2011年5月8日に東京・新宿にUFOの大群が出現したそうです。ネットを中心に大変な話題になっています。その画像がYouTubeに早速アップされましたが、これまでに233万件近くのアクセスを集めています。映像撮影者本人という方は、こう書いています。
「東京新宿の上空でUFOの大群が出ましたので、撮影しました。2011年5月8日の15時頃(訂正:16時頃だったかも)、目撃&撮影場所は北新宿3丁目です。20名を超える人数で目撃しました。最初目撃時は100機くらいいるんじゃないか!?という大群でしたが、段々移動しながら減り、撮影時には20機くらいに減りました。映像でも数機編隊になっているのが映っています」
映像では、中年婦人らしき人が「朝日新聞に電話して!UFOだよ~。ほら、UFO!読売新聞!日本がたいへんですよ~!ちょっと、マジで来てんだから!ほら、やばい!あたし、生まれて初めて見た~」と叫んでおり、異常な臨場感があります。しかし、こんな非常時に名前が出る「朝日新聞」と「読売新聞」はさすがですね。ただ、撮影者と思しき女性が、「見えな~い! どこ~?」と叫んでいますが、これだけ明確に撮影されている物体が見えないというほうが興味深いかも……。霊と同じく、UFOも見える人と見えない人がいるのでしょうか? また、撮影時は見えなかった人でも、撮影された映像ではUFOが判別できるのでしょうか。興味は尽きません。
「未確認飛行物体」としてのUFOの正体については、最もポピュラーな異星人の宇宙船説、秘密軍事兵器説、タイムマシン説、未知の空中生物説など、色々あります。ちなみに、心理学者のユングは著書『空飛ぶ円盤』(ちくま学芸文庫)で、幽霊もUFOも無意識の投影であると述べています。
そういえば、「バク転神道ソングライター」こと宗教哲学者の鎌田東二先生も、伊豆の弓ヶ浜でUFOの大群を見たことがあるそうです。50機くらいの編成だったそうですが、鎌田先生の友人の方は猫と一緒に3メートルくらいまでUFOと接近遭遇されたとか。
2011年といえば、3月11日に発生した東日本大震災によって福島第一原発事故が起こりましたが、5日後の3月16日には福島県上空でも新宿と似たような映像が撮影されたそうです。福島第一原発の放射能と関係があるとか、欧州フリーメーソンから入手した映像だとか、いろいろと騒がれているようです。「放射能とUFO」とくれば、やはり「不安」を核にした集合的無意識の投影といったイメージがあるのですが……。この福島UFOと新宿UFOが続いたことから、当時は「いよいよ世界終末戦争か!?」と不安視するブログなども見られました。
これらの映像の真偽については、わたしはノーコメントです。ただ、未曾有の国難にある日本でUFO騒動が起きたことには何らかの意味があるように思います。
UFOが最も頻繁に目撃されたのは冷戦時代のアメリカです。
冷戦時代に対立したアメリカとソ連の両大国は絶対に正面衝突できませんでした。なぜなら、両大国は大量の核兵器を所有していたからです。そのために両者が戦争すれば、人類社会や地球そのものの存続が危機に瀕するからです。そこで、第二次大戦後には、米ソ共通の外敵が必要とされました。その必要が、UFOや異星人(エイリアン)の神話を生んだのではないかと思います。
いわゆる「空飛ぶ円盤」神話が誕生したのは、本書でも詳しく紹介しているように、アメリカの実業家ケネス・アーノルドが謎の飛行物体を目撃した1947年です。第二次大戦から2年を経過し、3月には事実上の冷戦の宣戦布告であるトルーマン・ドクトリンが打ち出されています。東西冷戦がまさに始まったその年に、最初のUFOがアメリカ上空に出現したのです。かつて米ソ共通の最大の敵といえばナチス・ドイツでしたが、その後任として、宇宙からの侵略者に白羽の矢が立てられたとは言えないでしょうか。「UFOはナチスが開発していた」とか「ヒトラーは地球の裏側で生きていた」などというオカルティックな俗説が流行するのは、新旧の悪役が合体したイメージにほかなりません。
また、「なぜUFO神話はアメリカ合衆国で誕生したのか」という問題について、現代アメリカ文化の研究者である木原善彦氏が注目すべき説を発表しています。
木原氏は、著書『UFOとポストモダン』(平凡社新書)の中で、最も重要な点は、第二次世界大戦後にはアメリカがヨーロッパをしのいで近代の最先端を走ってきたことだと述べています。つまり、アメリカはさまざまな面で他の国に近未来図を提供していたわけですが、当のアメリカ自身には近未来図を提供してくれる存在が欠けていました。
もちろん、科学技術に裏づけられた近代のプロジェクトが描く青写真はあったのですが、そこに描かれた未来と現在との間に微妙なひびが入っていたのです。そのひびから偶然垣間見えたのがUFOという天空の光点でした。それは、「核に代表される新しい超科学技術と疑似科学的超科学技術とのはざまに見えた光」と木原氏は表現しています。
一条真也のハートフル・ブログ「ビンラディン殺害に思う」にも書きましたが、アメリカは世界最大のキリスト教国家でもあります。拙著『ユダヤ教vsキリスト教vsイスラム教』(だいわ文庫)に書いたように、キリスト教諸国はイスラム教諸国を目標に発展してきた時期がありました。かつて、イスラム社会がヨーロッパに提供し、ヨーロッパがアメリカに提供し、アメリカが日本に提供してきたものこそ「近未来図」だったのです。先を走るランナーのいなくなったアメリカは、その幻影を天空に見たのでしょうか。そう考えると、UFO神話が、現在に至るまで最も広く浸透したのはアメリカであることの説明がつきます。また、イスラム諸国の上空にはまったくと言ってよいほどUFOが出現しなかったことも納得できるでしょう。
アメリカは、「新たな敵」としてのイスラムにも、エイリアンにも、憧憬を裏返したような屈折したコンプレックスと強い恐怖心を抱いていたのです。そして、冷戦時代の「新たな敵」としてのエイリアンと、冷戦後の「新たな敵」としてのイスラム教徒は、あの9・11以降、アメリカ大衆のイメージ上において融合しました。その顕著な例を、「未知との遭遇」や「E.T.」のスティーブン・スピルバーグが、H.G.ウェルズの古典的SFを再映画化した「宇宙戦争」に見ることができます。度外れた破壊力でアメリカ人を殲滅しようとする外敵のイメージは火星人というよりは、オサマ・ビンラディン率いるテロ組織アルカイダに限りなく近いものでした。
2005年に公開された「宇宙戦争」には9・11のアメリカのトラウマが色濃く出ていますが、その9・11以降のアメリカではほとんどUFOの目撃談を耳にしなくなりました。その9・11の首謀者とされたビンラディンがアメリカによって殺害された直後、放射能問題に揺れる日本でUFO騒動が起きたというのは単なる偶然だったのでしょうか? UFOについていろいろ考えると興味は尽きませんが、まあ、あまり真剣に考えない方が無難でしょうね。たぶん。