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No.0715 エッセイ・コラム 『刑務所なう。シーズン2』 堀江貴文著(文藝春秋)
2013.04.23
『刑務所なう。シーズン2』堀江貴文著(文藝春秋)を読みました。
著者の『刑務所なう。』の第二弾です。サブタイトルは「前歯が抜けたぜぇ。ワイルドだろぉ?の巻」です。また、帯を模した表紙の下部には「ホリエモン、30kg激ヤセ! でも日記は1.5倍増!」「実録マンガも大盛りだよ!」と記されています。
また、裏表紙には、以下のように書かれています。
「ホリエモン劇的ビフォーアフター
外見→95キロ→65キロ。モヒカン→丸刈り。前歯なし!
味覚→酒なしで脂肪肝正常化。きな粉を愛する甘党に。
人格→介護作業を経験してやさしくなりました(本人談)。
学習→読書300冊、映画100本、航空機免許も勉強中。
意欲→セカンド道程2年目。シャバに出たらビジネスも頑張るぞ!」
3月27日、わたしたちは30kg減のニュー・ホリエモンを見て、驚かされました。旧ライブドアの元社長であった著者は、2011年に証券取引法違反罪で実刑(懲役2年6月)が確定し、服役していましたが、この日、収監先の長野刑務所から仮釈放されたのです。出所するとすぐさま、その様子を自身のツイッターで報告し、さらにはインターネットの動画サイトでは直近の様子が生中継されました。テレビのニュースなどにも大きく取り上げられ、日本中が30kgのダイエットによって精悍な表情になった著者を目撃したのです。
序文として「塀の中から皆さんへ」という挨拶文がありますが、その冒頭で著者は次のように書いています。
「早いもので、もう収監されてから1年半が過ぎ、坊主頭もガリガリに痩せた体にもすっかり馴染んできた今日この頃だ。もうすでに服役生活もラストスパートに入りつつあるはずなのに、全くそんな気分になれない。不思議なもので、この生活がデフォルト化してしまっているのだ」
デフォルト化したという刑務所での日々を記録したものが本書なのですが、前作にも増して本書には「足るを知る」といったニュアンスが感じられ、一種の渋い風物詩となっています。
最も面白かったのは、巻末の「刑務所図書館」です。著者が収監されている期間に読んだ本や鑑賞したテレビ映画の感想を記したものです。全部で172のレビューが掲載されていますが、最初に登場するのは『舟を編む』、最後に登場するのは『海賊とよばれた男』でした。この2冊の書評がとても著者らしくて、なかなか面白いのです。
まず、著者は『舟を編む』について次のように書いています。
「元々『CLASSY』に連載されていた小説。出版社でもとびきり地味な辞書編集部で、新しい辞書を完成させるまでの人間ドラマが見られる感動作。しかし、Wikipediaやネット辞書、スマホなどの普及で、この数年で彼らのやり方も時代とはマッチしなくなってきたことも多くあるだろう。途中で起こるハプニングやトラブルなどプログラミングができれば解決できることなどもあり、登場人物たちに手を貸してやりたくなることも多々あった」
(『刑務所なう。シーズン2』p.550)
また、『海賊とよばれた男』については次のように書いています。
「出光興産の創業者、出光佐三の生涯を追った大河的経済小説だ。私も元経営者として共通している部分とそうでない部分を比較しながら読み進めた。『タイムカードなし、労働組合なし、定年なし』という点は、実は共通している。マスコミの作り出した私のイメージとは違うかもしれないが、ライブドアは社員を大事にする会社だった。特に技術者を大事にしていた。
違う点は、株式を公開するかしないか。佐三は顔の見えない株主の為に経営するのは真っ平だという方針だったらしいが、それでは過少資本で銀行に頼るしかなくなる。実際、出光は何度もそのせいで経営危機に陥っている。
私は銀行に頼る経営は不安定だと確信して株式公開し、見たこともない株主の為に奉仕することを選んだ。
どちらが正しいというのはないと思うし、大事なのは自分の信じた道を突き進む・決断するということだ。そして、ときにはリスクを取るのである。日章丸がイランのアバダン油田を目指すシーンは手に汗を握る」
(『刑務所なう。シーズン2』p.575)
ここで取り上げた2冊はいずれも本屋大賞で1位に輝いた作品ですが、著者はともに5つ星のうちの4つを与えています。それにしても、著者にしか書けない書評であると思います。30kgのダイエットに成功し、大量の本も読めて刑務所生活も悪くないように思えますが、「塀の中から皆さんへ」の最後には次のように書かれています。
「ともあれ、みなさまは間違ってもこの様な場所に来ないように注意して生活してください。間違って入ってしまった。もしくは入っている人は、真面目に勤めて、できるだけ早く出られるようにしよう」
やはり、快適なようでも刑務所とは過酷な場所のようですね。
そして、刑務所慰問で有名な女性デュオ「ぺぺ」のくだりが興味深かったです。
「ぺぺ」は「Pai×2」と書きますが、デビュー10周年になります。彼女たちは鳥取県出身で、それぞれOL、看護師から歌手に転身しました。なんでも、彼女たちは全国の刑務所を慰問に回っているそうです。著者が体験した慰問コンサートは、303回目の刑務所慰問でした。「刑務所のアイドル」が存在しているなんて、初めて知りました。しかも、代表作のタイトルが「元気出せよ」だとか・・・凄すぎますね!
最後に、出所したホリエモンに1つのお願いがあります。あなたの豊富な芸能界人脈で、ぜひ「ぺぺ」をメジャーにしてあげて!