No.0733 帝王学・リーダーシップ | 経済・経営 『真実の瞬間』 ヤン・カールセン著、堤猶二訳(ダイヤモンド社)

2013.06.08

久しぶりに、『真実の瞬間』ヤン・カールセン著、堤猶二訳(ダイヤモンド社)を読み返しました。
ずいぶん前に読んで感銘を受け、拙著『ハートフル・カンパニー』(三五館)でも紹介した本です。少し前に今年の新入社員に「真実の瞬間」について話す機会があり、読み返したのです。

「真実の瞬間」とは、自社のサービス品質が、お客様に評価される決定的瞬間のことです。1985年ヤン・カールセンは、社長として赤字の続くSASの建て直しに入った時、サービスの向上がなければ生き残れないことを感じ、すべての従業員に「真実の瞬間」という言葉を説きました。

きっかけは、彼がSASで機内食のサービスを受けた時、汚れた皿が1枚あるのを見つけたことでした。彼は汚れた皿を見ているうちに嫌な気分になり、「この飛行機はエンジンの整備もいいかげんなのではないか」と思い、そこから「もしかすると、この飛行機は墜落するのでは」と非常に不安な気分になりました。

予約電話をとった時、チケットカウンターで発券する際、廊下ですれ違った時、食事を出した時などなど、1日5万回以上お客様と航空会社の誰かが接触する瞬間、すなわち真実の瞬間があります。その時、その会社のサービス品質がお客様に伝わり、瞬時に評価される、決定的な瞬間なのです。

1回でもさえない瞬間があったら、サービスの評価はさえないものになる。お客様を失うことにさえなります。逆に、素晴らしい瞬間を提供すれば、一生お客様の記憶に残る感動が生み出され、その後もその会社のファンになっていただけることもあるのです。支店や営業所で、空港カウンターで、電話での応対で、そして機内で、みんなが真実の瞬間を意識するようになり、自分の接客サービスの重要性を認識するようになりました。SAS社はその結果、奇跡的によみがえり、ヨーロッパでナンバーワンのサービスを誇る黒字会社となったのです。

顧客満足とは、1回1回の真実の瞬間の積み重ねの結果です。絶対にミスは許されません。真実の瞬間の公式は、100-1=0です。決して99ではないのです。ですから、ホスピタリティ・サービスという仕事は、本当に奥深く、プロフェッショナルな仕事なのです。このことを忘れてはなりません。

わが社の真実の瞬間は、わが社のスタッフが創り出しています。司会者が新郎新婦との打ち合わせもなく行き当たりばったりで披露宴の本番に臨んだり、ホワイトボードのペンのインクが切れていたりするのも真実の瞬間です。その場合、お客様を失うことは確実です。また、期待以上のサービスを受け、最高の結婚式や葬儀を行うことができたとお客様に感謝の言葉をいただくのも真実の瞬間です。ぜひ、素晴らしい真実の瞬間を創り続け、お客様に最高の満足を提供したいものです。

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