No.0795 コミック | プロレス・格闘技・武道 『天龍源一郎 酒羅の如く』 画・叶精作、原作・岡戸隆一(白夜書房)

2013.09.18

『天龍源一郎 酒羅の如く』画・叶精作、原作・岡戸隆一(白夜書房)を読みました。
プロレスラー・天龍源一郎選手の酒にまつわるエピソードを描いたコミックですが、いやあ、これがメチャクチャ面白かった! 表紙には豪快にウイスキーを瓶ごとラッパ飲みする天龍選手の勇姿(ハンサム!)が描かれ、帯には、「プロレスラーは酒でも最強!」「ジャイアント馬場、アントニオ猪木、リック・フレアー、藤原喜明、ザ・グレート・カブキ、二代目タイガーマスク、阿修羅・原、アンドレ・ザ・ジャイアントらと、『Mr.プロレス』天龍が呑んで闘い、また呑みまくる!」「強き男たちの酒豪エピソードを劇画化」と書かれています。作画は、『実験人形ダミー・オスカー』『オークション・ハウス』で知られる叶精作氏。その緻密な筆で伝説のレスラーたちと、酒の魅力を見事に描き出しています。また、プロインタビュアーとして知られる吉田豪氏による関係者インタビュー、さらには天龍選手本人によるコメンタリーなど盛りだくさんの内容です。

帯は、こんな感じです

帯の裏は、こんな感じです

本書の目次構成は、以下のようになっています。

1杯目   酒羅の気概
2杯目   酒羅の系譜
3杯目   酒羅の迎酒
4杯目   酒羅の群れ
5杯目   酒羅の師弟
6杯目   酒羅の真髄
7杯目   酒羅の岐路
8杯目   酒羅の苦杯
9杯目   酒羅の年酒
10杯目  酒羅の乱酒
11杯目  酒羅の源流
12杯目  酒羅を継ぐもの
吉田豪インタビュー  週刊ゴング元編集長・小佐野景浩

なお、本書の各所には、「天龍源一郎に訊く『酒羅のはしご酒』」として、「天龍スペシャル誕生秘話」「思い出のガイジン・シュラたち」「女房、そして娘へ」「ボスの思い出酒」「ヤング酒羅 in U.S.A」「去り際」「新日本レスラー」「品格」「酒羅たちよ永遠なれ!」と題したコメンタリーが掲載されています。

 叶精作氏の絵が素敵すぎます!

天龍選手といえばプロレス界きっての酒豪であるとされていますが、そもそも彼に豪快な酒の飲み方を教えた人物は、元NWA世界ヘビー級王者で「狂乱の貴公子」と呼ばれたリック・フレアーだそうです。天龍選手は、レスラー仲間はもちろん、マスコミ関係者に至るまで、「飲まない奴は一切信用しない」という信条の持ち主で、その飲み方もハンパではありません。「天龍スペシャル」と称して、ビール、焼酎、ウイスキー・・・・・あらゆる酒が注がれたアイスペールを回し飲みするのです。

「天龍スペシャル 彼氏歓迎バージョン」とは?

たとえば、天龍選手の愛娘の彼氏と一緒に飲んだときは「天龍スペシャル 彼氏歓迎バージョン」として、ウイスキー1本、ウオッカ1本、麦焼酎1本、レモンハイ少々が大量の氷とともにアイスペールに注がれました。彼氏はパンチパーマで巨体の”彼女のお父さん”にビビリながら、アイスペールの酒を飲みます。それは「凄い味」でありながら、意外と「美味い」酒でした。泥酔して気を失った彼氏が目を覚ますと、なんと上半身裸になった天龍選手が腕枕をして一緒に添い寝してくれていました。うーん、素敵すぎる!

 猪木vs.天龍の酒羅対決!

本書には、さまざまなプロレスラーたちも登場しますが、中でも9杯目「酒羅の年酒」に出てくる「燃える闘魂」アントニオ猪木氏のエピソードが面白かったです。天龍選手自身のコメンタリー「新日本レスラー」にも、このときの様子が次のように語られています。それは、ある年の1月2日に行われた東京スポーツ新聞社主催の「プロレス大賞」表彰式でのことでした。

「馬場さんが出席していない時で、MVPの猪木さんが『おめでとう!』って、受賞者ひとりひとりに握手してね。馬場さんはそういうことはしないから、『変わってんなあ、猪木さんって』と思ったよね。その流れで場の緊張感が緩んだ時に、『おお、天龍クン、飲もうよ!』と言われて。俺は『いや、試合あるんですけど』って断ったんだけどね。ガンガン一気飲みが始まって、猪木さんも結構強いんですよ。その日の試合はめちゃくちゃ調子が悪かったですけど、それでもジャンボと20分超えの試合をやりましたね」

 「天龍スペシャル」を飲み干す!

このとき、最後は「天龍スペシャル」を作って天龍選手は飲み干しましたが、それを見た猪木は「まぁ昼間っから気負って飲むこたあねえな!!」と笑い、「フフ・・・・・また飲ろうや」と言って、その場を去っていきました。海千山千の猪木氏がしたたかに天龍選手の気迫を削いだわけです。その後、1994年1月4日、2人はリングで相見えるのでした。

天龍源一郎というと、長州力と並んで、いつも不機嫌にしているイメージがありました。要するに「怖いプロレスラー」という印象なのです。しかし本書を読むと、飲んでいるときの彼はじつに陽気で楽しい人であることがよくわかります。それにしても、本書にはプロレスラーだけでなく、酒そのものが魅力的に描かれていて、たまらなく飲みたくなってきます。各種の酒を混ぜ合わせた「天龍スペシャル」なんて、本当に旨そうですもん。

しかし、最近は体調のために飲まなくなったという天龍は、「ご自身で天龍スペシャルを飲まれたことは?」という質問に対して、次のように答えています。

「俺はちょっと口をつけるだけですね。だって、俺が作って、回して、戻って来る頃にはもう残ってないんだから(笑)。漫画のように『見とけよ!』と、ガーッと飲んでみせたのは数えるほどしかないですよ」

わたしも、だいたいが酒飲みのほうなので、本書を読みながら「男は健康なんかに気を遣わず、ガンガン飲まなくてはいかん!」と思ったりしていたのですが、この天龍コメントを読んで冷静になりました。(微苦笑) 天龍選手には、いつまでも元気に頑張っていただきたいと思います。

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