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No.0886 コミック 『虹の娘』 いがわうみこ著(祥伝社)
2014.03.08
『虹の娘』いがわうみこ著(祥伝社)を読みました。
『亜人』、『僕だけがいない街』と同じく、『このマンガがすごい! 2014』(宝島社)を読んで知ったコミックです。同書のオンナ編にランクインされています。
『このマンガがすごい! 2014』(宝島社)より
いわゆる少女マンガなのですが、なんともいえない奇妙な味わいがあります。『このマンガがすごい! 2014』では、『虹の娘』のことを「ピカイチの観察眼! 恐るべき新人」「笑いとトキメキがじんわり 魅惑の低体温短編集」と評します。この「低体温短編集」というのが言い得て妙で、思わず納得してしまいました。
本書のカバー裏には、以下のような内容紹介があります。
「『お兄ちゃん アタシ親不孝かな』
ヒロチカの妹には、親にも言えない秘密がある。
芸術的な体でヌードモデルをする妹の”告白”の日を待つ兄は
ひそかにある作戦をくわだてる―。
表題作『虹の娘』のほか
不倫の末帰郷した女と男子中学生の加速する初恋。
死んだはずの兄が突如現れ動揺ずる家族、
イケメンとの三角関係に迷う純情乙女など
絶妙な間で彼らの”今日のできごと”を切り取った
8編を収録。妙に切なく、不思議にときめく」
交通事故で死んだ兄が帰ってくる「アマネの日記」
本書には、「阿部くんと吽野さん」「くらん くらんく くらんくらん」「アヒルにホッチキス」「愛され洋輔」「A子さん」「るりるり」「虹の娘」「アマネの日記」の8つのショート・コミックが収められています。いずれも、しみじみとした味わいがあります。その中で、最もわたしの心に響いたのは最後の「アマネの日記」でした。
成人しても家事手伝いをしているアマネは、5年前に兄を交通事故で亡くしています。悲しみのどん底にあった家族は、火葬の後、父と母とアマネで故人の骨を少しづつ食べたのでした。ようやく悲しい思い出が少しづつ風化していく頃、突然、死んだはずの兄が生前のままの姿で家に帰ってきます。当然ながら、みんな仰天しますが、兄は「さっき、車にひかれた」というだけで死んだ自覚はありません。また、どうやら死者である兄の姿は家族にしか見えないようでした。
それから、兄はそのまま家で暮らします。しかしながら、生前の恋人だった少女はすでに結婚して出産が近いなど、兄は時間の経過の大きさに戸惑います。そして、ある日、兄は突然消えてしまうのでした。
この物語は、しみじみと泣けました。名作です。愛する人を亡くした人は、誰でも「もう一度会いたい」と思います。そして、もしその願いが叶ったとしても、必ず別れはやって来ます。もちろん切なさは倍増しますが、それでも懐かしい故人に再会できる喜びは如何ばかりでしょうか。
死者が生前のままの姿で帰ってきるところは映画「黄泉がえり」を連想しました。さらに少女マンガということでいえば、いくえみ綾の名作コミック『トーチソング・エコロジー』にも通じるグリーフケアの雰囲気を持った作品でした。「もう一度会いたい」って、本当に切ないですね・・・・・。