No.0915 宗教・精神世界 『ゆるす言葉』 ダライ・ラマ14世著(イースト・プレス)

2014.04.23

 『ゆるす言葉』ダライ・ラマ14世著(イースト・プレス)を再読しました。
 書評『抱くことば』で紹介した本に続くダライ・ラマの言葉集、第2弾です。

 1980年代からチベットに入り、チベットの風景とそこで暮らす人々を見つめ、撮影してきた写真家・野町和嘉氏の素晴らしい写真もあわせて掲載されています。数々の賞を受賞しており、国際的な評価も高い野町氏と、ダライ・ラマ14世によるコラボレーション本です。

   怒りは力ではなく、弱さのしるしなのです。

 本書の帯には、「怒りは力ではなく、弱さのしるしなのです。」「『ゆるすとは何か?』『生きるとは?』という永遠不変のテーマから『チベット問題』まで―強くて優しいダライ・ラマの言葉」と書かれています。本書の目次構成は、以下のようになっています。

第一章 思いやり、愛するということ
第二章 自由と権力
第三章 祖国・チベットについて
第四章 再生、平和への道
ダライ・ラマ14世 記者会見(2008年4月10日 ヒルトン成田にて)
チベットの歴史
ダライ・ラマ14世の半生
ダライ・ラマ14世 Q&A

 それでは、本書に掲載されているダライ・ラマ14世の名言の中から、特にわたしの心に強く残った10の言葉を紹介したいと思います。

人類、さらにはすべての生きとし生けるもの
―人間も動物も―には、幸福を求め
平和に暮らす権利があります。
これとは反対に、他人に痛みや苦しみを
与える権利を持つ者など一人もいません。

ゆるしの気持ちを身につければ、
その記憶にまつわる負の感情だけを心から手放すことができるのです。
ゆるしとは「相手を無罪放免にする手段」ではなく、「自分を自由にする手段」です。

思いやりの心は人生で成功する究極の源です。利己的な考え方は他者を害するだけでなく、まさに自分が望んでいる幸福を阻害します。

私は誰と会おうと、古い友人として迎えようとしています。このことが私を本当に幸せな気持ちにさせてくれるのです。これが、思いやりの実践です。

ほんとうの意味の思いやりは、まず自分自身に対して向けられるべきものだと思います。
まず自分自身に思いやりを持ち、それを周りの多くの人たちに向けて広げていくのです。
つまり、自分自身を忌み嫌い、嫌悪しているような人は、他者を思いやることなど不可能なことだからです。

人権は万人共通の関心事です。
なぜなら、自由と平等、そして尊厳を求めることは人類に本来備わっている性質であり、私たちにはそれを獲得する権利があるからです。

不幸なことに、最も声をあげられない人々こそが、人権を奪われている人々なのです。
したがって、こうした自由を享受している私たちこそが責任を負っているのです。

経済は大切です。しかし、人間性はもっと大切です。人権や環境問題など、経済より大切なことはたくさんあります。利益を求めてビジネスの世界で関係を築いているときにも、大義を見失わないことが肝心です。

怒りと憎しみこそが、私たちの本当の敵なのです。これこそ私たちが全面的に立ち向かい克服すべき相手なのであり、人生に時として現れる一時的な「敵」は真の敵とはいえないのです。

死について常に意識しているなら、死が訪れても驚くことはありません。心配もいりません。
死とは衣服を着替えるようなものなのです。
したがって、死を迎えたとき心の平穏を保ち続けることができるのです。

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