No.0960 オカルト・陰謀 | 心理・自己啓発 | 心霊・スピリチュアル 『超常現象 科学者たちの挑戦』 梅原勇樹・苅田章著(NHK出版)

2014.08.03

『NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦』[NHK取材班]梅原勇樹・苅田章著(NHK出版)を読みました。
本書はNHKが超常現象に正面から向き合ったBSプレミアム放送番組(2014年3月22日初回放送)の書籍化です。超常現象とされるさまざまな事象について、NHKが「科学でどこまで説明可能なのか」を検証しています。そのタイトルから、この読書館でも紹介した『幽霊を捕まえようとした科学者たち』『超常現象を科学にした男』といった本が思い浮かびますが、実際、それらの内容と重なる部分が多かったです。

 「超常現象vs科学」と書かれた本書の帯

本書の帯には「幽霊、臨死体験、生まれ変わり、念力、透視、予知、テレパシー・・・・・・。」「超常現象VS科学 どこまでが判明し、どこからが謎なのか。」「世界各地を取材した果てに、たどりついた”答え”とは―。」「NHKスペシャル、BSプレミアムで放送!」と書かれています。

帯の裏では、本書の目次を紹介

本書の目次は、以下のようになっています。

「はじめに」大里智之

第一部 さまよえる魂の行方~心霊現象~ (梅原勇樹)
episode1 「幽霊」は未知なる存在か
episode2 「幽霊」を追い詰める科学者たち
episode3 「死後の世界」を垣間見た人々
episode4 生まれ変わりの子どもたち

第二部 秘められた未知のパワー~超能力~ (苅田章)
episode1 スプーン曲げはトリックだったのか
episode2 国家が認めた超能力
episode3 テレパシーと脳
episode4 すべての鍵は、人の”意識”

「あとがきにかえて」梅原勇樹&苅田章

 「超常現象 科学者たちの挑戦」の番組紹介(NHK公式サイトより)

本書のもとになった番組とは一体どのような内容だったのでしょうか? NHKスペシャル公式サイトでは、「超常現象 科学者たちの挑戦」について以下のように紹介しています。

「心霊現象、生まれ変わり、テレパシー・・・。時に世間を騒がす、いわゆる”超常現象”の正体は何なのか?いま、この命題に最新科学で挑もうという世界的な潮流が巻き起こっている。ムーブメントの背景には、近年の目覚ましい科学の進歩がある。技術の粋を極めた観測装置でデータを集積し、脳科学や物理学、統計学などの最新理論で解析すれば、カラクリを白日の下にさらすことができる。その過程は、まるで手品のトリックが明かされるような、スリルに満ちた知的発見の連続だ。
一方、『生まれ変わり』や『テレパシー』の中には、最先端の科学をもってしても、いまだメカニズムが解明できない謎も残る。科学者たちはその難題にも果敢に挑み、最先端の『量子論』を駆使するなどして、合理的な説明を目指している。先端を極める科学者たちは、『説明不能な超常現象』に新たな科学の発展を予感しているのだ。”超常現象”への挑戦を見つめ、科学の本質に迫る知的エンターテイメント」

それでは、どうして、このような番組をNHKが制作したのでしょうか? 本書の「はじめに」で、NHKスペシャル「超常現象」プロジェクト制作統括者の大里智之氏が次のように述べています。

「今回の番組のきっかけは、15年前にさかのぼる。そのころ、私はまだディレクターで、NHKスペシャル『四大文明』という番組を制作していた。エジプトの回を担当し、大ピラミッドを取材していたが、調べれば調べるほど、謎は深まるばかりだった。一体どうやって建設したのか。さまざまな仮説はあるものの、実際のところは、全くもって分からない。これだけ科学が進んだ現代でも合理的な説明ができないのだ。でも、ピラミッドは、現実に目の前にそびえている。まさに超常的な構造物だった。
以来、常識では説明できない超常的な事柄に興味を惹かれるようになり、いつしか超常現象そのものを番組化できないかと思うようになった。少しずつ取材を積み重ね、最初の企画書を書いたのが10年ほど前。しかし、NHKで超常現象を真正面から扱うことのハードルは予想以上に高く、なかなか企画が通らない。半ば諦めながらも、取材をやり直しては何度も企画を修正し、ようやく実現することができたのが、本書の基になっているザ・プレミアム『超常現象』(全2回。2014年1月放送)と、NHKスペシャル『超常現象 科学者たちの挑戦』(2014年3月放送)という番組である」

研究者によると、超常現象と報告されるものの99パーセントは、何らかの形で納得のいく説明がつけられるそうです。ただ、残りの1パーセントは、どうしても現代科学で説明できない不可思議な現象が実在するとも言われます。「現代科学で説明できない現象なんて存在するのか」と疑問を抱いたという大里氏は次のように述べます。

「日食とは、言わずと知れた太陽が月に覆われる自然現象である。現代の人々は、この現象を何ら不可思議だとは思わない。なぜなら、どうして日食が起きるか、その仕組みを知っているからだ。しかし、地球が動いているなんて知りもしなかった古代の人々の目には、日食はどう映っただろう。原因も分からず、突然太陽が消えて暗くなるなんて、人知を超えた神の仕業だ。日食は、全く説明不可能な超常現象だったに違いない。
だとすれば、今の時代にも、超常現象はあるのではないか。未来の人々には理解できるが、現代の我々には説明不可能な現象があっても全くおかしくないはずだ」

非常に面白い本でしたが、特に第一部「さまよえる魂の行方~心霊現象~」のepisode2「『幽霊』を追い詰める科学者たち」に登場する「パレイドリア効果」のくだりが興味深かったです。人間は、何でもない模様が、人の顔などに見えてしまうという特殊な性質を備えているそうで、それを「パレイドリア効果」と呼ぶます。床や天井の木目、郵便ポスト、コンセントなど身の回りの物が、ふっと人の顔に見えたりした経験を持つ人は多いはずです。また、いわゆる「心霊写真」もパレイドリア効果によるものだといいます。

イギリス・ロンドン大学の心理学者であるクリス・フレンチ博士は、超常現象に懐疑的な研究者として欧米ではよく知られています。そのフレンチ博士は、次のように述べています。

「パレイドリア効果とは、意味のないランダムな模様の中に、顔などの形があると思わせてしまう、一種の脳の錯覚です。これは、人類が進化の中で獲得した能力です。人間にとって顔の表情は、非常に重要な情報です。周りには常に敵がいる可能性があります。そのため、人の顔をいち早く捉えて敵か味方か認識し、迫りくる危険に備える必要があったのです」

第一部のepisode3「『死後の世界』を垣間見た人々」の冒頭には、以下のように書かれています。

「2013年3月9日と10日の両日、フランス南部の港町マルセイユで開かれた国際臨死体験学会は異様な熱気に包まれていた。医療関係者を中心に延べ2500人が会場に詰めかけ、チケットは完売。キャンセル待ちの列ができ、途中で帰る人から入場券を譲り受けようと交渉する姿もあった。そして会議場では連日、スタンディングオベーションが起きていた。
臨死体験―。死に瀕した人々が垣間見たという世界の報告に、今、注目が集まっている。その背景として臨死体験の報告が年々増加していることが指摘されている。医療の進歩のおかげで蘇生技術が発達し、死の間際から生還する人が格段に増えたからだ」

「臨死体験」といえば、NHKが1991年3月17日に放送されたNHKスペシャル「立花隆リポート 臨死体験~人は死ぬ時 何を見るのか~」を思い出します。放送直後、日本では臨死体験ブームが起きました。あれから、22年後の現在、再び「臨死体験」が熱い注目を浴びているとは知りませんでした。近く、最新の「臨死体験」情報をふんだんに盛り込んだNHKスペシャル番組が計画されているそうです。もちろん、立花隆氏も出演されるそうで、とても楽しみですな。

それから第一部のepisode4「生まれ変わりの子どもたち」では、「前世の記憶は、科学で解明できるのか」という問題が取り上げられます。コーネル大学の発達心理学者であるスティーブン・セシ博士は、人間の記憶を研究する専門家として有名です。高い信頼を得ていて、裁判などでも意見を求められる機会も多いとか。そんなセシ博士は、子どもの記憶について次のように述べています。

「子どもは、生まれてから2年間くらいは”幼児期健忘”と呼ばれる時期に当たり、詳細な記憶を持てません。そしてその後、徐々に記憶を形成していきます。そのころ、同じ話を何度も聞くと、それを実際に経験したと思い込むのです」

子どもが作る、偽りの記憶。これこそが、前世の記憶の正体だとセシ博士は考えているのです。さらにセシ博士は次のように言います。

「子どもに対して親は、どんな話を読み聞かせたのか、どんなテレビ番組を見せたのか、意外なほど忘れてしまっています。そして子どもはさまざまな記憶を混同します。それが前世の記憶なのでしょう」つまり、セシ博士は「前世の記憶は子どもの作り話だ」と断言しているのです。もっとも、本書には「前世の記憶が特定されたという事例」も紹介されており、セシ博士の「偽りの記憶」説だけでは説明がつかないことも指摘されています。

第二部「秘められた未知のパワー~超能力~」のepisode1「スプーン曲げはトリックだったのか」には、なんとユリ・ゲラーが登場します。日本中を超能力ブームに巻き込んだ張本人をNHKが取材するのは初めてだそうです。現在のユリは相変わらず、超能力を見せるショーを各地で開催しているとか。そんなユリの超能力をさまざまな角度から検証した上で、NHKディレクターの苅田章氏は次のように述べます。

「科学の世界では、万人を納得させることができる証拠を示せた時に、初めて成果が認められる。それまで、誤謬や実験上のミスがないかどうか徹底的に精査されなければならない。しかしどんなに荒唐無稽な現象でも、厳しい検証をくぐり抜けさえすれば、科学的に正しいと認知される。過去には非常識だとされたことが、現代では常識となり、科学の根幹をなしているケースは枚挙にいとまがない。そうした科学の醍醐味、ダイナミズムを、「超常現象」という分野を通じて示したいというのが私たちの志である」

第二部のepisode3「テレパシーと脳」には、非常に興味深いエピソードが紹介されていました。テレパシーと脳科学の間の深い縁についての以下のようなエピソードです。

「1920年代に、脳波を発見し脳波計を発明したのは、ドイツのハンス・ベルガーだ。彼が脳の謎を解明しようと思い立った動機は、なんと自分自身のテレパシー体験だったという。若きベルガーは騎兵隊に志願し、乗馬の訓練に励んでいた。ある朝、ベルガーが乗っていた馬が突然暴れ出し、ベルガーは宙に放り上げられ落馬してしまった。その時、別の馬に引かれた鋼鉄の大砲が目の前に迫ってきた。潰される、もう駄目だと思ったとベルガー。ところがすんでのところで馬が立ち止まり、命拾いした。
ちょうどそのころ、遠く離れたベルガーの実家では仲の良かった姉がわけもなく、不吉な気持ちに襲われていた。ベルガーの身に何か悪いことが起きたに違いないというのだ。彼女があまりに心配するので、父親はベルガーに電報を打った。それまで電報など受け取ったことがなかったベルガーは、驚く。この不思議な一致は、きっと自分が感じた死の恐怖を仲のいい姉が感じ取ってくれたからだ、死の危険に直面して自発的に起こったテレパシーだとベルガーは考えた。そして彼は、不思議なテレパシーの源は脳にあるのではないかと考え、その謎の解明に生涯を捧げることを決意したのである」

そして、ベルガーのその後の人生は以下のようなものでした。

「長年の努力によって、彼はついに脳波の記録法を発見する。最初の情熱を忘れることなく、彼は催眠状態におけるテレパシーの実験を繰り返したが、その謎はついに解明できなかった。しかし、その大きな副産物として、脳波の記録という現代の脳神経科学に欠かせない技術が得られたのである。この技術が人類にもたらした恩恵たるや計り知れない。
『脳波の父』、ベルガーの歴史秘話は、超常現象への挑戦が時として科学に大きな進歩をもたらすことを示している。こうしたことが、現代においては起こらないと誰が決めつけることができるだろうか。超常現象への挑戦は、新たな科学の可能性を切り開くかもしれないのである」
わたしは、このくだりを読んで、深い感動をおぼえました。

そして、第二部のepisode4「すべての鍵は、人の”意識”」は、これ以上ないほど刺激的なレポートでした。アメリカ・ネバダ州のブラック・ロック砂漠で1週間開催される「バー二ングマン」という巨大イベントについてのレポートです。会場の中央には高さ12メートルの巨人の像が置かれます。これは「ザ・マン」と呼ばれ、バー二ングマン全体のシンボルとなる存在です。第1回以来、イベントのクライマックスではこの巨人像が燃やされます。めいめい楽しんできた参加者たちも、この時ばかりは巨人像の周りに集まり、すべての意識を一斉に巨人像に注ぐそうです。

この巨人像が燃やされるクライマックスを利用して、人間の未知のパワーを探る実験が行われました。考案したのは、精力的に超心理学の実証的な研究を行っていることで知られるディーン・レイディン博士です。本書には、次のように書かれています。

「レイディン博士がバーニングマンという巨大なイベントを利用して検証しようとしているのが、『人間の意識には目に見えない未知のパワーがある』という仮説だ。それを実験するのにうってつけだと彼が期待したのが、バーニングマンにやってくる大勢の人々の『意識のパワー』だ。仮に人間には誰にでも未知のパワーが備わっていたとしても、1人1人のパワーはとても小さいに違いない。それでも、7万人もの意識が集結すれば、何か”目に見える変化”が起きるのではないかと考えたのである」

レイディン博士の実験の背景にある考えを、本書は次のように説明します。

「意識が集中する時、意識の『コヒーレンス』状態が生み出されると考えられている。コヒーレンスとは『一貫性、整序』という意味であるが、要するに『足並みがそろっている』状態を表す。意識のコヒーレンスが生まれることによって、人間の意識に潜む未知のパワーを目に見える形で検出できるのではないかというのだ。もしも成功すれば、今まで捉えどころのなかった意識の正体に、一歩近づけることになるかもしれない」

そして、実際どうなったか。なんと、イベント6日目の午後9時に巨人像が燃やされた瞬間、実験用の乱数発生器に極度の偏りが見られたのです。本書には、次のように書かれています。

「イベント6日目の午後9時ごろだけに見られた異常な偏り。ここで、私たちが正確な時刻入りで記録した映像がものをいった。映像を確認すると、ちょうど巨人像の手が上がり始めた時刻と偏りが最大だった時が同じだったのである。今か今かと始まる瞬間を待っていた観客。これから巨人像が燃やされるという合図を見守る7万人の期待感が一気に高まった時だ。それと同時に、0と1の現れ方が6台の乱数発生器で同時に大きく偏るという現象が発生していたのだ」

さらに、この驚くべき出来事について、以下のように書かれています。

「いよいよこれからクライマックスという瞬間に、鋭いピークを持つデータの異常が生じたことを確認できたのは非常に興味深い。過去の乱数発生器のフィールド実験では、ある一定の時間で偏りの累積を解析するケースが多いが、今回のようにピンポイントな異常が生じたケースは非常に珍しいのである。人間の意識のコヒーレンスと乱数発生器の異常に、何らかの相関関係があることを示唆する力強い結果だとレイディン博士は言う。
『7万人の意識が一斉に高まったことが波紋のように乱数発生器に何らかの影響を及ぼしたのかもしれません。興奮で手が震える思いです!現代科学では説明できない現象を捉えたんですから!』」

わたしは、このレポートを読んで驚くとともに納得もしました。オリンピックやワールドカップなどのスポーツの大一番では、このように多くの人々の意識が一斉に高まることは珍しくありません。わたしが自分で思い当たるのは、プロレスや格闘技の場合です。かつて、わたしは東京ドームでヒクソン・グレイシーと高田延彦や船木誠勝の試合を観戦しましたが、試合開始の瞬間、それから決着の瞬間の盛り上がりは大変なものでした。さらには、中高生の頃にテレビ観戦したアントニオ猪木とモハメッド・アリとの「格闘技世界一決定戦」の試合開始の瞬間の盛り上がりといったら、ハンパではありませんでした。あのとき、乱数発生器のフィールド実験を行えば、確実に成果を上げたと確信します。

それから、「テレパシーと『量子もつれ』」のくだりも非常に興味深かったです。「量子もつれ」を取り上げるあたりに、「超常現象研究のアップデート」を感じました。本書では、「量子もつれ」について次のように説明しています。

「『量子もつれ』を理論的に提起したのは、あのアインシュタインである。アインシュタインは、その根本に確率論的な性質をはらんでいる量子論を必ずしも許容していなかった。1935年、アインシュタインは同僚のポドルスキーとローゼンとともにわずか4ページ足らずの論文を発表した。3人の著者の頭文字をとって『EPR論文』と呼ばれている。その中で、量子力学には『非局所的な相関性』という極めて常識では理解しがたい性質が潜んでいる可能性を指摘した。その奇妙な性質とは、互いに離れた2つの量子に、測定によって瞬間的に関係が生じることである。この論文で初めて示された非局所的な相関性が、後に『量子もつれ』と呼ばれるようになった」

また、「虫の知らせ」についての解釈も面白かったです。取材陣は再び、バー二ングマンで乱数発生器の実験を指揮したレイディン博士と再会しました。彼は「虫の知らせ」を予知能力ではないかと考え、科学的検証を続けているのです。予知能力について、本書には以下のように書かれています。

「知能力は、さまざまな人間の未知のパワーの中でも、特別な意味がある。現在の科学では、時間をさかのぼって情報が伝わることはありえないとされている。つまり、もし予知能力が実在するとしても、それを説明しうるような理論は現時点では全く見当たらないのだ」

続けて、本書には次のように書かれています。

「一部の研究者は、超能力の謎を解く手がかりとして量子論の発展を期待している。しかし量子論では、空間を超えた相関性があることは確認されているが、時間を超えた相関性はまだ確認されていない。今のところ、予知に適用できそうな理論は、候補すら見つかっていないのである。予知能力が実在するとなれば、全く新しい物理理論が必要になるかもしれない」

「虫の知らせ」を表す言葉は英語にもあり、「ガッツ・フィーリング」と言うそうです。直訳すると「内臓による感覚」である。興味は尽きませんね。

「未知なる力」が存在する可能性について、苅田氏は述べます。

「人間は”超能力”というものに対し、どこかしら『在してほしい』いう願望を持っているのではないだろうか。物を動かしたり、見えないものを見たり、人の心を読んだり、未来を予知できたら・・・・・・。数々のSFのテーマになってきた人間の夢である。
しかし、もう一度繰り返しておくが、超能力を持つと称し、それを悪用する人がいるとしたらそれは絶対に許されない。それを防ぐためにも、私たちは、超能力が本当に存在するのかどうか、科学の力で見極めることができるようにならなければならない」

第二部の最後には、ユリ・ゲラーの科学的な検証に携わり、アメリカ軍の遠隔透視部隊の創設にも関わったプットフ博士の以下の含蓄ある言葉が引用されています。

「私は非常に楽天家です。超能力は22世紀、24世紀、いや30世紀になれば科学的に解明されると思っています。過去を振り返ってみてください。19世紀、18世紀、17世紀には分からなかったことを今の私たちがどのくらい知っているでしょうか。世界を理解するための科学の成長は飛躍的であることが分かります。それを考えれば、近い将来のある時点で、超能力を完全に理解できるかもしれません。最終的には、常識だと考えているものと、超常的と考えているものの2つが溶け合い、連続して理解できるようになると思います。そして、私たちは、宇宙の全てのものがどう結ばれ、調和しているのか、その全体像を目にすることになるでしょう」

「あとがきにかえて」に書かれた次の一文にも心を動かされました。

「明王エジソンは、超常現象に対して非常に懐疑的だった。ところが1910年、『ニューヨーク・タイムズ』の記事で超常現象について問われた時、基本的にはそうしたものは存在しないだろうとしたうえで、こんな発言もしている。『我々は分かっていない。分かるには限界がありすぎる。本当に重要なことは、まだつかめていない』
奇しくも現代科学の最前線では、宇宙の物質のうち私たちが理解できているのはたった4パーセントだけだという衝撃的な事実を受け入れざるをえなくなっている。残りの96パーセントは、”ダークマター”や”ダークエネルギー”と呼ばれ、その正体を解明しようと科学者たちが懸命に研究を続けているところだ。もちろん、宇宙の成り立ちと超常現象を同列に論じることはできないが、私たちはかくも未知のものに取り囲まれているということの証左だといえる。人類は、謙虚に、しかし大胆にその謎に挑んでいかなければならない」

ノーベル賞受賞者を含む世界各国の科学者たちへの取材の成果も収められていますが、NHKは「科学的であること」を厳然たる放送基準としており、このような番組を製作したこと自体が驚きです。しかし、単なるオカルト研究番組にならず、科学的姿勢を貫いたのは、さすがNHKですね。第一部を担当した梅原勇樹氏、第二部を担当した苅田章氏の2人のディレクターの問題意識と筆力にも感心しました。

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