No.0984 人間学・ホスピタリティ 『感奮語録』 行徳哲男著(致知出版社)

2014.09.16

『感奮語録』行徳哲男著(致知出版社)を再読しました。これまで何度か読み返してきた本です。久しぶりに読んでみて、まさに今の日本人向けの内容なので、驚きました。

デンマークの哲学者キェルケゴールが野垂れ死にしたエピソードから本書ははじまります。キェルケゴールの哲学の一つに「野鴨の哲学」というものがあります。彼の家の近くには湖があり、そこに毎年野生の鴨が渡ってきます。湖の近くには、野鴨たちにおいしい餌を与える一人の善良な老人が住んでいました。そのせいで鴨たちは湖に住みつき、翔ばなくなってしまいましたが、ある日、老人が老衰で死んでしまいました。鴨たちは次の湖へ餌を求めて翔び立とうとしますが、羽の力が弱くなっていて翔べません。醜く太ってしまったかつての野鴨たちは死んでしまいます。

この「野鴨の哲学」こそ、実存主義という哲学のきっかけとなり、トーマス・ワトソンが世界最強の企業集団「IBM」をつくるきっかけとなったのです。IBM社員たちの合言葉はWild ducks(野生の鴨)なのです。

キェルケゴールの哲学を徹底的に研究した人物が、経営学者のピーター・ドラッカーです。そのドラッカーは日本民族こそ世界最強の問題処理民族であると言っています。大化の改新、応仁の乱、蒙古襲来、明治維新、第二次大戦、オイルショックなどのさまざまな国難をことごとく乗り切ってきた日本人は、新たな国難をも必ず乗り切れるというのです。そして、日本復興のために「政治を信じるな」「情報を受け取る感覚を磨け」「明治に学べ」という条件を3つ挙げています。この3つの条件は、東日本大震災後の復興に励む日本人にとっての価値あるメッセージと言えるでしょう。

野鴨はわれわれに語りかけます。
人間よ、もっと主体的に生きろ!
日本人よ、哲学で武装せよ!
そして生き残れ!と。

なお、本書は『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも取り上げています。

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