No.1326 人生・仕事 | 読書論・読書術 『戦略読書』 三谷宏治著(ダイヤモンド社)

2016.10.05

『戦略読書』三谷宏治著(ダイヤモンド社)を読みました。 著者は1964年福井県生まれ、東京大学理学部物理学科卒業。経営コンサルタントを経て、現在はK.I.T虎ノ門大学院主任教授、グロービス経営大学院客員教授、早稲田大学ビジネススクール客員教授、永平寺ふるさと大使、NPO法人アフタースクール理事、NPO法人3keys理事、Linkers株式会社アドバイザーなどを務めています。『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』などの著書があります。

本書の帯

本書の帯には、「みんなと同じ本を読んではいけない」 「私たちは読んだ本でできている――。ビジネス、SF、科学、歴史、マンガ、心理、哲学・・・他。『何を』『いつ』『どう』読むかを戦略的に変えて、コモディティ化しない自分をつくる『読み方」』大全」「独自の視点を生む435冊のブックガイド付き」と書かれています。ちなみに本書の総ページ数は437ページですが、取り上げている本は435冊です。せっかくなら、あと2冊多く取り上げて、ページ数と紹介冊数を揃えれば良かったのにと思いました。まあ、大きなお世話ですけどね。(苦笑)

アマゾンの商品説明には、「■私たちは読んだ本でできている」「■だから、読書には戦略が必要だ」として、以下のように書かれています。

「本書は、『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』などで知られる三谷宏治氏が、自分の独自性をつくり上げるための読書法をまとめた1冊です。私たちの体が食べたものでできているように、私たちの精神・思考もまた、読んだ本でつくられています。だから、読書には『戦略』が必要なのです。読書をコントロールすることは、自分をマネジメントすることに他なりません。自分の年齢やフェーズに合わせてジャンル配分を変える『読書ポートフォリオ・シフト』、効率的にリターンを得るために読み方を変える『セグメント別ワリキリ読書』、1冊の本からより多くの学びを得るために、5つの視点(対比、反常識、数字、一段深く、抽象化)で読み取る『発見型読書法』など、多くの読み方を紹介します」

また、アマゾンの商品説明には、「■オリジナル人材になるための”三谷流”読書法の集大成」として、以下のようにも書かれています。

「大学卒業後にボストンコンサルティンググループに入り、みんなと同じ本を読んでいたら、みんなと同じ発想しかできなくなったことに危機感を覚えた三谷氏。以来、30年にわたって試行錯誤しながら編み上げてきた、三谷流『戦略読書』の集大成が本書です。三谷氏の私的読書全史あり、家中で知をオープン化する書斎術あり、1冊の本をどのように読みさばくかの実践事例あり、オリジナル人材になるためのブックガイドありと、読書に関わる全テーマを1冊に網羅した究極の読書本」

 本書の帯の裏

本書の「目次」は、いかのような構成になっています。

「はじめに」
序章  戦略読書のススメ ―読書には戦略が必要なのだ
第1章 読書ポートフォリオ・シフト―セグメント管理で資源配分を変える
第2章 セグメント別ワリキリ読書―読み方を変えて効率的にリターンを得る
楽章1 ボクたちは読んだものでできている―私的読書全史 第3章 発見型読書法
第3章  発見型読書法―5つの視点で5倍読み取る読め方革命
第4章 知のオープン化―書斎と本棚と魔法の1冊
楽章2 みんなと同じ本ばかり読んではいけない―オリジナリティを育てる珠玉の12冊
終章  知と行のサイクル ―読書⇒思索・行動⇒発信⇒スキル
「おわりに」
付録  セグメント別ブックガイド―独自の視点と思考をつくるための435冊

「はじめに」で、著者は「読書には戦略が必要でした」として、以下のように述べています。

「少しずつ意識して『資源配分』(どんな本をどれくらい読むか)を変え、『読み方』(精読か斜め読みか)を変えて、知識や思索を深め、幅を拡げていきました。この世界は深く広く、読み尽くせない大きさです。でも過去や未来、空想世界はさらに複雑で面白い、洞察に満ちた空間でした。それが私の発想力の源泉となりました」

それから著者は、「読書には、ケイパビリティ(能力)が必要でした」として、以下のようにも述べています。

「私は読むことも好きでしたが、得意だったのはそこから何を読み取るか(『読め方』)、であったでしょう。一葉知秋。秋が来たことを知るのに、葉っぱ全部の紅葉や落葉を待つ必要はありません。1枚の落葉が、それを知らせてくれます。問題はそれに気づくかどうかだけ。その気づきのコツやスキルがありました」

序章「戦略読書のススメ」では、沖縄キリスト教短期大学教授の上原明子氏の「読書の目的は『自由に生きる』ことだ」という言葉が紹介され、「自由に生きる」ために必要な3つの力として、(1)想像力、(2)批判的思考力、(3)自己コントロールを支えるためのメタ認知能力が挙げられます。これらの力を鍛えるために、読書は大いに役に立つといいます。

京都大学産学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授でエンジェル投資家の瀧本哲史氏は著書『僕は君たちに武器を配りたい』で、人材のコモディティ化について論じ、6つのスペシャリティ(差別化された存在)を定義しました。
(1)トレーダー(営業)、(2)エキスパート(専門家)、(3)マーケター、(4)イノベーター(起業家)、(5)リーダー、(6)インベスター(投資家)の6つです。
そして、瀧本氏によれば、これからの世の中では、(1)(2)はダメで、(3)~(6)が必要で、特に「業界の裏を読める人」である(6)の力を持つことが求められるそうです。

著者は、「戦略読書で自らを2年でつくり変えよう。1000時間の投資を!」として、以下のように述べています。

「読書には戦略が必要でした。人と同じことを言っちゃうツマラヌ人に、ならないために。読書とは素晴らしいものでした。人と世界、人と自分とに橋をかけ、脳を鍛えて心を豊かにし、『メタ認知能力』を与えてくれ、人生の諸先輩を凌駕するための道具ともなってくれます。
読書には戦略が存在しました。何をいつどう読むかという『戦略読書』によってわれわれは、自らのオリジナリティを磨き、効率を上げることができるようになるでしょう。そして、われわれは初めて、しなやかで強靱なキャリア(人生)を手に入れられるようになるのです」

なお、本書にはさまざまなジャンルの本が紹介されていますが、その中に「なぜSFや科学がビジネスに役立つのか」として、SFや科学書を紹介しているコーナーが面白かったです。著者は「そもそもコミュニケーションとは何なのでしょう」と問いかけ、以下のように述べています。

「情報の伝達? 交換? 変化? その前に、情報の定義は? 伝達のためのプロトコル(手順)は? 情報評価のためのクライテリア(基準)は?
相手がまったくの異世界から来た者である場合、『挨拶』とは何でしょう。音か光か、殴り合いか抱擁か。好意と悪意はどう表現されるのか、そういった人間類似の感情などあるのか。そもそも生死は同じ定義か、死(活動停止?)は相手にとって忌むべきことなのか・・・・・・。
まともなコミュニケーションの成立は、かなり絶望的です。コミュニケーションとは、膨大な「前提条件」の上で成り立つ、極めて精妙なガラス細工なのです」

東京大学の理学部物理学科を卒業しているだけあって、著者のSFや科学に対する知識はハンパではありませんが、わたしもSFはもともと好きなので楽しく読むことができました。その他にも、小説やマンガなどの紹介にも多くのページが割かれており、本好きにはたまらない1冊でした。わたしには、『あらゆる本が面白く読める方法』(三五館)という著書がありますが、いつか、『戦略読書』のような分厚い読書についての本が書きたいです。

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