No.1378 コミック | 人生・仕事 『人生と勉強に効く 学べるマンガ100冊』 佐渡島庸平・里中満智子ほか著(文藝春秋)

2017.01.13

『人生と勉強に効く 学べるマンガ100冊』佐渡島庸平・里中満智子ほか著(文藝春秋)を読みました。 ネットで本書の存在を知り、興味を抱いたのです。

本書の帯

帯には「『あさきゆめみし』から『キングダム』まで」「マンガは、最高の教科書だ!」「これも学習漫画だ! 世界発見プロジェクト」「監修・日本財団」と書かれています。

またカバー前そでには、以下のような内容紹介があります。

「世のなかには、星の数ほどマンガがあるけど、本当に面白くてためになるのは、どれ? この本では、マンガの達人たちが『文学』『職業』『歴史』『戦争』『科学・学習』『スポーツ』 などテーマに分けて、100作品を紹介。教科書よりも深く学校よりも楽しい、知力アップの最強ガイド!」

さらにカバー後ろそでには、「本書で紹介されたマンガから学べること」として、以下のように書かれています。

『源氏物語』の世界
●夏目漱石などの文豪エピソード
●フェルメールをはじめとする美術史
●秦の始皇帝時代の歴史
●お医者さんの仕事について
●農学部での学生ライフ
●報道されない原発事故の現場
●クラシック音楽のあれこれ
●敏腕スナイパーが見た最新世界情勢
●知られざる考古学ワールド
●大人が夢中になるワインのすべて
●日本の国技・相撲について
●生活保護の窓口で起きていること
●おいしい料理を作る方法 ほか

本書の帯の裏

本書の「目次」は、以下のようになっています。

はじめに 「マンガが教科書よりすごい理由」 佐渡島庸平(コルク代表)
1時限目  文学 『あさきゆめみし』『月に吠えらんねえ』ほか
2時限目  生命と世界 『寄生獣』『銀の匙』ほか
3時限目  芸術 『昭和元禄落語心中』『3月のライオン』ほか
4時限目  社会 『健康で文化的な最低限度の生活』ほか
5時限目  職業 『JIN―仁―』『東京トイボックス』ほか
6時限目  歴史 『キングダム』『大奥』ほか
7時限目  戦争 『総員玉砕せよ!』『アドルフに告ぐ』ほか
8時限目  生活 『クッキングパパ』『イグアナの娘』ほか
9時限目  科学・学習 『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』ほか
10時限目  スポーツ 『キャプテン』『フットボールネーション』ほか
11時限目  多様性 『聲の形』『風と木の詩』ほか

はじめに 「マンガが教科書よりすごい理由」では、講談社出身でクリエイターのエージェント会社であるコルク代表の佐渡島庸平氏が「学べるマンガ」について、以下のように述べています。

「実際、マンガを読めば、受験勉強から人生や世の中のことまで、あらゆることが学べます。たとえば、本書にも収めた『ドラゴン桜』というマンガには、受験にまつわるすべてが描かれています。同じく『加治隆介の議』では、日本の政治のことが裏側まで描かれています。『家裁の人』を読めば、司法について理解が深まります。『夏子の酒』を手に取れば、日本酒づくりを疑似体験できます。『HOTEL』を読めば、サービス業の本質を垣間みられます。『どんぐりの家』を読めば、障がいの大変さについて理解できます」

「学べる」といっても、教科書とマンガは違います。 佐渡島氏は、その違いについて以下のように説明しています。

「教科書に載っていることは、本当にあった事実です。とはいえ、事実の連続だけだと、読んでいる人は、興奮しません。けれども事実を、物語やドラマへと仕立てると、読む人は感情を揺さぶられるのです。その証拠に、古文の副読本としても人気の『あさきゆめみし』、古代中国の戦乱の歴史を描いた『キングダム』などは、スケールのあふれるロマンを感じさせるものとして大人気です。ドラマチックな体験のもとに得た知恵や知識は、読んだ人のなかに深く残ります」

教科書とマンガの違いについて、さらに説明されます。
「教科書では1行で終わってしまうことも、マンガだと何巻も使ってじっくりと説明できます。なので、マンガを読むことで、ある一部分にとてもくわしくなることができます。マンガを読んだのちに、あらためて教科書を読むと、面白く感じられるかも知れませんね」

マンガからたくさんのことが学べるのは、吹き出しのセリフ部分の「文字」だけではなく、「絵」の部分にも、無意識のうちに読み取れる情報が、たくさん詰まっているからだともいいます。

大量の情報が詰め込まれているにもかかわらず、マンガが文学よりも分かりやすいのはなぜか。佐渡島氏は、その理由を以下のように述べています。

「それは、マンガが『気取らない文学』だからかも知れません。小説の作家さんのなかには、自分の作品はレベルが高いので、一部の分かる人だけ分かればいい、という人もいます。でもマンガ家さんは、『万人に読んでもらえること』にプライドを持っています。そして、複雑だったり難しかったりするものを分かりやすくするためには、物事の本当のところを分かっている必要があると知っているので、大変な苦労をして知識をつけています」

そして、「はじめに」の最後には以下のように述べられています。

「今回、選んだ100作品では、登場人物の職業もいろいろです。文豪に皇帝、バレリーナ、ピアニスト、医者、街の金融業者、野球部員、テニス部員、女子中学生、お料理が得意なお父さんなど、なんでもありです。将来どのような職業につきたいか、ヒントになりそうですね。ちなみに、僕は、東大で英文学を学んだあと、マンガの編集者になりました。マンガをたくさん読んだ結果、特定のジャンルというよりは、マンガ自体が好きだと気づいたからです」

わたし自身、知らないマンガがたくさんありました。 本書を読んで読みたい作品が多く、アマゾンで大量に注文してしまいました。 ろうの女の子と周囲との関係性を描いた『聲の形』全7巻、大今良時著(講談社)などは説明文を読んだだけでも泣けます。

わたしもこれまで多くのマンガを読んできましたが、いつか、『死を乗り越えるマンガ』という本を書きたくなりました。そこでは、手塚治虫『火の鳥』、楳図かずお『イアラ』、永井豪『デビルマン』、つのだじろう『うしろの百太郎』、諸星大二郎『孔子暗黒伝』、萩尾望都『ポーの一族』、近藤ようこ『死者の書』などの名作を紹介しながら、マンガのもつ豊かな可能性を探ってみたいです。

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