No.1638 小説・詩歌 『青年の大成』 安岡正篤著(致知出版社)

2018.12.15

 14日の夜は「ふたご座流星群」がピークで、わたしも夜空を眺めました。前夜に観たTVドラマ「黄昏流星群」の最終回の感動のラストシーンとオーバーラップして、胸が熱くなりました。一条真也の読書館『面白いぞ人間学』を書いたとき、同書で取り上げた101冊の本のうち、まだブログや読書館で紹介していないものが多いことに気づきました。そのすべてをブログで紹介し直すわけにはいきませんが、何度読み返しても色褪せない名著だけは遅まきながら取り上げたいと思います。

 今回は、『青年の大成』安岡正篤著(致知出版社)をご紹介します。青年たち向けに行われた昭和38年の講義録である。昭和38年といえば、わたしが生れた年で、じつに54年前です。しかし、いま、読んでもまったく内容が古くありません。古くないどころか、現代の青年こそ本書を読むべきであると思います。

 安岡正篤の著作としては小品の部類に入ります。
「一体人間とは何ぞや」という問題からはじまり、「人生いかに生くべきか」の命題を概念論や抽象論に陥らずに、きわめて具体的に解明し、懇切丁寧に人の道を説いています。本書には子供論も出てきますが、著者は「子供は常に明るく育てねばならない」と述べます。人間は光を愛しますが、これは宇宙開闢、天地創造とともに生じたものです。明るいと同時に、清いということ、さやかということ。「明」と「清」は古神道の根本原理で、人間の子供もこれを根本徳とするというのです。

 それから、素直ということが大事で、これは仏法でいう「直心(じきしん)」というものです。さらには、「敬」というものを大切にしなければならないと、著者は訴えます。愛は、人間に至って特に敬を生じ、恥を知るようになりました。そこから宗教も道徳も発達しました。このような根本的・本質的な徳を子供のうちから豊かに養っていく必要があるというのです。わたしは神道と仏教と儒教が混ざり合って日本人の心を作り、育ててきたと考えているのですが、安岡正篤はまさにこの考えを明らかにしていると思います。日本人の心を知り、正しく育てられた子供は正しい青年に成長し、世に出て大成することは言うまでもありません。 

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