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2019.08.30
『本と鍵の季節』米澤穂信著(集英社)を読みました。一条真也の読書館『満願』で紹介した本の著者の最新作です。著者は1978年岐阜県生れ。大学卒業後、書店員勤務の傍ら小説を執筆。2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞(ヤングミステリー&ホラー部門)奨励賞を受賞してデビュー。『氷菓』をはじめとする古典部シリーズはアニメ化、漫画化、実写映画化され、ベストセラーに。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。2014年『満願』で第27回山本周五郎賞を受賞。『満願』と2015年刊行の『王とサーカス』はそれぞれ3つの年間ミステリランキングで1位に輝き、史上初の2年連続3冠を達成しました。
本書の帯
本書の帯には、「皮肉屋で大人びた松倉詩門と頼まれ事の多い僕――これは図書委員の僕らの推理と友情の物語」「米澤穂信、2年ぶりの新刊!」「爽やかでほんのりビターな図書室ミステリ、開幕!!」と書かれています。
本書の帯の裏
また、帯の裏には、以下の内容紹介があります。
「堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが……」「放課後の図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編」と書かれています。
本書には「913」「ロックオンロッカー」「金曜に彼は何をしたのか」「ない本」「昔話を聞かせておくれよ」「友よ知るなかれ」の6つの短篇が収められています。2012年から2018年秋までに「小説すばる」に散発的に掲載されたものですが、最後の解決編とも言える「友よ知るなかれ」だけが書き下ろしで加えられています。東京八王子近くの高校の2年生の図書委員の主人公と、4月から図書委員になった同級生の松倉詩門と図書室でさまざまな推理を展開します。書名の通り、「本」と「鍵」に関する謎解きなのですが、ちょっと、わたしには物足りませんでした。
ライトな青春ミステリーとか、部活ものといった印象で、正直言って、根暗な男子高校生2人が図書室に引きこもってゴチョゴチョやっている感じです。高校生だからアルコールとも無縁で、帰宅途中に自動販売機で買った缶コーヒーや缶コーラを飲みながら、いろいろ話し込むのですが、汚れちまった酒飲み中年男のわたしから見ると、ちっとも共感できませんでした。やはり、高校生が主人公の話は、わたしには合いませんね。
第5話の「昔話を聞かせておくれよ」と第6話の「友よ知るなかれ」では、松倉の複雑な家庭環境も描かれていますが、わたしは「だから、どうした」と思ってしまいました。『満願』のような高レベルのドラマ性を期待していたのですが、残念でした。ビブリオ・ミステリーとしても、一条真也の読書館『ビブリア古書堂の事件手帖』で紹介した累計680万部の大ベストセラーのほうが面白いと思いました。