No.1992 宗教・精神世界 | 幸福・ハートフル | 日本思想 | 芸術・芸能・映画 『「鬼滅の刃」に学ぶ』 一条真也著(現代書林)

2021.01.16

金沢に来ています。1月16日の朝一番で北九州に帰ります。今年最初の一条本となる『「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)の見本がついに出ました。一条真也の新ハートフル・ブログ「北陸祝賀式典」で紹介した会社行事の開始直前に金沢に届きました。本書には、「なぜ、コロナ禍の中で大ヒットしたのか」というサブタイトルがついています。

「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)

本書の帯

竈門炭治郎の羽織と同じ市松模様の帯には、「決定版登場!」「作者も気づかなかった(だろう)、日本人の心の奥底に触れた理由。だから老若男女の魂を震わせた!」と書かれています。

本書の帯の裏

帯の裏には「好評既刊」「一条真也著」「『死を乗り越える』シリーズ」として、『死を乗り越える読書ガイド』、『死を乗り越える映画ガイド』、『死を乗り越える名言ガイド』の3冊が紹介されています。もちろん、すべて現代書林の出版物です。

アマゾンの内容紹介には、「博覧強記の哲人経営者として、ネット界で知られる著者が、あの『鬼滅の刃』ブームに切り込んだ渾身の一冊。手塚治虫に物語のルーツを見たどり、さらに『神道』『儒教』『仏教』からの視線で日本人の心の琴線にふれる物語を読み解く。そしてコロナ禍の今、『鬼滅の刃』に隠れされた『先祖』と『祭り』のキーワードが浮かび上がる。かつて広告代理店のマーケティング・プランナーとして活躍し、現在は大手冠婚葬祭会社の社長を務める著者が、社会現象になった大ブームのメカニズムを完全に解き明かす。『鬼滅の刃』論の決定版!!」と書かれています。これは、もちろん、わたしが書いた文章ではありません。しかし、本書に賭ける版元の熱い意気込みが伝わってくる内容紹介だと思います。著者本人としては、面映ゆいですが。

本書の「目次」は、以下の通りです。
まえがき
「経済効果だけでは語れない大ヒットの本質」
第1章 「鬼滅の刃」という事件
「コミックはこう読んだ」
日本人の心に棲みついた「鬼」
ルーツは手塚の3作品だった
「アニメはこう観た」
描かれる「呼吸」と「痛み」
「映画はこう観た」
観終わって浮かんだ疑問
「夢」が果たす役割
マネジメントやリーダーシップが学べる
「最終巻の衝撃」
結婚をイメージしたハッピーエンド
「死者」の気配
高齢者へのメッセージ
第2章 「鬼滅の刃」の練習問題
2020年の社会現象
「鬼滅の刃」の展開
「鬼滅の刃」の特徴
アニメ配信がさらにブームを推進
第3章 「鬼滅の刃」が描く
    魂のルール
「鬼滅の刃」にみる日本人の精神世界
神道
~「鬼滅の刃」が描く神の姿と神楽、
そして命のつながり
【「神」について】
【ヒノカミ神楽】
【魂と転生】
【世代をこえて】
儒教
~物語に息づく八徳
【仁】 【義】 【礼】 【智】
【忠】 【信】 【孝】 【悌】
仏教
~知足、因果応報思想と怨親平等
死後観・人生観
【地獄】
【三途の川】
知足
因果応報
怨親平等
先祖
~混ざり合った日本人の「こころ」
祭り
~祈りができなかった日本人

「鬼滅の刃」ブームの勢いが止まりません。
公開中の映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、ついに興行収入国内歴代1位という金字塔を打ち立てました。また、その到達スピードも歴代1位というからさらに驚かされます。ちなみに、本書の印刷所への入稿締め切りが2020年12月28日までだったのですが、なかなか歴代興収1位の発表がなかったので、「歴代興収2位」と記載していたのです。それが本当にギリギリのところで情報のアップデートに成功しました。こうした勢いを受けて、最終話を掲載したコミック23巻(12月4日発売)の初版部数は395万部でした。電子版を含む累計発行部数が1億2000万部を超えたといいますから桁そのものが違います。これに加え関連グッズというものもあるわけで、その経済効果はコロナ禍で疲弊する日本経済の救世主のようになっています。

コミックも1日で読破しました!

まさに社会現象と呼ぶべき今回のこのブームは「『鬼滅の刃』現象」などと記憶され、研究されるでしょう。実際、YouTuberの中田敦彦氏が動画で『鬼滅の刃』の大ヒットの理由を徹底分析したのをはじめ、新聞・雑誌などのマスメディアも巻き込んで、心理学者、社会学者、経済学者など枚挙に暇がありません。配信インフラの充実、映画館の独占など、ブームの要因はさまざまに分析されています。わたしは文筆活動を始める以前は、広告代理店でマーケティング・プランナーとして働いており、プロモーションから商品開発などに携わってきました。イベント企画なども手掛けた経験もあります。ゆえに、このブームにも当然興味を持ちました。

正直に告白するなら、『鬼滅の刃』については、わたしは「週刊少年ジャンプ」連載中に注目していたわけではありません。ある出来事がきっかけでアニメを全話観て、続いて劇場版を観て、それからコミックを読破した次第です。結果、感じたことがあります。それは経済効果という視点からでは見えてこない、社会現象にまでなった大ヒットの本質です。それが本書の執筆を決意したゆえんでもあります。今回のブームには、漫画の神様の存在や、現代日本人が意識していない、神道や儒教や仏教の影響を見ることができます。わたしは、今回の現象は単なる経済的な効果を論じるだけではない、大きな転換点を感じています。

なぜ、コロナ禍の中で大ヒットしたのか?

コロナ禍の中にあった2020年に日本では、ことごとく祭礼が中止されました。その中で生じる最大の問題は、夏祭りや盆踊りが担っていた祖霊祭祀と病疫除去という役割を、誰が担うのかというものです。その答えの1つが、「鬼滅の刃」という作品だったと思います。夏祭りは先祖供養であると同時に、疫病退散の祈りでした。それが中止になったことにより、日本人の無意識が自力ではいかんともしがたい存在である病の克服を願い、疫病すなわち鬼を討ち滅ぼす物語であり、さまざまな喪失を癒す物語でもある「鬼滅の刃」に向かった側面があるのではないか。

「鬼滅の刃」は「天下布礼」の物語だった!

「鬼滅の刃」現象とは、コロナ禍の中の「祭り」であり、「祈り」だったのです。『鬼滅の刃』という物語は、わたしたちの仕事である冠婚葬祭業とも深い関わりがある、いわば「天下布礼」の物語であると言えます。儀式は、人生の縦軸――人間の年齢の変遷に対応する「冠婚葬祭」と、横軸である一年という円環に対応する「年中行事」に大別できますが、コロナ禍がきっかけとなり、冠婚葬祭はすでにこれからのあるべき姿について見直しが始まっていました。ここに加えて、年中行事も同じように、その本質と継承が議論されることは、日本の儀式文化の存続という点で大きな意味を持つことでしょう。

決定版冠婚葬祭入門』と『決定版年中行事入門

冠婚葬祭、年中行事、そして祭礼は広く「儀式文化」としてとらえることができます。そして、それらは「かたち」の文化です。それらが何のために存在するのかというと、人間の「こころ」を安定させるためです。コロナ禍では、卒業式も入学式も結婚式も、そして今年は成人式さえも自粛を求められ、通夜や葬式さえ危険と認識されました。しかしながら、儀式は人間が人間であるためにあるものです。儀式なくして人生はありません。まさに、新型コロナウイルスは「儀式を葬るウイルス」と言えるでしょう。そして、それはそのまま「人生を葬るウイルス」です。

儀式論』(弘文堂)

人間の「こころ」は、どこの国でも、いつの時代でも、ころころ動いて不安定です。だから、安定するための「かたち」すなわち儀式が必要なのです。多くの儀式の中でも、人間にとって最も重要なものは「人生の卒業式」である葬儀ではないでしょうか。新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった方の葬儀が行うことができない状況が続きました。芸能界でも志村けんさん、岡江久美子さんがお亡くなりになられましたが、ご遺族はご遺体に一切会えず、荼毘に付されました。新型コロナウイルスによる死者は葬儀もできないのです。ご遺族は、二重の悲しみを味わうことになります。わたしは、新型コロナウイルスの感染におびえる現代人にとっての「精神的免疫」および「こころのワクチン」とでもいうべき存在が『鬼滅の刃』であると断言できます。多くの『鬼滅の刃』関連本では語られてこなかった(作者自身も気が付いていないかもしれない)大ヒットの秘密を開陳したいと思います。

アマゾン検索結果で1位に!

本書の第1章に収録の「コミックはこう読んだ」、「アニメはこう観た」、「映画はこう観た」、「最終巻の衝撃」の各文章は、当ブログに掲載したものです。一条真也の新ハートフル・ブログ『鬼滅の刃』「アニメ版『鬼滅の刃』」「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」「『鬼滅の刃』最終巻」には非常に大量のアクセスがありました。特に、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の記事は、映画の公開から1ヵ月以上も経過してからの遅いアップだったにもかかわらず、約2000万件の記事の中でアマゾン検索1位となりました。自分でも驚きました。

自分を信じて良かった!

その後、ブログを読んだ「出版寅さん」こと出版プロデューサーの内海準二さんから連絡があり、11月25日に東京・日比谷の帝国ホテルのラウンジで打ち合わせしました。そして、「鬼滅の刃」についての本を書くことになった次第です。版元は、わがホームグランドの現代書林ですが、なんと年内の脱稿を希望していました。ブログをはじめ、これまで、わたしが書いた原稿を活用できるにしろ、あまりにもスケジュールがタイトです。「まあ今年は忘年会ラッシュから解放されるから、師走に執筆の時間も取れるだろう」と前向きに考えて引き受けました。「オレはやれる! 絶対にやれる! 俺はやれる男だ!」「がんばれ! 人は心が原動力だから」という炭治郎の言葉を我がこととして、頑張りました。

アニメ、映画、コミックを2日半で制覇 !

わたしは、11月も終盤になってから、「鬼滅の刃」に興味を抱きました。あることがきっかけで、猪の被り物をした伊之助の姿をTVで観て、衝撃を受けたのです。すぐ、アニメ全26話を観たいと思いました。Netflixに加入すれば観れることを知り、その場で加入。その日のうちにほぼ全話を一気に観ました。翌日は、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」も観ました。そして、さらにその翌日、アマゾンから届いた原作コミックス既刊22巻を一気読みしました。つまり、アニメ、映画、コミックの順で2日半で制覇したことになります。まさに全集中の呼吸で挑みました。それから約1ヵ月後には本書を脱稿したのですから、自分でもそのスピードには驚きます。「バク転神道ソングライター」こと宗教哲学者の鎌田東二先生は「神速筆記」と評して下さいました。

全集中の呼吸で書きました!

かつて、わたしは『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』(国書刊行会)を約1ヵ月、『葬式は必要!』(双葉新書)を約2週間で書いたことがありますが、それらの本のテーマである「死」や「葬」は自分の専門であり、ある程度の時間と集中力さえあれば、難なく書くことができました。しかし、今回は『鬼滅の刃』についての知識がゼロの状態から約20日間で1冊の本を書き上げたわけで、自分でも驚いています。サムシング・グレートの計らいで自分にミッションが与えられたとしか思えません。そのミッションが果たせたのには、1人の協力者がいました。サンレー秘書室の瀬津隆彦君です。「週刊少年ジャンプ」の長年の購読者で、『鬼滅の刃』は連載開始時から熱心なファンだったという瀬津君には、いろいろとレクチャーしてもらいました。瀬津君という鬼滅博士のおかげで短い時間で『鬼滅の刃』の世界観やキャラクター像を短時間で把握できて、とても感謝しています。

ぜひ、お買い求めの上、ご一読下さい!

異例のスピード出版を実現していただいた出版プロデューサーの内海準二氏、現代書林の坂本佳一社長にも感謝申し上げます。本書の内容とも重なりますが、本書の執筆・出版そのものが、わたしにとっては「祭り」でした。相変わらずコロナで先行きの不透明な現在、この本が多くの日本人にとって未来を生きていくヒントとなりますように。なお、本書の発売日は1月28日となっていますが、前倒しが予想されており、実際にはもっと早く発売されると思います。さらに、日本一の書店である「紀伊國屋書店新宿本店」では、今週末から先行販売されます。ぜひ、お買い求めの上、ご一読下さいますよう、お願いいたします!

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