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2021.10.15
10月14日、衆議院が解散しましたね。いよいよ選挙戦に突入ですが、これから日本はどうなるのでしょうか?
一昨日、サンレー本社の社長室で次回作『アンビショナリー・カンパニー』(現代書林)のゲラ校正を行いました。今回はサンレーグループ創立55周年記念出版ということで、沖縄の社長を務めている弟が「刊行に寄せて」を寄稿しています。その文章をチェックしながら弟のことを考えていたら、突然、わたしの部屋に本人が飛び込んできたので驚きました。弟が来るのは頻繁ではないので、一種のシンクロシティです。弟は「このマンガ、知っていますか?」と言って、『私が見た未来 完全版』たつき諒著(飛鳥新社)というコミックを手渡してくれました。
アマゾン(出版社より)
本書のオリジナル版は「ノストラダムスの大予言」に多くの人々が恐怖した1999年7月に刊行されていますが、作者の予知夢によって東日本大震災が発生した「2011年3月」という年月を的中させたとのこと。これまで古書価が高く、弟が購入しようとした時点では20万円以上したそうですが、この10月1日に復刻版が発売され、税込み1200円で購入できるようになりました。その1冊をわたしにプレゼントしてくれたのです。わたしは、この本の存在、また世間で騒がれていることなどはまったく知りませんでした。アマゾンで調べてみると、総合ランキングで1位になっており、仰天しました。先日、関東で震度5強の地震が発生しましたが、来る南海トラフ大地震への不安がこの本に多大な注目を集めているのかもしれません。
本書の帯
本書のカバー表紙には、たつき諒本人が描いた夢日記のメモ(これが問題なるのですが)と手で片目を覆った女性(おそらくは作者自身)の顔が描かれています。帯には、「幻の”予言漫画”復刻!!」「22年の沈黙を破り、作者が新たな警告」「本当の大災難は2025年7月にやってくる」と書かれています。
本書の帯の裏
帯の裏には、「『夢日記』を本書で初公開!!」「なぜ表紙に『大災害は2011年3月』と描いたのか」「『富士山大噴火』の夢が意味していたことは」「そして新たな『未来の夢』のメッセージとは」と書かれています。カバー前そでには、「1999年に刊行され、表紙が東日本大震災を予言していたとして話題沸騰。絶版にため伝説化していた本作を復刻改訂し、たつき諒の予知夢の真相を解説した完全版!!」と書かれています。
アマゾン(出版社より)
著者は、1954年12月2日生まれ、神奈川県出身。横浜在住。1975年、『月刊プリンセス』(秋田書店)でデビュー。著書に『人形物語』『時の中の少女』『水色の航空書簡』『タージ・マハル廟のある町』ほか。『私が見た未来』は1994~98年に雑誌『ほんとにあった怖い話』および『恐怖体験』上に掲載された漫画をまとめたもので、99年に朝日ソノラマより単行本化。同99年、漫画家を引退。『私が見た未来』の表紙に「大災害は2011年3月」と書かれていることから、東日本大震災を予言した漫画家として注目を集めることになりました。
アマゾン(出版社より)
本書の「目次」は、以下の通りです。
「完全版」刊行にあたって(飛鳥新社編集部)
第Ⅰ部 予知夢編
夢のメッセージ
(初出’95年スコラ『恐怖体験』VOL.9)
私が見た未来
(初出’96年朝日ソノラマ『ほんとにあった怖い話』9月号)
『夢日記』解説
なぜ夢日記を書き始めたのか
夢日記には何が書かれている?
表紙に書いた予知夢の真相①
「大災害は2011年3月」と描いた理由
表紙に書いた予知夢の真相②
ダイアナ妃の死
表紙に書いた予知夢の真相③
富士山大噴火
表紙に書いた予知夢の真相④
荒れて日々の入った大地
表紙に書いた予知夢の真相⑤
私の葬儀は白っぽい服だとよい
漫画家時代の話
幼少期の不思議体験
漫画家を辞めた理由
インド旅行が大きな転換点になった
漫画の中で描いた大津波は
2011年3月のことではない
2025年7月に起こること
大津波の後に訪れる新たな世界
第Ⅱ部 ミステリー漫画編
縁の先
(初出’97年朝日ソノラマ『ほんとにあった怖い話』11月号)
ちいさなカラの中
(初出’83年東京三世社『SFマンガ競作大全集』17)
浮遊霊
(初出’95年スコラ『恐怖体験』VOL.12)
地下街
(初出’92年講談社『月刊少女フレンド特別編集号』9月号増刊)
冥界の壁
(初出’95年スコラ『恐怖体験』VOL.19)
もうひとりの自分
(初出’95スコラ『恐怖体験』VOL.14)
闇の中へ・・・
(初出’95スコラ『恐怖体験』VOL.5)
そんな馬鹿な
(初出’89マガジンボックス『月刊パンドラ』7月号)
雨月物語
(初出’89マガジンボックス『月刊パンドラ』8月号)
作者あとがき
飛鳥新社編集部による「『完全版』刊行にあたって」の冒頭には、「『1999年7月に人類滅亡の時が訪れる』と予言し、日本中に一大ブームを巻き起こしたノストラダムスの終末予言が何事もなく過ぎ去ろうとしていたころ、その漫画本は出版されました。タイトルは『私が見た未来』。作者の名は、たつき諒。表紙に『大災害は2011年3月』という予言を描いたこの作者は、この作品を最後に、ひっそりと漫画家を引退しました。しかし、出版から12年後の2011年3月11日に東日本大震災が発生したことから、一躍注目を集めることになったのです。この出来事は都市伝説ではなく、紛れもない事実です。『私が見た未来』はすでに絶版となっており、その希少性からオークションでは10万円超で取引されるなど、まさに”幻の予言漫画”となったのです」と書かれています。
続けて、「その話題はおさまるどころかさらに膨れ上がり、作者になりすました人物が雑誌のインタビューに答えたり、インフルエンサーらが予言に思い思いの解釈を加えたり、地上波のゴールデン番組でも紹介されるなど、日本中をざわつかせたことは、読者の皆さんの多くがご存知かと思います。そんななか、作者が22年の沈黙を破って、『私が見た未来』がこの度『完全版』として再び世に送り出されることになりました。いったいどこが完全版なのか。『私が見た未来』は、作者が自身の夢を記録していた『夢日記』を元に描かれた漫画で、すべての予知夢が紹介されているわけではありませんでした。では、『夢日記』にはいったい何が書かれているのか。その内容を、本書で初公開します」と書かれています。
さらに、この「完全版」には作者の「新たなる予言」が収録されています。本書収録の「『夢日記』解説」の「2025年7月に起こること」に、作者は「その災難が起こるのは、2025年7月です。私は空からの目線で地球を見ていて、Google Earthと同じといえばわかりやすいかと思います。突然、日本とフィリピンの中間あたりの海底がポコンと破裂(噴火)したのです。その結果、海面では大きな波が四方八方に広がって、太平洋周辺の国に大津波が押し寄せました。その津波の高さは、東日本大震災の3倍はあろうかというほどの巨大な波です。その波の衝撃で陸が押されて盛り上がって、香港から台湾、そしてフィリピンまでが地続きになるような感じに見えたのです」と述べています。発生源の場所からすると南海トラフのようですが、作者が予知夢で見た災害のスケールは南海トラフ地震をはるかに上回っているようにも思えます。
ちょっと話はややこしいのですが、作者たつき諒氏の偽者が現れたことによって、今回の復刻出版は実現しました。多くの関係者や読者を騙した偽者の罪は重いですが、ある意味で、幻の書となっていた『私が見た未来』を再び世に出すというミッションがあったようにも思えます。その偽者は、2021年8月20日に富士山が噴火するとSNSなどで予言していました。この予言にネット上は大騒動となり、1999年刊行の単行本には10万円以上のプレミアがつき、この予言書の復刊を進める出版社が現れたという次第です。ご存知のように、今年の8月20日に富士山は噴火しませんでした。しかしながら、富士山の噴火に備える「ハザードマップ」が今年17年ぶりに改定されています。最新の研究では、従来予想の2倍の規模の被害が出るといいます。富士山大噴火が起きた場合、日本は未曽有の災害に見舞われるでしょう。
本書の内容に関してですが、大災害を予知したとして注目を集めた冒頭の2作「夢のメッセージ」と「私が見た未来」は、正直、あまりピンときませんでした。第一、オリジナル単行本の表紙に「大災害は2011年3月」と書かれた問題の予言についてまったく言及されていません。第Ⅱ部に収められたミステリー漫画は意外と面白かったです。80年代は絵があまり上手くないのですが、90年代になるとぐっと上手になっています。「浮遊霊」「冥界の壁」「もうひとりの自分」「闇の中へ……」の4編は1995年に描かれていますが、山岸涼子氏の絵にそっくりで驚きました。きっと山岸氏から影響を受けたのでしょう。作者いわく、ストーリー作りが苦手だったそうですが、90年代に描かれた作品はどれも面白かったです。
その中でも、1992年に描かれた「地下街」が強く印象に残りました。女性が暑さから逃れようと横浜の地下街に入り、彷徨っていると、まるで異次元のようなレトロな店に迷い込みます。そこには時代遅れの服装をした人々がいましたが、じつは彼らは関東大震災の犠牲者の霊だったのです。震災で埋もれた建物の中に閉じ込められたまま、出られずにいたのです。関東大震災は1923年(大正12年)9月1日11時に発生し、死者行方不明者は推定10万5000人の大災害となりました。東京の火事による被害が有名ですが、被害の中心は震源断層のある神奈川県内でした。振動によって建物が倒壊し、地盤沈下や崖崩れ、沿岸部では津波による被害が発生しました。その被災地に作られたのが、かつて「ダイヤモンド地下街」と呼ばれた横浜の地下街だったのです。現在は相鉄ジョイナスと併合され、名称も「相鉄ジョイナス」となっています。
作者は、幼少期から不思議な体験をしてきたようです。一番幼い時の不思議な体験は9歳の時で、風邪をこじらせ寝込んでいる間に、宇宙からの視線を感じたそうです。空を見ると、白髪で白く長い髭をたくわえ、白い服をまとった一人の老人が座って笑顔で見ていました。「もしも神様がいるとしたら、こんな感じなのかも」と思った瞬間、「懐かしい」「親元へ帰りたい」という思いが湧いてきて、涙が溢れたそうです。また、自身の前世をインドの聖人として知られたサイババの娘であると語っています。1998年、漫画家を辞める最後の年にインドへ渡ります。大津波の夢を見たのもこの時だそうですが、そのときにサイババの娘であったことを思い出しました。前世で作者の父だったサイババは、イギリスの新聞記者でした1800年代、家族で取材先のクウェートに転勤したそうですが、娘であった作者がクリスマス・イブの日にマラリアにかかって12歳で亡くなったといいます。
サイババのブームは、日本では出版社の三五館が巻き起こしました。同社から出版された『理性のゆらぎ』や『アガスティアの葉』といった青山圭秀氏の著書がベストセラーになったのです。わたしの著書の多くも三五館から刊行されているので、サイババのブームに関してはけっこう詳しいのですが、現在ではサイババが起こした奇跡の数々はトリックであることがわかっています。たつき諒氏の予知夢については、「審神者(さにわ:霊的な現象に対する評価・査定)が必要かもしれません。だからといって、わたしは、たつき氏の超能力がフェイクであると言うつもりはありません。もともと芸術家というのはシャーマン的体質を持っているとよく言われますが、特に『エースをねらえ!』『7つの黄金郷』の山本鈴美香氏、『ガラスの仮面』『アマテラス』の美内すずえ氏などに代表されるように、女性漫画家の中には霊能者のような人物が多いのです。たつき諒氏もその1人なのかもしれません。
それでは、なぜ、たつき諒氏は予知夢を見たのでしょうか? また、どうして「大災害は2011年3月」と特定することができたのでしょうか? オカルトやスピリチュアル系が好きな人なら、「アカシックレコード」を持ち出すかもしれません。心理学と東洋哲学を学び、20年以上内観を実践してきたという心理研究家の牧村和幸氏は、自身のサイトで「予知夢や正夢については、普通一般的に見る夢と異なり、アカシックレコードと呼ばれる宇宙の記憶から、インスピレーションを受けて、見る夢なのです。アカシックレコードとは、人間のみならず、動植物から惑星、地球や太陽、さらには、ミクロの世界のアメーバや小さな虫、昆虫達も含めて、過去から未来まで、宇宙の全ての記憶がおさめられたものなのです」と述べています。
牧村氏は、「宇宙は、生成発展の記録を、全てアカシックレコードにおさめていますし、今後どのようなことが起こるのか、未来についても記録しています。したがいまして、このアカシックレコードを読むことができれば、過去や未来まで、全て見通すことができ、予知もおこなうことができるのですね」とも述べています。わたしは、アカシックレコードという言葉および考え方を人智学者のルドルフ・シュタイナーの著書『アカシャ年代記』で初めて知りました。近代神智学の概念であり、その他の現代オカルティズムの分野(魔術等)でも神智学用語として引き合いに出されることがあります。また、神智学運動の影響を受けている欧米のニューエイジや、日本の精神世界・スピリチュアル、占い、予言といったジャンルでも使われます。
牧村氏は、「アメリカに、エドガー・ケイシーという人物がいました。彼は、眠れる預言者と呼ばれ、眠っている時に、アカシックレコードの記憶を自由自在に引き出すことができました。そして、たくさんの予言を的中させ、世界を驚かせた人物です。このように、アカシックレコードという宇宙の記録が存在して、その記録を読むことができれば、未来予知もできてしまうということなのです」と述べています。エドガー・ケイシーは「世界三大予言者」の1人として知られる人物で、ニューエイジの世界に大きな影響を与えました。
しかし、ケーシーの情報源とされるアカシックレコードは、求められる情報の性質によって得手・不得手があるとされました。未来の予言に関しては、当たっているものを探す方が難しく、アトランティスの再浮上、ピラミッドに隠された文献の発見、日本の海への没入(1958年から1998年の間に日本の大部分が沈没するという予言)などの予言はことごとく外れました。1998年にイエス・キリストが再来し、その際巨大地震が相次いで起こり地球の地形が一変するという予言も外れました。
では、たつき諒氏の「新たな災難が起こるのは、2025年7月5日」という予言も、ケーシーの予言のように外れるのでしょうか。そもそも、どうしてそんな予言をする必要があるのでしょうか。本書の「作者あとがき」で、たつき氏は「1996年当時、『ほんとうにあった怖い話』編集部の『読者の体験談募集』宛には、『大津波の夢を見た』という投稿がたくさんあったそうです。私と同じような予知夢を見た人は、実はたくさんいるのだと思います。『予知』は『警告』です。『避けられる』から『見せられた』。『災難を避ける』『災難を小規模にする』手段があるということだと思います。夢を見た日が現実化する日ならば、次にくる災難の日は『2025年7月5日午前』ということになります。本書が、その心構えのきっかけになってくれることを祈っています」と書いています。
「『夢日記』解説」の「大津波の後に訪れる新たな世界」で、作者は「2025年7月に起こる大津波の後の世界についてですが、私には、ものすごく輝かしい世界が見えています。大地震による災害は、とても悲惨でつらいものです。でも、地球自体がマグマという熱エネルギーを抱えて生きているわけですから、どうしても避けられないものなのでしょう。それを覚悟した上でみんなが協力し合えれば、必ず生きていくことができます、しかもそれは、明るくてきれいな未来です。悪いことのあとにはいいことが、いいことのあとには悪いことが起こるといいますが、この大災難が起こることによって、世界の状況は大きく変わっていきます」と述べています。
そして、次なる社会について、作者は「太陽が輝いていて、その光の中で誰もが一所懸命に働いたり、家族で仲良く食事を摂っていたり……普通といえば普通の光景ですが、『平和』とは”安心できる”こと、とブータンの人たちがいっているように、『安心』こそが幸せだと思える社会なのだと思います。日本には『結』という言葉があります。『結』とは、労働力を提供し助け合う仲間たち。農作業などのとき、隣近所みんなで協働で助け合うのは当たり前のことでした。準備ができていれば被害は少なくてすむとはいえ、それなりの被害は避けられません。でも、そのとき仮に地球の人口が激減したとしても、残った人たちの心は決して暗くならないでしょう。心の時代の到来、つまり心と魂の進化が起こるからです」と述べています。
北九州市長と災害支援協定を締結
「心の時代」が到来するという作者の言葉に、わたしは深い感銘を受けました。「平和」で「安心」な社会の前提となる太陽は、万物に光を降り注ぎます。わが社の社名である「サンレー」というのはSUNRAY、つまり太陽光線のことです。また、作者が取り上げた「結」という相互扶助システムは、サンレーの本業である「冠婚葬祭互助会」のルーツの1つであるとされています。わが社は、互助会のアップデートして自社施設を災害避難所として地域社会に提供しています。すでに大雨などの災害で避難所を提供していますが、将来的には地震や津波などの災害支援をする可能性も高いと言えるでしょう。
『心ゆたかな社会』(現代書林)
そして、サンレーの社長として20年目を迎えるわたしは、100冊目の著書である『心ゆたかな社会』(現代書林)を上梓しました。同書の内容が「心の時代」の到来を訴えていることは言うまでもありません。作者の予言は、「サンレーよ、高い志をもって世の中を明るくせよ!」というメッセージであり、今年の11月18日に創立55周年を迎えるわが社へのエールのように思えてなりません。何事も陽にとらえて、他者の幸せを願う志を掲げていれば、企業は必然的に発展していくものと確信しています。
カンパニーズ・ビー・アンビシャス!
ということで、当記事の冒頭に登場する拙著『アンビショナリー・カンパニー』のメッセージへと繋がるのでした。同書は、ある意味で今後の日本社会を予見した本ですが、11月初旬に発売予定です。どうぞ、お楽しみに!