No.2105 死生観 『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』 小澤竹俊著(アスコム)

2022.02.07

『もしあと1年で人生が終わるとしたら?』小澤竹俊著(アスコム)を読みました。ホスピス医が「これからどう生きれば幸せなのか」について書いた本です。著者は1963年東京生まれ。87年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。91年山形大学大学院医学研究科医学専攻博士課程修了。救命救急センター、農村医療に従事した後、94年より横浜甦生病院ホスピス病棟に務め、病棟長となる。2006年めぐみ在宅クリニックを開院。これまでに3500人以上の患者を看取ってきたそうです。医療者や介護士の人材育成のために、2015年に一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会を設立。著書に『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』があります。

本書の帯

本書の帯には、男性が寝そべっているイラストが描かれ、「人生をやり直したい」「仕事、夢、やりたいことは」「自分らしく生きたい」「後悔なく生きるための17のこと」「3500人を看取ってきた医師からのメッセージ」「ベストセラー10万部突破!」と書かれています。

本書の帯の裏

帯の裏には「人間関係、家族、仕事、夢、目標」「私たちはどう生きればいいのか――」として、「20年間、人生の最終段階の医療に携わり、3500人を超える患者さんたちをお見送りしてきて、私には一つ、気づいたことがあります。それは、『死』を前にすると、人は必ず自分の人生を振り返るということ。そして、自分の人生で誇れること、後悔していることなどを少しずつ整理し、最終的には多くの方が、『良い人生だった』と納得して、穏やかにこの世を去っていかれます。日々忙しく過ごしていると、人はなかなか、自分の生き方を見つめ直したり、自分にとって本当に大切なものに気づいたりすることができません。でも、もし。もし、あと1年で人生が終わりを告げるとしたら……。あなたは何をしたいと考えるでしょうか。(本文より)」と書かれています。

アマゾン「出版社より」

カバー前そでには、「少しの時間でも構いません。あなたの人生をふり返ってみませんか。後悔することはないか。これからどう生きれば幸せなのか。人生を変えたいと思うすべての人に読んでほしいホスピス医からのメッセージ」と書かれています。

アマゾン「出版社より」

本書の「目次」は、以下の通りです。
「はじめに」
CHAPTER1
もしあと1年で人生が終わるとしたら?
01 自分の人生に意味があったと思いますか?
02 どうしてもやりたいことはありますか?
03 今、公開していることはありますか?
04 これからの人生で何を大事にしたいと思いますか?
コラム「人生の最後の日はどのようにやってくるか」
CHAPTER2
人間関係や家族について
05 ひとりで頑張りすぎていませんか?
06 「自分らしさ」は見つかりましたか?
07 家族、友人との時間は十分にとれていますか?
08 孤独を抱えていませんか?
CHAPTER3
仕事や夢、目標について
09 今までの仕事や働き方に満足していますか?
10 努力したことにむなしさを感じていませんか?
11 今までの人生で一番誇らしいことはなんでしょう?
12 未来に夢を描けますか?
CHAPTER4
人生をもっと楽しむために
13 どうすれば、生きてきてよかったと
思えるでしょうか?
14 つらい悩み、生き苦しさはありますか?
15 自分を追いつめすぎていませんか?
16 「自分は思い通りに生きられていない」と
思い込んでいませんか?
17 自分の心の声は聞こえていますか?
「おわりに」

アマゾン「出版社より」

「はじめに」には、こう書かれています。
「はじめに、みなさんに質問です。
もし、あと1年で人生が終わるとしたら、あなたは、
旅行に行きたいですか?
家族と楽しいときをすごしたいですか?
もっと仕事をしたいですか?
趣味に時間を使いたいですか?
おいしいものが食べたいですか?
ほしかったものを買うでしょうか?
まだまだやりたいことがたくさんあるという人がほとんどでしょう。なぜこのような問いかけをしたかというと、人生に締め切りを設けることで、何がやりたいか、何が大切かが明確になるからです」

03「今、公開していることはありますか?」では、「人が後悔するのは当然である」と指摘した上で、著者は「ただ、後悔をやわらげることはできます。その1つの方法は、同じようなことに苦しんだり落ち込んだりしている人と、気持ちを分かち合うことです。それを『傷の舐め合い』という人もいるかもしれませんが、私は、傷の舐め合いは、決して悪いことだとは思いません。同じような境遇の人と気持ちを分かち合い、『自分は一人ではない』『同じ苦しみを抱えている人がほかにもいる』『自分の苦しみを一緒に味わってくれる人がいる』と思えるだけで、苦しみや悲しみは、かなり軽減されるはずです」と述べます。これは、まさに「ケア」の考え方です。「ケア」とはもともと「苦しみを分け合う」という意味があるのですから。

著者は、患者の家族に、何らかの重大な判断を下してもらうときには、次の3つのポイントを伝えているそうです。
(1)1人で決めないこと
(2)1回で決めないこと
(3)専門家の言いなりにならないこと
さらに、「過去を振り返り、患者さんが何を大切にし、何に誇りを持って生きてきたのか、ご家族みなさんで思い出してみてください。そうすれば、ご本人が何を望むかが見えてくるでしょう」とも話しているそうです。

コラム「人生の最後の日はどのようにやってくるか」では、長い人生であろうと、短い人生であろうと、死は1つの区切りであるとして、著者は「誰もが、いろいろな人と関わりを持ち、一生懸命生きてきたのです。良い人生だったかどうかは、第三者が判断できるものではありません。その方の人生はご本人だけのものだと、私はいつも心から思います」と述べています。まったく同感です。

10「努力したことにむなしさを感じていませんか?」では、著者はいつも、「人生の中でもっとも思い出深い出来事は何ですか?」「大切な人に伝えておきたいことはありますか?」といった、いくつかの質問を通して、患者が自分の人生を振り返るサポートをしていることが紹介されます。これを「ディグニティセラピー」というそうです。著者は、「質問に答えるためには、さまざまな記憶を掘り起こさなければならず、漠然と考えていてはまとまらない思考も、人に話したり文字にしたりすることで、次第に輪郭がはっきりとしていきます。その過程で、ご自分が生きてきた意味に気づいたり、人生を肯定できるようになったりする方は少なくありません」と述べています。

15「自分お追いつめすぎていませんか?」では、「あと1年で人生が終わるとしたら、これをやる必要はあるだろうか?」と考えてみることを薦め、著者は「『人生があと1年で終わる』と考えると、よけいなものがそぎ落とされ、今の自分にとって本当に大事なことだけが見えてきます。そうすれば、たくさんある『しなければならないこと』に優先順位をつけ、優先度の低いものについては、手放したり人にゆだねたりすることができるようになり、気持ちや時間に余裕が生まれるかもしれません」と述べます。非常にシンプルな考えですが、説得力がありますね。

16「『自分は思い通りに生きられていない』と思い込んでいませんか?」では、人生はなかなか思い通りにならず、選択の自由が狭められていくとしながらも、著者は「それでも生きている限り、選択の自由は与えられます。たとえば、自力でトイレに行けなくなった患者さんは、おむつを使うか、ポータブルトイレを使うか、尿留置カテーテルを使うかを選ぶことができます。身体が動かなくなった方は、誰に介護を頼むかを選ぶことができます。私たちは、この世を去る最後の瞬間まで、常に『より良い選択』をし続けることができるのです」と述べるのでした。読んでいるうちに元気になってくる不思議な本です。死生観とは「死に方」ではなく「生き方」についての考えなのだということを教えてくれます。わたしには『死ぬまでにやっておきたい50のこと』(イースト・プレス)という著書がありますが、その内容にも通じる部分が多かったです。

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