No.2173 オカルト・陰謀 | 心霊・スピリチュアル | 書評・ブックガイド 『月刊ムー書評大全』 星野太朗著(青土社)

2022.09.15

『月刊ムー書評大全』星野太朗著(青土社)を読みました。著者は、月刊「ムー」で書評を毎号執筆している「ムー」専属書評家で、神秘思想研究家。日本を代表するオカルト雑誌の2017年9月号から2022年6月号までに掲載された約300冊分の書評が収められています。最初は「どうせ、トンデモ本ばかりだろう」と甘く見ていたのですが、どうしてどうして。自然科学の専門書から本格的な神秘哲学の本まで、レベルの高い本のラインナップに驚きました。本書を読んだ後、まだ未読の数十冊の本をアマゾンで注文しました。

本書の帯

本書の帯には、「日本のスピリチュアル・シーンの動向を見渡す絶好の資料! こんなブックガイド見たことない!――鏡リュウジ」「超古代文明、UFO、妖怪、陰謀論、量子力学…オカルト関連書にとどまらず、天文学、考古学から理論物理学まで多岐にわたる本を扱った、『月刊ムー』の隠れ人気記事であるブックレビュー、待望の書籍化」と書かれています。

本書の帯の裏

アマゾンの内容紹介には、「『世界の謎と不思議に挑戦する』前代未聞の書評集」として、「『ムー』本誌の隠れ人気記事、ブックレビュー。その書評の範囲はオカルト関連書にとどまらず、天文学、考古学から理論物理学まで多岐にわたり、業界関係者の評価も高い。過去数年にわたる約300冊のブックレビューをまとめた、魅惑のオカルト世界への扉を開くガイドブック」と書かれています。

一条真也の読書館『オカルト編集王』で紹介した「月刊ムー」編集長の三上丈晴氏がやり手なのでしょうか、最近、「月刊ムー」から生まれた話題の書が多いです。特に『地球の歩き方 ムーー異世界(パラレルワールド)の歩き方ー超古代文明 オーパーツ 聖地 UFO UMA』(学研プラス)がベストセラーになっています。同書は、「地球の歩き方」「月刊ムー」という、共に1979年創刊のロングセラーブランドがスペシャルコラボした本で、世界中に残る謎と不思議に満ちたスポットの数々を案内します。諸説ある中で、「地球の歩き方」「ムー」両方の視点から各スポットの神秘にせまるパラレルワールド(同時並行世界)の歩き方が示されます。

さて、本書『月刊ムー書評大全』で取り上げられた本は約300冊にのぼりますが、わたしが読んだ本もあれば、読んでいない本もあります。そこで既読の本を15冊、未読の本を15冊、計30冊をここで紹介したいと思います。まずは、既読の本から。1冊目は、一条真也の読書館『21世紀の民俗学』で紹介した畑中章宏氏の著書(KADOKAW)で、「ここには過去ではなく未来を指向する、まさに『21世紀の民俗学』がある。何しろ本書は、『自撮り棒』から『事故物件』、『ポケモンGO』から『UFO学』に至るまで、現代日本ならではの『ごく普通に世の中に溢れているが、よくよく考えれば奇妙な事象』を目敏く採り上げ、民俗学的視点と手法を武器として、その本質に迫ろうとする。試みなのである。とはいうものの、記述自体はそんなに大上段に構えたものではない。元来カルチャー雑誌の連載記事だったこともあってか、各章はあくまでも一話完結式の気軽に読める好エッセイとなっている」と紹介されています。

既読の2冊目は、 一条真也の読書館『アメリカ超能力研究の真実』で紹介したアニー・ジェイコブセンの著書(太田出版)で、「国家機密プログラムの全貌(ヒストリカル・スタディーズ)」というサブタイトルがついています。同書の紹介は、「2013年1月、CIAは機密解除された1300万頁に及ぶ文書を公開。これにより遂に超能力の実在は公のものとなった。本書はこれらの文書を中心に、著者が独自に調査した機密ファイル、さらには50名以上に及ぶ関係者への綿密な取材に基づき、アメリカ政府の数十年に及ぶ超能力研究プロジェクトの全貌を白日の下に曝け出す、衝撃のドキュメント」となっています。また、「著者の筆力の賜物か、良質なドキュメンタリー番組でも見るような迫力に終始圧倒されっぱなしで、読み始めたら止まらない。と、思っていたら何とあの映画監督のスティーヴン・スピルバーグが本書に注目、放映権を獲得して現在アメリカでTVシリーズの製作が進行中であるという。これが放映された暁には、アメリカのみならず全世界にセンセーションを巻き起こすことは必至。流行を先取りする意味でも、是非今のうちに、一足早く本書を手に取って見られることをお奨めする」とも書かれています。

既読の3冊目は、一条真也の読書館『オカルト・クロニクル』で紹介した松閣オルタ氏の著書(洋泉社)で、「一見軽佻にも見える本書の文体は、その裏に著者の真摯な姿勢を韜晦している。単なる事件の紹介に留まらず、それぞれの事象について、著者ならではの斬新な謎解きや考察、大胆な仮説などが抜かりなく提示されているのはさすがと唸らされる。さらに『信奉派』と『懐疑派』のそれぞれの意見が公平に採り上げられていて偏りがないという点も、本書の価値をより高めている。『懐疑的視点を乗り越えた先にある〈本物〉の探究にこそ、信奉者はタフなロマンを持つべき』という著者の姿勢はまことに天晴と言わざるを得ない」と書かれています。

既読の4冊目は、一条真也の読書館『オカルティズム』で紹介した大野英士氏の著書(講談社)で、「非理性のヨーロッパ」というサブタイトルがついています。同書については、「人間の意識や世界認識のあり方には時折、大きな断裂が生じているという立場を取る。この『認識論的断絶』ともいうべき巨大な変化を考慮に入れなければ、各時代を通じたオカルティズムの動向は理解不能となるというのだ。実に卓越した見識である。著者はこのような観点に基づき、近代以降のオカルティズムの歴史とその広がり、意味するところを遺憾なく描き出す。その巧みな手腕と著者の博識には脱帽するしかない」と書かれています。

一条真也の読書館『シンクロニシティ』で紹介した秋山眞人氏の著書(河出書房新社)で、「願望が実現する『偶然』のパワー」というサブタイトルがついています。同書については、「シンクロニシティという現象と、読者個人との関わりを根本的に変えるポテンシャルを秘めている。一通り基本概念の説明を終えた後で、内容は『自分でシンクロニシティを発動する』とか『予兆を察知して未来を操作する』などといった、前人未踏の領域に踏み込んでいくのだ。その結果、たとえば願望を実現させたり、将来的な危険を避けたり、あるいは単純にギャンブルに勝つ、などということが、この現象の応用によって可能となってくるという。何とも痛快な話ではないか」と書かれています。

既読の6冊目は、一条真也の読書館『昭和・平成オカルト研究読本』で紹介したASIOSの著書(サイゾー)で、「内容は、古くは大正時代に端を発する『竹内文書』や日猶同祖論に始まって、昭和・平成のオカルトブームの紹介、オウム事件やライフスペース事件などのオカルト絡みの事件の総括と検証、さらにはオカルトに関するTV番組や漫画、雑誌、出版社、人物伝まで、良くもここまでと思えるほど多岐に亘る情報がこれでもかと詰め込まれている。まさに日本近代オカルト史の百科全書と呼んでも過言ではない。元来が『懐疑的な調査』を標榜する人々による労作であるから、当然ながら記述は客観的で、出典も明記され、資料的価値も高い。便利なレファレンスとしても、オカルト界の裏面を暴露する興味深い読み物としても秀逸な本書は、オカルトファンなら必ず座右に備え置きたい名著と言える」と書かれています。

既読の7冊目は、一条真也の読書館『エイリアン』で紹介したジム・アル=カリーリの編著(紀伊國屋書店)で、「」というサブタイトルがついています。同書については、「世界最高の科学者集団がそれぞれの専門知識をフルに活用して、ありとあらゆる観点から地球外生命に関する最新の知見を紹介し尽す、何とも贅沢極まりない本なのである。執筆者代表を務める英国科学協会会長ジム・アル=カリーリ以下、天文学、宇宙物理学、生化学、遺伝学、神経科学、心理学などを極めた総勢20名に及ぶ超一流の執筆陣の錚々たる陣容は、それだけでも圧倒される」と紹介されています。

既読の8冊目は、一条真也の読書館『近現代日本の民間精神療法』で紹介した吉永進一・塚田穂高・栗田英彦編著(国書刊行会)で、「不可視なエネルギーの諸相」というサブタイトルがついています。同書については、「大正期に爆発的な流行を見た『霊術・精神療法』。その広がりは暗示や気合、霊動などのような日本の伝統を感じさせるものから、透視やテレパシー、念力のような海外渡来のものまで多種多様、最盛期には施術者数3万を数えたという。だがこの運動は昭和に入ると共に急速に衰退し、1980年代に再発見されるまで、その全貌は杳として知れなかった。本書は、『さまざまな領域に姿を現す民間精神療法の技法と思想の系譜をひも解き、歴史研究の基礎を構築することを目指』す本格的研究書」と紹介されています。

既読の9冊目は、一条真也の読書館『時間は存在しない』で紹介したカルロ・ロヴェッリの著書(NHK出版)。著者は「ホーキングの再来」とも称される天才的な理論物理学者で、量子論と重力理論の統合を目指す「ループ量子重力理論」の提唱者ですが、「だがありがたいことに、天はこの著者に二物を与えてくれていた。難解な物理学理論を、一般大衆にも解りやすく説き明かす稀有な才能である。先端物理学の解説書だというのに、何と出て来る数式はたったの一つ。それよりもむしろ、古代から現代に至る哲学者の思索や、歴史上のエピソードが豊富に取り入れられ、解らなくとも解ったような気になってしまえる実に巧みな構成である。理系はもちろん、文系の人にこそお奨めしたい物理学の啓蒙書。その比喩や文体の美しさを、とくと味わっていただきたい」と書かれています。

既読の10冊目は、一条真也の読書館『SS先史遺産研究所アーネンエルベ』で紹介したミヒャエル・H・カーターの著書(ヒカルランド)で、「本誌『月刊ムー』の読者ならいざ知らず、一般的には『アーネンエルベ』なる歴史用語はほとんど知られていないと言っても過言ではない。本書によればそれは『1935年、ナチス親衛隊(SS)全国指導者ハインリヒ・ヒムラーの主導により、ドイツ先史時代の精神史研究を目的として設立された知られざる研究機関』である。当初はゲルマン民族の歴史・民俗を専門としていたこの機関の研究対象はその後、『強制収容所での凄惨な高空・低温医学実験から、秘密兵器開発』にまで拡大し、遂にはルーン文字や紋章学、北欧神話、チベット探換、宇宙氷説、人種論、遺伝学、ダウジングロッドといったオカルト的領域まで包含するに至った」と説明し、「何しろこの『アーネンエルベ』こそ、現在に至るも半ば伝説化したナチスにおけるオカルティズム研究の言わば中核を担う機関。これを知ることなくして、ナチスとオカルティズムの関係やその先進的な軍事科学技術の真相を明らかにすることなど到底覚束ない」とした上で、「価格も1万円近く、お手頃とはとても言い難いものの、その内容とヴォリュームを勘案すれば決して高い買い物ではない。何せ文字通り50年に一度、登場するかどうかという名著中の名著である。このような高邁な企画を今後とも安定して継続していくためにも、読書家の皆様のご協力は欠かせない。是非、挙って本書を習い求め、書架に加えていただきたい」と書いています。この書評は熱過ぎる!

既読の11冊目は、一条真也の読書館『日本オカルト150年史』で紹介した秋山眞人氏の著書(河出書房新社)で、「本書は存在自体がまさに一つの奇跡と言うべき傑作である。だが本書の著者が、『ムー』の読者には夙にお馴染みの超人・秋山眞人氏であると知れば、その奇跡もむしろ当然。何しろ氏は大学院の博士課程で大正期の霊術を研究。さらに自ら卓越した超能力者として、長年に亘りオカルト界の表も裏も知り尽くしてきた人物なのだ。しかも内容はまさに無類の面白さ。次々と投入される圧倒的な情報量に加え、文章の読みやすさ、そして行間に汪溢する著者の『オカルト愛』の深さに、ページを捲る手が止まらなくなる」と書かれ、さらには「肯定するにせよ批判するにせよ、苟も『オカルト』に興味を持ち、何かを語らんとする者ならば、須く座右に置いて知識の共通基盤とするべき、必携の基本文献である。韋編三絶、何度も熟読して己の血肉としたい」と述べるのでした。

既読の12冊目は、一条真也の読書館『怪異の表象空間』で紹介した一柳廣孝氏の著書(国書刊行会)で、「メディア・オカルト・サブカルチャー」というサブタイトルがついています。「『怪異』とは読んで字の如く『怪しいこと、普通とは異なること』で、化物、変化、妖怪、幽霊を含む『常識では計り知れない出来事や現象』。そして著者によれば、われわれが怪異を怪異として認識するプロセスには『時代や地域特有の文化的感性』が潜んでいる。すなわち怪異とは『私たちがこの日常、この現実を把握するたに使用している認識の枠組みの、陰画なのである』」と書かれ、さらに「つのだじろう『うしろの百太郎』や熊倉隆敏『もっけ』といった新旧の漫画作品が論評の運上に載せられたかと思えば、70~90年代を席捲したオカルト、精神世界、ニューサイエンスといった一連のムーヴメントの軌跡が透徹した視線で俯瞰されたりもする。掉尾を飾る『もののけ姫』論は、この映画を見た人全てに眼を通していただきたい緻密で深遠な論考となっている」と紹介されます。

既読の13冊目は、一条真也の読書館『スーパーナチュラル・ウォー』で紹介したオーウェン・デイヴィスの著書(ヒカルランド)で、「第一次世界大戦。歴史上、最も死者数の多かった戦争である。そして著者によれば、「脱魔術化」の時代に生じた筈のこの戦争は、実際には予言やヴィジョン、天使や聖母の出現、占いや各種の魔術、そして護符などで溢れ返った『超自然戦争』に他ならなかったのである。本書は『戦争によって〈迷信的なるもの〉への知的関心が刺激されるさまを概観し、大戦の超自然的側面を暴露して解釈しようとする歴史家が直面する試練に光を当てるもの』である。凄惨な塹壕戦の最中に兵士たちが縋り付いた呪物の数々。そしてその兵士たちの死を好機と見て、彼らの魂を取り込もうとする教会や心霊術者たち等々、戦争のオカルト的側面をこれでもかと網羅する『世にもおもしろい書物』が本書である」と紹介されています。

既読の14冊目は、一条真也の読書館『神になった日本人』で紹介した小松和彦氏の著書(中央公論新社)で、「私たちの心の奥に潜むもの」というサブタイトルがついています。同書については、「今も神として崇拝される11柱の人神を採り上げ、彼らを祀る神社が建立された経緯や、生前の彼らが歩んだ人生を考察する。採り上げられるのは、藤原鎌足、弘法大師空海、安倍晴明、楠木正成、豊臣秀吉、徳川家康、西郷隆盛、崇徳上皇、後醍醐天皇、佐倉惣五郎、平将門の11人。神として祀られるほどなのだから当然であるが、いずれも日本史上に独自の足跡を残した人物であり、生前から多くの人の畏敬や畏怖の念を集めていた。著者によれば、『日本人にとって、死者の〈たましい〉とは亡くなった人の〈物語〉』であり、神社とはその物語を記憶し永続させるための『記憶の依代』に他ならない」と紹介されています。

既読の15冊目は、一条真也の読書館『トランプ時代の魔術とオカルトパワー』で紹介したゲイリー・ラックマンの著書(ヒカルランド)で、「本書は、トランプ政治とそれを取り巻く状況の背後に蠢くオカルトの潮流を精微に論じた大作である。古今東西の秘教史上のさまざまな思想や事象を自由自在に引用する著書の博覧強記ぶりはまさに驚嘆の一言。並みの本の10倍はあろうかと思える圧倒的な情報密度は凄絶で、読むだけで情報の往復ビンタを食らったような気分になる。『オカルト・ポリティクス』を主題とする研究所であるが、同時に秘教の歴史を通覧する百科全書ともなり、ネット時代における魔術を概観する案内書にもなる。そうした多様な読み方を許容するのも本書の魅力である」と紹介されています。

次に、未読の本を15冊紹介します。1冊目は、『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか』野村泰紀著(星海社)からで、「著者によれば、われわれの住むこの『宇宙』は、無数にある『宇宙たち』の内のただ一つに過ぎない。宇宙がたくさんあると言われても、素人には文字通り雲を掴むような話だが、その一見荒唐無稽な理論は、実際には宇宙膨張の詳細な観測と最新の理論物理学の発展の自然な帰結であることが丁寧に解き明かされる。まさに天動説から地動説への移行の時のような、衝撃的な宇宙論の転換である」と書かれています。

未読の2冊目は、『海に沈んだ大陸の謎 最新科学が解き明かす激動の地球史』佐野貴司著(講談社)で、著者は「結論を言えば、地質学的観点から見る限り、伝承に言う1万2000年前に太平洋に沈んだ大陸そのものは存在しない。だが実際には、オーストラリア大陸の東側に、94%が海面下にある『ジーランディア』と呼ばれる巨大な海底台地が存在しており、これは十分に『大陸』と見なせるという。また大西洋にも、『リオグランデ海台』と呼ばれる大陸地殻があり、これもまた『海に沈んだアトランティス大陸とみなすこともできなくはない』」と述べます。

未読の3冊目は、『RED ヒトラーのデザイン』松田行正著(左右社)で、著者は「誤解を恐れずに敢えて挑発的な言辞を弄するなら、ナチスおよびヒトラーは『魅力的』である。ナチスについては、これまでもさまざまな切り口から、あらゆる分析が為されている。歴史学、心理学、社会学、軍事学、そしてオカルティズム・・・・・・。もはやあらゆる分析がされ尽してしまったかのようなこの題材だが、まだまだそうではなかったと自らの不明を羞じることとなった。何と本書は、『デザイン』という全く斬新な視点からナチスとヒトラーを読み解こうとする怪著、いや快著である。ナチスのあの強烈なハーケンクロイツを初めとするさまざまなデザインは如何にして生み出され、如何にして大衆を狂気へと導いていったのか」と述べます。

未読の4冊目は、『魔王、死す! D・ロックフェラーの死で激変する世界勢力図』船瀬俊介著(ビジネス社)で、著者は「久々に登場したまさに正統派・本格派の陰謀論の啓蒙書。2017年3月20日、『魔王』と呼ばれる人物が101歳で死去した。『戦後70年以上にわたり世界権力の最高峰に君臨した』ディヴィッド・ロックフェラーである。この人物の死によって、それまで世界を支配していた箍が外れ、今後、世界は激動の時代を迎えることになる。その予兆のひとつが、『フリーメイソンの制禦の効かぬ大統領』トランプの出現だ、と著者は喝破する」と書いています。

未読の5冊目は、『何かが後をついてくる 妖怪と身体感覚』伊藤龍平著(青弓社)で、著者はかつて、日本文化研究センターにおいて「妖怪伝承データベース」作製に参画した人物です。これはその後、日本屈指の人気学術コンテンツとなったといいますが、「著者によれば、妖怪とは『身体感覚の違和感のメタファー』である。たとえば道を歩いているとき、人間の背後には死角が生ずる。この死角に対する違和感・恐怖が『背後からついてくる何か』という感覚を生み、その感覚が個人を越えて人々に共有される時、そこに妖怪が生まれる、というのである」と紹介されています。

未読の6冊目は、『タロットの神秘と解釈』松村潔著(説話社)で、「タロットと言えば一般には専ら占い用のカードと認識されているが、著者によれば実際にはタロットは占いにはあまり向いておらず、むしろ『手引書や教科書』『経典』と見なすべきものである。このカードに記されているのは『精神の進化の手順』であり、『世界脱出のマニュアル』、すなわち著者の言う『スターピープル』となって『星に帰還する』ためのマニュアルなのだ。数ある日本語のタロット文献の中でも、これほど高邁な思想に基づいて書かれているものはちょっと思い出せない。このような大著が日本人の手によって書かれ、日本で出版されているという事実は世界に誇るべき文化的事件であると言えよう」と書かれています。

未読の7冊目は、『トランスヒューマニズム 人間強化の欲望から不死の夢まで』マーク・オコネル著(作品社)。「トランスヒューマニズム」とは耳慣れない言葉ですが、「超人間主義」などと訳されます。主として最先端の科学テクノロジーを用いて人間の身体能力や認知能力の強化・拡張を図り、既存の人聞存在を超越して「進化」することを目指すラディカルな思想運動であるということで、著者は「既にシリコンバレーでは、こうした運動が広く受け入れられ、資金も提供されて盛んに研究されているという。ちょっと前まではSFでしかなかったことが、つい目と鼻の先の現実になりつつあるのだ。人類の今後の進歩を占う上で確実に抑えておきたい情報が満載されていると共に、また心とは何か、死とは何かといったような普遍的な問題に対しても全く新しい観点から示唆を与えてくれる、現代人必読の書である」と述べています。

未読の8冊目は、『不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?』須藤靖著(講談社)で、「マルチバース」という概念をテーマにしています。この概念の導入により、単にこの宇宙の不自然さが解消できるのみならず、「宇宙に果てはあるか」「ビッグバンはどこで起ったのか」「宇宙人はいるのか」といった誰もが知りたい疑問の全てに科学的な答えが出てしまうとして、著者は「そんな最新の宇宙論が実に解りやすく説かれた驚愕の書である。中でも評者の目から鱗が何枚も剥がれ落ちたのが『エヴェレットの多世界解釈』の解説である。従来のそれは『観測をするたびに世界が分岐する』と説明されることが多く、正直、全く意味不明だったのだが、本書の説明なら実にすんなりと腑に落ちるのである」と述べています。

未読の9冊目は、『光の量子コンピューター』古澤明著(集英社インターナショナル)で、量子力学の実用化として現在、最もホットな話題となっている「量子コンピューター」についての本です。本書は、長年にわたってその開発の第一線を疾走してきた超一流の物理学者が、量子コンピューターとは何かを一般向けに説いた啓蒙書であり、「著者の提唱する『光量子コンピューター』は、量子ビットに光の量子である光子を用いるもので、これまでの原子やイオンを用いるものに比べてさまざまな利点がある。そして著者は独自のアイデアによって1998年に世界初の『量子テレポーテーション』に成功。2011年には『シュレーディンガーの猫状態の(すなわちマクロな)量子テレポーテーション』まで実現させてしまう」と述べます。

未読の10冊目は、『中国 封印された超常現象』妙佛貯(ナチュラルスピリット)で、「中国人民の生活には『仙姑』や『風水先生』など呼ばれる霊能力者が深く根差している。彼らの言動が民衆の行動に大きな影響を及ぼす土壌が今なお厳然として存在しているのだ。そこで中国政府は、そのような超常現象を専門に調査・研究するための特務機関を創設した。それが『第091気象研究所』である。同研究所の任務は三つ。『社会に大きな影響を及ぼす可能性がある怪事件の実態調査』『超常現象に関する情報の管理と独占』『情報と世論のコントロール、それによって中国共産党を守り、ひいては共産主義体制を堅持する』ことである。そしてこれらの活動の過程で、同研究所は超常現象の存在自体はもはや自明のものとして認識し確認しているらしい。本書では、この第091気象研究所が取り組んだとされる超常現象の数々が白日の下にさらされる」と書かれています。

未読の11冊目は、『ノヴァセン 〈超知能〉が地球を更新する』ジェームズ・ラヴロック著(NHK出版)。ブログ「『ガイア理論』のジェームズ・ラブロック死去」で紹介した「知の巨人」が齢100歳を越えて、ガイア理論の衝撃を遙かに上回る名著『ノヴァセン』を世に問うたことを紹介し、「驚愕である。まさに本書は、今ここに存在していること自体が紛れもない奇蹟そのものであり、人類に対する今世紀最大の福音と言っても過言ではない。標題の『ノヴァセン』とは、地球が今後迎えることになる、新たな地質年代のこと。この時代においては、人間の知能を遙かに凌駕する〈超知能)が出現し、新たな生命圏を形成する、と著者は説く。そして人類は、その超知性の誕生と進化を促す立場にある存在だというのだ。素晴らしき近未来を予測する本書はまさに崇高なる予言書であり、宇宙と人類の存在の意味を問う深遠なる哲学書であり、壮大で美しいイメージが鏤められた散文詩である。読み返す度に新たな発見があり、新たな問題が提起される本書は、まさに読者の生涯の友となるだろう。一生のうちに何度、これほどの本に巡り会えることだろうか。読者よ、この奇蹟を、その身で体感せよ!〉と書かれています。

未読の12冊目は、『天使と人の文化史』ピーター・スタンフォード著(原書房)。近年の調査によれば、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という、いわゆる三大「一神教」の人気はここのところ下落の一途を辿っていますが、これに対して「天使への信仰はうなぎ上り」であるとして、「英国人の何と10人に1人が実際に天使の存在を体験しており、3人に1人が守護天使を信じているというのだ。つまり『ある意味、天使は神よりも健闘している』。このような時代にあって、天使に関する正しく体系的な知識を得ることのできる書物は必須。その点、体裁こそ一見硬派だが、特に専門的すぎたり難解すぎるところのない本書は、万人にお奨めできる好個の天使入門書である」と紹介されています。

未読の13冊目は、『黒魔術がひそむ国ミャンマー政治の舞台裏』春日孝之著(河出書房新社)。2021年2月のクーデター以後、ある意昧で世界で最も注目を集める国となったミャンマーですが、著者は「あまり知られていないことだが、このミャンマーでは大統領の誕生日は誰も知らない。国家最高機密に指定されているのである。何故か。『ミャンマーの国家指導者はアウラーン、つまり誰かに呪われることを心底恐れている』からである。敬虔な仏教国として知られるミャンマーの精神世界に占星術や精霊信仰、超能力者信仰、数秘術や手相術などといった要素が渾然一体となっている。そうした風土がミャンマーの政治、政策決定にも大きな影響を及ぼしているのだ、と著者は説く。本書は『ミャンマー政治史の空白を埋めるパズルの一片』としてミャンマーの精神世界に切り込んだ異色のルポルタージュ。著者の春日孝行氏は元毎日新聞編集委員。正統派の凄腕ジャーナリストが黒魔術の世界に切り込めば、これほどのものが出来上がるのか、とその凄味に唸らされる」と述べています。

未読の14冊目は、『量子力学的願望実現の教科書』高橋宏和著(SBクリエイティブブ)で、「何と本書においては、『引き寄せの法則』の原理が『量子力学』によって全て解明されているのだから驚くしかない。何しろ本書によれば『目に見える世界』はE=mc2であり、『目に見えない世界』はE=hvで表されてしまうのである。いったい何のことか解らないかもしれないが、著者によれば『量子力学を学ぶと、引き寄せの法則や思考の法則など目に見えない宇宙の法則を理解でき、腑に落ちる感覚が得られる』。のみならず、例えばいわゆる『カルマの法則』はニュートン力学で解明できるし、自然界の四つの力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)の特性は人間の四つのタイプを表しているというのだ。そうした理論を踏まえて、著者は宇宙を支配する11の法則に基づく願望実現の具体的な方法を説いていく」と紹介されています。

そして未読の15冊目は、『西洋交霊術の歴史』リサ・モートン著(原書房)で、「古代のメソポタミア、エジプトのネクロマンシーから説き起こし、ギリシアやローマ、キリスト教、中世の魔術、そして啓蒙主義へと、一通りの歴史を押えた後(ここまでで全体の1/3)、いよいよ19世紀におけるスピリチュアリズムおよび『交霊会』の誕生の次第が活写される。おそらくこの章が本書の眼目の1つであり、実に読み応えがある。次に20世紀におかる、2つの世界大戦とスピリチュアリズムの関係などが論じられる。心霊主義者であったコナン・ドイルと、会議はの奇術師フーディニの対決など、珍しいエピソードも目白押し。最後に、現代における交霊術が概観される。有名なJ・B・ラインによる『超心理学』の発足とその失墜、iPhoneにインストールできる幽霊探知アプリ、オンラインでシェアされる交霊会など、こちらも興味深い話題が満載である。霊との交流を願った人間の営為を文化史的側面から俯瞰する好著。本誌読者の書架に是非」と書かれています。「本誌読者の書架に是非」というのは良いですね。

ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー

この未読の15冊以外にも、わたしは、30冊以上の本をアマゾンに注文しました。もう面白そうな本ばかりで、これからこんな面白い本がたくさん読めると思うと嬉しくて仕方がありません。じつは、わたしの本も「ムー」の書評に取り上げられたことがあります。1991年(平成4年)10月号に、『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』(国書刊行会)の書評が掲載されたのです。

「ムー」1991年(平成4年)10月号

書評は「葬儀は、天への帰省を祝う幸福の儀式だ!」として、「安楽死、尊厳死、脳死問題など、人間の死が社会的に大きな関心事となり、さまざまな議論がなされている。それは、現代人の死生観が根底から大きく揺らぎはじめたことの証左でもあろう。本書は、人間のこの死生観がいつの世にもその時代の文化の核をなしてきた、とする著者が『人はどこから来てどこへ行くのか』という太古以来の謎を追求し、きたるべき21世紀の”葬”のあり方を提言したもの。日本人の死に対するイメージは不幸であり、葬に対するイメージも暗く、悲しみに満ちている。著者はそこに”魂”の問題の欠落を見て、こう主張する。『死はけっして不幸な出来事ではない。それは光まばゆい天上界への故郷帰りであり、葬儀はその帰省を祝う幸福の儀式である』そして、月を霊界に見立て、月面聖塔の建立と月への送魂というロマンティックな具体案を提示して、大いなる”死のロマン主義”を訴えるのである」と書かれています。ブログ『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』で紹介したように、同書は多くのメディアで紹介され、書評もたくさん書かれましたが、いま読み返してみても、「ムー」の書評は簡潔でありながら格調高い名文です。もちろん、30年以上前の書評なので星野太朗氏が書かれたものではありませんが、昔から「ムー」の書評はレベルが高かったのだなと思った次第です。

神秘の香りに満ちたわが書斎

最後に、わたしは、これまで魔術や呪術をはじめとしたオカルティズム、心霊を研究するスピリチュアリズム、ニューエージ、超能力、超科学、超文明、UFO、UMAなどの膨大な本を読んできました。わたしの書斎には、そんな本が所狭しと並んでいます。わが書評サイトである「一条真也の読書館」には、「オカルト・陰謀」や「心霊・スピリチュアル」のコーナーに多くの本が取り上げられています。いつか、これらの書評を1冊の本にまとめてみたいと願っています。

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