No.2213 ホラー・ファンタジー 『ひとんち 澤村伊智短編集』 澤村伊智著(光文社文庫)

2023.02.17

『ひとんち 澤村伊智短編集』澤村伊智著(光文社文庫)を読みました。著者は、一条真也の読書館『ぼぎわんが、来る』『ずうのめ人形』『ししりばの家』『恐怖小説 キリカ』などで紹介した本を書いたホラー小説界の新鋭による短編集です。

著者は1979年大阪府生まれ。2015年「ぼぎわん」(刊行時『ぼぎわんが、来る』に改題)で第22回日本ホラー小説大賞を受賞。2019年「学校は死の匂い」で第72回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。2020年『ファミリーランド』で第19回センス・オブ・ジェンダー賞特別賞を受賞。ホラー・ミステリ・SFと何でもござれの当代一のストーリーテラーとなっています。

本書の帯

本書のカバー表紙には、カラフルな窓の不気味な民家が描かれ、帯には「他人の家とは何かが『ズレて』いる。」「あなたの家の慣わしは普通、ですか?」「『ぼきわんが、来る』の澤村伊智が贈る世にも奇妙な”日常”の恐怖小説集」と書かれています。

本書の帯の裏

帯の裏には、以下のように書かれています。
「席順にやって来る2つの悪夢が重なり合ったとき――。(「夢の行き先」)スーパーマーケットの販促ビデオに死体が映り込んでいた――。(「ありふれた映像」)同僚の宮本くんの手はいつもひび割れている――。(「宮本くんの手」)”不幸の手紙”のように、回って来る『何か』――。(「死神」)ほか全8編を収録」

カバー裏表紙には、以下のように書かれています。
「他人の家とは何か『ズレて』いる。――。友人の香織の家に遊びに行った『わたし』。近況報告するうち、各々の家に伝わる独自のルールの話になり……。(「ひとんち」)『私』は食玩コレクターの柳から、『シュマシラ』という聞いたことのないUMAをモチーフにしたロボットを見せられ……。(「シュマシラ」)ホラー小説の新鋭・澤村伊智による、日常のすぐそばに潜む恐怖を描いた全8編!」

ホラー小説といえば、一条真也の読書館『ほねがらみ』『異端の祝祭』『漆黒の慕情』『とらすの子』で紹介した小説を次々に発表した芦花公園が話題になっていますが、現在、日本のホラー小説界は何回目かのブームだとか。それも、2015年に澤村伊智が「ぼぎわん」で第22回日本ホラー小説大賞を受賞したことが、今回のブームの引金になったそうです。

本書には、「ひとんち」「夢の行き先」「闇の花園」「ありふれた映像」「宮本くんの手」「シュマシラ」「死神」「じぶんち」の8編が収められています。詳しい内容を書くのはネタバレになるので控えますが、それも「すごく怖い」話ではありません。また、『ぼぎわんが、来る』に始まる比嘉姉妹シリーズのように超弩級の非日常的な怪異が描かれているわけでもありません。

本書は、日常の中に潜む不気味さのようなものを上手に描いています。いわば、「気味の悪いゾッとする話」といったところでしょうか。オチは明快ではなく、最後までモヤモヤして、スッキリしません。それでも、湿った不気味さの余韻は楽しめました。「この感じ、何かに似ているな…」と思いましたが、著者が少年時代から愛し続けているという岡本綺堂の怪談の読後感に似ていることに気づきました。つまり、本書は日本人の心の琴線に触れる名作短編集であると思います。

Archives