No.2248 幸福・ハートフル 『コンパッション!』 佐久間庸和著

2023.06.18

6月18日は「父の日」ですね。
みなさん、お父さんに感謝の想いを伝えましょう!
113冊目一条本となる『コンパッション!』(オリーブの木)の見本がついに出ました。「老い・病・死・死別を支える『思いやり』」というサブタイトルがついています。著者名ですが、「一条真也」ではなく、株式会社サンレー代表取締役社長の「佐久間庸和」となっています。

本書の帯

本書の帯は、「『思いやり』の実践」と大書され、「『サービス』を『ケア』に転換させる究極のコンセプト。経営者・ビジネスマン・公務員すべてに必読の書!」「東京大学名誉教授 島薗進推薦」と書かれています。

本書の帯の裏

帯の裏には、「東京大学名誉教授 島薗進」「互助会はもともとコンパッションを大きなモチベーションとしていた。厳しい社会状況のなかで、それを形にしていくのは難しい。だが、あらためて初心に返り、『コンパッション都市』を求める企業のあり方として展開する可能性がある。そこを目指すことで、ますますせちがらくなる現代社会に新たな光を投じてほしいものだ」と書かれています。

本書の「もくじ」は以下の通りです。
まえがき

プロローグ ある事件が教えてくれた

      「思いやりの上書き」 
第1章 コンパッションとは何か?

コンパッションとの出合い

コラム●

コンパッションが求められるわけ(島薗進)

コラム●『コンパッション都市』

「コンパッション」は互助に通じる

コンパッショナリー・カンパニーへ

コミュニティの存在

セルフ・コンパッションとは

エンドオブライフケアの問題

グリーフケアは誰が支えるのか

ブルシット・ジョブの存在

ケアリング労働とは何か

エッセンシャルワーカーの役割

喪失は、多様に存在する

第2章 コンパッションの思想

二大テーマの象徴

宗教に共通するコンパッション

仏教における「慈悲」

コラム●「慈経」(自由訳 全文)

仏教における「利他」

「他力本願」とは何か

「利他」から「互助」へ

儒教が求めた「仁」の心

「仁術」と「仁政」

キリスト教における「隣人愛」

神道における「あわれ」

二宮尊徳① 江戸時代の「コンパッション都市」づくり

二宮尊徳② 炭治郎と金次郎

二宮尊徳③ 代表的日本人が師と仰ぐ

二宮尊徳④ 世界に誇りうる大思想家

二宮尊徳⑤ 時代の先を行く「未来人」

二宮尊徳⑥ 心学から天道へ

グリーフケアの必要性

グリーフケアの拠点として

死生観のアップデート

ハート化社会を目指して

本当の情報とは何か

サービスからケアへ

「感謝」と書かれた色紙

こころの贈り物

「ケア」と「相互扶助」

二つの世界をつなぐもの

第3章 コンパッションの実践

「互助共生社会」の実現を目指して

「希望のまちプロジェクト」

「ごちゃまぜの街」シェア金沢

コンパッション都市づくりの具体例(1)

コンパッション都市づくりの具体例(2)

コンパッション読書クラブ

医療制度と思いやり

孤立を防ぐ施策

孤独死を防ぐ「隣人祭り」

コンパッションの本質

エピローグ 大いなるハートフル・サイクルへ

      PDCAからCSHW

あとがき 感謝の気持ちを込めて

「毎日新聞」2022年10月30日朝刊

わたしは、冠婚葬祭互助会を経営しています。織田信長の「天下布武」にあやかって「天下布礼」を掲げています。「礼」とは「人間尊重」のことであり、冠婚葬祭を通じて人間尊重の思想を世の中に広めたいと考えています。その中で、さまざまな言葉や考えに出会い、また自分自身もコンセプトといえるような言葉や考えを発信してきました。「ハートフル」をはじめ、その中のいくつかは人口に膾炙するものもありますが、まだまだ未熟という思いで、日々研鑽しております。

「読売新聞」2022年12月6日朝刊

その中で出合ったのが「コンパッション」という言葉。教えていただいたのは、公私にわたってご指導をいただいている東京大学名誉教授の島薗進先生です。詳細は本文にゆずるとして、わたしは「コンパッション」という言葉を知ったとき、「これだ!」と思わず叫んでしまうほどの衝撃を受けました。直訳すれば「思いやり」ということになるでしょうが、「コンパッション」という言葉が内包している大きさは「思いやり」を超えるものでした。キリスト教の「隣人愛」、儒教の「仁」、仏教の「慈悲」など、人類がこれまで心の支えにしてきた思想にも通じます。

「西日本新聞」2023年2月14日朝刊

わたしは当初、コンパッションを「ウェルビーイング」(持続的幸福)を超えるものと位置づけ、「ウェルビーイング」を踏まえて、『ウェルビーイングからコンパッションへ』という本を書こうと思いました。ところが、深く学べば学ぶほど、「コンパッション」と「ウェルビーイング」は陰と陽というか、お互いが補完し合う関係であることに気がつきました。そして、その両方がなければ、社会は良くならないことにも気づきました。結果、わたしは「ウェルビーイング」と「コンパッション」についての2冊の双子本を書こうと決心しました。その1冊が本書『コンパッション!』です。わたしが「コンパッション」という考えに邂逅したときの驚きと、「ウェルビーイング」との関係がよくご理解いただけると思います。ぜひ、『ウェルビーイング?』と併せてお読みいただけると幸いです。

コンパッション!』『ウェルビーイング?』の双子本

コラム「コンパッションが求められるわけ」では、東京大学名誉教授の島薗進先生が寄稿して下さいました。
島薗先生は、「現代人と現代社会に不足していて、切実に求められているものに『コンパッション』がある。コンパッションは仏教の『慈悲』の訳語として用いられるし、『パッション』はキリストの『受難』だから、キリスト教の『愛』とコンパッションが関連づけられるのも不思議ではない。キリストが受難によって人々を救ったように、他者の苦難に寄り添い、支えようとするような心の姿勢を指している。この言葉は『ケア』という言葉とも関係が深い。現代社会は人が孤立しやすく、居場所がなくなるように感じることが生じやすい。ケアが枯渇しがちな社会と言える。そのようなケアの不足を超えようとするところにコンパッションが求められる。『コンパッション都市』を目指そうとする運動があるが、それは無関心と『ケアしないこと』からの脱皮を目指すものだ」と述べています。

また、島薗先生は以下のように述べておられます。
「コンパッションは『利他』とも関わりが深い。現代社会は個々人が自利を追求するのに汲々とせざるをえないようなところがある。まず自分を、そして家族や仲間や従業員を守るのにせいいっぱい。それなら許せるが、そこまで富を蓄積したり、力を行使しなくてもと感じることも多い。そこで忘れられているのは、他者とともに生きていることの大切さだ。これが現代社会で『利他』が求められる理由で、コンパッションが求められる理由と重なっている。仏教徒のなかには、慈悲は仏や菩薩こそが行うもので、ふつうの人間はなかなか実践できない。無理に慈悲を求めることで偽善に陥ったり、自己を傷つけたりすることもある。そのことにもっと注意すべきだという考え方もある。そこで、現代のコンパッションにおいては、コンパッションを自己にも向ける、つまりセルフコンパッションを重視する動向もある。コンパッションを掲げることで、新たに自己を見直すことも大事な一面だ」

「コンパッション」について講義する島薗進先生

そして、島薗先生は「互助会はもともとコンパッションを大きなモチベーションとしていた。厳しい社会状況のなかで、それを形にしてくのは難しい。だが、あらためて初心に返り、『コンパッション都市』を求める企業のあり方として展開する可能性がある。そこを目指すことで、ますますせちがらくなる現代社会に新たな光を投じてほしいものだ」と述べられるのでした。この「コンパッションが求められるわけ」は短い文章ながら見事な「コンパッション」の説明になっており感服いたしました。御寄稿下さった島薗先生には心より感謝申し上げます。

東京大学名誉教授の島薗進先生と

あとがき「感謝の気持ちを込めて」では、「心ゆたかになるためには、何が必要なのか?」と読者に問いかけた後、「わたしは読書と映画が重要な役割を果たすと思っています。わが社がサポートさせていただいている『月あかりの会』や『うさぎの会』では、グリーフケアや死生観をテーマをした読書会を開催しています。また、わが社が各地で展開するセレモニーホール(コミュニティホール)では、『老い』や『死』をテーマにした映画を友引の日に上映する『友引映画館』を定期開催しています」と書きました。

読書と映画で死を乗り越える!

わたし自身、読書と映画鑑賞をこよなく愛しています。まず読書ですが、わたしは「本ほど、すごいものはない」と思っています。自分でも本を書くたびに思い知るのは、本というメディアが人間の「こころ」に与える影響の大きさです。本を読んで死ぬのを思いとどまる人もいれば、夢を描き、志を抱く人もいます。読書とは、何よりも読む者の精神を豊かにする「こころの王国」への入り口です。いつもは仕事関係の本を読みますが、休みの日などは大好きな幻想文学などを耽読したりします。また、時間があれば努めて映画を観ることにしています。映画を観れば別の人生を生きることができますし、世界中のどんな場所にだって、いや宇宙にだって行くことができます。さらには、古代から未来まで、どんな時代も体験することができるのです。気分転換にはもってこいであり、映画館から出たときは最高にリフレッシュできます。

心ゆたかな読書』と『心ゆたかな映画

コロナ禍にかかわらず、仕事や人生において多くのストレスが付きものです。「負の感情」にとらわれないためには心のケアが必要ですが、わたしの場合は本と映画が最高の友です。読んだ本や観た映画は感想をブログに書いてアップした後、アーカイブとして「一条真也の読書館」「一条真也の映画館」というレビューサイトに転載します。本当に、本から、そして映画から、わたしは多くのことを学びました。「幸せ」や「思いやり」を学びました。これまで数え切れないほどの小説を読み、映画を観ましたが、そのメッセージは結局、「生きろ」と「人に優しくあれ」の2つに集約される気がします。間違いなく、本と映画はわたしを「心ゆたか」にしてくれました。心ゆたかな社会=ハートフル・ソサエティの姿を垣間見せてくれました。

心ゆたかな社会』(現代書林)

今回、「ウェルビーイング」と「コンパッション」の二大コンセプトについて筆をとるチャンスを得て、深く考えました。人にとっての「幸せ」や「思いやり」とは何か。喪失から生まれる「悲しみ」にどう向き合えばいいのか。その答えにたどり着くための多くの示唆を与えてくるものは、やはり本であり、映画でした。「生きろ」と「人に優しくあれ」の二大メッセージは、そのまま「ウェルビーイング」と「コンパッション」に通じることを知りました。

ウェルビーイング?』と『コンパッション!』を持って

最後に、「コンパッション」という考え方を教えて下さった島薗進先生、『ウェルビーイング?』と『コンパッション!』の2冊の編集を手掛けて下さった内海準二氏、「天下布礼」を掲げて共にハートフル・ソサエティ実現に向けて歩んでくれているサンレーグループの同志のみなさん、最後にわたしを本に囲まれた環境で育ててくれた両親に感謝いたします。なお、『ウェルビーイング?』と『コンパッション!』の天下布礼ツインブックスは6月20日発売です。どうぞ、よろしくお願いいたします!

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