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2025.05.29
『怒髪天を衝く!』前田日明著(青林堂)を読みました。著者は日本を代表する格闘技プロモーターであり、「新格闘王」と呼ばれた元プロレスラーですが、読書家・日本刀収集家・刀剣鑑定家・骨董愛好家としても知られ、その幅広い知識と教養は格闘技界を超えて評価されています。一条真也の読書館『日本人はもっと幸せになっていいはずだ』で紹介した本は著者の大いなる憂国の書でしたが、本書『怒髪天を衝く!』はさまざまな視点からの各論によって日本の未来を考察しています。
本書の帯
本書のカバー表紙には渋い表情をした著者の写真が使われ、「闘うウィルス学者 宮沢孝幸」「闘う元外交官 山上慎吾」「闘う元政治家 安藤裕」「闘う歴史作家 茂木誠」「闘う農学博士 鈴木宣弘」「闘う通訳捜査官 坂東忠信」「がっぷり四つで大激論!!」「今度の敵は日本の巨悪!!」「ワクチン問題、歴史問題、外交問題、税金問題、食糧問題に前田日明が鋭く切り込む!!」と書かれています。
本書の帯の裏
帯の裏には、「坂東忠信 中国人とスパイ活動を監視せよ!」「茂木誠 日本と韓国の2000年に渡る負の歴史」「山上信吾 外務省の劣化による国益の棄損」「宮沢孝幸 コロナワクチンの危険な欺瞞と真実」「鈴木宣弘 世界中の危ない食材を日本人は食べさせられている。」「安藤裕 政府の赤字は国民の黒字、今こそ積極財政出動を!」と書かれています。
本書の「目次」は、以下の構成になっています。
「はじめに」
第1ラウンド
日本の治安はどうなっているのか?
第2ラウンド
日本の外交はどうなっているのか?
第3ラウンド
日本の薬学界はどうなっているのか?
第4ラウンド
日本の食品はどうなっているのか?
第5ラウンド
日本の歴史はどうなっているのか?
第6ラウンド
日本の税と政治家は
どうなっているのか?
「おわりに」
「はじめに」では、著者は「この国の為政者たちは国民の生活を良くしようとは思わないのだろうか? 日本国民の生活の向上や幸福な姿を見たくないのだろうか? 彼ら為政者の姿を見ていると私利私欲、既得権益の確保だけを考えているようにしか思えない。官僚たちは省益のため、そして、退官後の天下り先の確保だけを考え、政治家たちは利権が第一で、そのためであれば、国民の生活が悪くなろうが、安全保障が脅かされようが、おかまいなし。そんなふうにしか見えないのが今の為政者たちだ」と述べます。
「しかし、だからこそ、不思議なのだ」という著者は、「官僚にしろ、政治家にしろ、基本的にはこの国で生まれ育った日本人のはずだろう。彼らにだって故郷があり、親がいて、友達がいる。それはすべて日本という国土を起点としているはずだ。であるのに、なぜ、起点であり、原点である、日本という国をないがしろにするのだろうか? 自分はそこが不思議でたまらない。彼らは本当に日本がどうなってもいいと思っているのだろうか? 本書はその疑問を解くためにつくったものだ」と述べるのでした。
第1ラウンド「日本の治安はどうなっているのか?」では、元警視庁判事の坂東忠信氏が登場。「国会の中にスネに傷を持つ人間がいる」で、以下の対話が展開します。
前田 坂東さん、ここ数年、日本の中に浸透していた外国勢力、特に中国の動きが活発化してませんか?
坂東 してますね。水源地や自衛隊近辺の土地を買い漁るだけでなく、京都、大阪、東京の空き家をかなりの数、手に入れてます。それはすでに報道されている以上ですよ。
前田 宗教法人も乗っ取ってるでしょ。ところが、それを取り締まる法律が日本にない。つくろうとすると一部の国会議員が大反対して法律をつくらせない。一体、どうなってるんですか、この国は? 自分、思うんですけど、国会議員の中に「背乗り」(工作員や犯罪者などが正体を隠すために実在する他人の身分・戸籍を乗っ取り偽装する行為)している人間が紛れ込んでるんじゃないですか?
坂東 「背乗り」は現実に存在しています。震災なんかで死んだ人の戸籍を乗っ取った外国人の話も聞いてます。彼らは日本人になりすまして土地を売買したり、会社をつくったりしてるでしょうし、選挙で投票したり、立候補したりしてるかもしれませんね。
前田 やっぱりね。そもそも日本の法律がおかしいんですよ。外国籍なのが発覚したのに国会議員のままでいられるとか、ほかの国ではありえないですよ。
「警察の萎縮」では、以下の対話が展開されます。
前田 自分が聞いたことがあるのは、「共産党と人民解放軍でよく勉強されてる本に『資治通鑑』と『厚黒学』というのがある」ということです。前者は縦横家による交渉や歴史の推移の精細、後者は清朝末期に非対称戦を主眼に置いた戦略書で、戦闘じゃない普段の生活の中で、長い時間を使って国を弱体化させる方法が書いてあって、「一番弱りきったところにちょんと小突いただけでグシャグシャと自滅するような戦い方をしろ」と。こういうのを専門で研究している部署があるんですよ、人民解放軍とか共産党の中に。
坂東 いわゆる「超限戦」ですね。
前田 その「超限戦」のもとになった本ですね。
坂東 だから、それぐらい「普段の生活から戦争なんだ」というのがあの国の考え方ですからね。一方、日本人は普段と有事を分けています。戦争が終わったらもう友達だという意識ですね。そういう意識の違いが日本の現状に出ていると思いますね。
第2ラウンド「日本の外交はどうなっているのか?」では、前駐オーストラリア特命全権大使の山上信吾氏が登場。「歴史問題」では、以下の対話が展開されます。
山上 歴史問題は世界の標準を理解しているかいないかで反論の仕方が全然違うんですよ。あのときの南京というのは日中戦争の最前線だったわけです。中華民国の首都ですから、あれは首都攻防戦です。なので、南京を取り囲んだ日本軍は何度も「降伏しろ」と呼びかけています。ところが、中国軍の総大将の唐生智が何をしたのかというと、降伏せずに部下を置き去りにして逃げたんです。徹底抗戦を叫んでいながら自分だけ敵前逃亡ですよ。
前田 えーっ、最悪ですよ、それ! 死刑でも足りないでしょ。
山上 前田さんのおっしゃるとおりです。たとえ戦争であっても絶対にやっちゃいけないことなんです。だって、残された兵士は降伏できないわけです。降伏できないから兵士も逃げるしかない。そしたら逃げようとする兵士を「逃げるんじゃない」と同じ中国人の督戦隊が背後から撃つなんてことも起きるわけで、戦場は大混乱だったことは間違いない。
南京大虐殺について、著者は「自分が小学校で習ったのは南京大虐殺で4万人が死んだって話でしたよ」と言います。すると、山上氏は「向こうは調子に乗ってドンドン増やしているんですよ。ただ、気をつけなければいけないのは、日本人がこの話を始めるとすぐに数の理論に入っちゃって『いや、30万はありえないよ』と。『4万だったらあったかもしれない』とかね。でも、そこじゃないんですよ、問題の本質は。要するに虐殺といわれているような『無辜の市民に向けて機関銃を乱射して殺戮しまくるようなことはやってない』ということなんです。だって、南京という首都を死ぬまで守るのかと思ったら逃げ出す兵隊がいっぱいいる。それだけじゃなくて軍服を脱いで安全地帯に逃げ込んで、そこで悪さする奴がいる。中には民間人の服を着て日本兵を狙ったりとかしてくる。いわゆる『便衣兵』の問題ですね。こういう状況で殺すのは虐殺なんですか?と」と述べています。
「アメリカの属国問題」では、以下の対話が展開します。
前田 今の日本の外交の問題点の原点って吉田茂にあると思うんですよ。吉田茂がGHQの言いなりになったというのもあったでしょ?
山上 吉田茂の話でいうと、やっぱり戦後長らく続いてきた日本のこの状況の基礎をつくったのは間違いないですよ。というのも1952年に占領が終わり独立を回復したときにね、「こんな憲法なんていらない」と、「アメリカから押し付けられたものをなんで崇め続けないといけないのか、新しいものをつくりましょう」とか、「軍隊も当然日本として復活させます」と、やればよかったんですよ。
前田 しかし、吉田茂は経済優先で国防はアメリカ任せにしちゃったでしょ?
山上 まさにそこです。それが今の日本の源流で、吉田茂の時代に基礎がつくられたということは間違いない。
著者が「A級戦犯を保身栄華のためにいっぱい仕立て上げたでしょ、吉田茂は。正真正銘の売国奴ですね」と言えば、山上氏は「まあ、同胞を差し出したわけですから。戦中は陸軍が横暴を極めた、あるいは我が物顔で声を張り上げていた軍人もいたでしょう。でもね、戦争で負けたことによって陸軍、海軍すべてを悪者にして自分たちは被害者みたいな顔をしているというところが、ある種戦後の日本の起源であるというのがね、凄くさみしいですよね。『敗戦利得者』という呼称は免れられないでしょう」と述べます。すかさず「無責任ですよ」と言い返す著者に対して、山上氏は「そもそも対米開戦のときは多くの人間が快哉を叫んだことは史実が伝えるところです。だからこそ、敗戦の苦痛は国民全体として耐えるべきでした。ところが、『悪いのは軍部で自分たちじゃない』ということにしてしまった。僕は日本社会で一番嫌なのはそこです。責任の追及が一方的で甘いし、ポピュリズムに流れがちなのです。それが根底にあると何か苦労をしたときに裏切り者が出るでしょ。シベリア抑留のときもそうでしょ。ソ連に寝返った人間がいっぱいいた」と述べるのでした。
さらには、「日本の政治家なんかアメリカから信託統治を任されている管理人ですよ、あいつらは」と憤る著者に対して、山上氏は「韓国から仲のいい外交官が東大に中間研修にきて帰国するときに送別会で言っていました。『日本は、役人は大したことはない。政治家はもっとひどい。だけど、普通の人が凄い』と。タクシーの運転手とかホテルの受付の人がほかの国では考えられないようなやる気と熱意をもって自分の仕事をする。少しでもいい仕事をしようとやっている。これが日本を強くしていると言ってました。だから、上にいる人間がひどいんですよ」と述べます。この山上氏の「日本は普通の人が凄い」という言葉には非常に感銘を受けました。わが社がもちろん民間企業ですが、ホテルや冠婚葬祭のサービスにおいて、日本人のお客様はもとより海外の方からも評価していただけるような会社でありたいと願います。
第3ラウンド「日本の薬学界はどうなっているのか?」では、日本におけるウィルス研究の第一人者で(一社)京都生命科学研究所代表理事である宮沢孝幸氏が登場。「まずはウィルス学講座」では、新型コロナウイルスについて、以下のような対話が展開されます。
宮沢 新型コロナウイルスは人工的に改変したウイルスである可能性が高いです。
前田 やっぱりな。人工的なものだと思ってましたよ。
宮沢 それはアメリカの議会で議論されています。アメリカ人が中国に頼んで武漢の研究所でつくらせたことは間違いないと思います。
前田 でも、それを言ってもほとんどの日本人が信用しないですね。
宮沢 信用しない気持ちはわかりますよ。僕だって最初は「そんなことないだろう」って思っていたぐらいです。コロナって、RNAウイルスだから変異しやすいんだけど、変異がしやすい中では変異がしにくいもので、インフルエンザよりもゆっくり変異します。それなのにアルファ、ベータ、ガンマ、デルタって短期間に次々に変異したから僕たちは凄くびっくりしてたんですね。でも、このときまではまだ「そういうこともあるのかな」って思っていたんです。
「ワクチンを何度も打つとコロナで死ぬようになる!?」では、宮沢氏は「要はどうやって僕たちが治っているかっていうと抗体で治っているというよりも、むしろ感染細胞を免疫が殺しているんですね。ウイルスをたくさん出している細胞を抗体やNK細胞、細胞傷害性T細胞なんかで殺すんだけど、その作用はワクチンを打ち過ぎると弱くなってしまうんですね。新型コロナに感染しても熱やその他の症状が出にくくなるんですね」と述べます。著者が「熱が出ないけど、コロナにはかかっている。ということは、身体の中で感染は密かに広がっているってことですか?」と質問すると、宮沢氏は「そうです、そうです。感染細胞が除去できないので、知らんうちにウイルスはメッチャ増えてますね。肺炎の症状が出ていないのに肺でドンドン、ウイルスが増えてスパイクタンパクが大量に血液に流れて、血栓ができて脳梗塞になったり、心筋炎になったりするということです。そういうことがいま起きてるんじゃないんですか?っていうことですね」と述べるのでした。
第5ラウンド「日本の歴史はどうなっているのか?」では、ノンフィクション作家、駿河台予備校の世界史講師、歴史系YouTuberの茂木誠氏が登場。「宗教と歴史と日本」では、著者が「日本というのは感情の文化というのを尊ぶ国だと思うんですよ。つい最近、長らく行方不明になっていた細川幽斎所持の愛刀だったという刀を手に入れたんですよ。で、いろいろ調べたら丹波地方の城で敵に包囲されて、これでやられるなっていうときに、ある法師に、「古今伝授(『古今和歌集』の注釈)」を伝える書状と品物一式、それと一番大事にしている奥義みたいなものを歌に託したんです。どういう歌かというと、『いにしへもいまも変わらぬ世の中に心の種をのこす言の葉』というもので、なんかね、そこに全部あると思うんですよ」と卓見を述べると、茂木氏は「素晴らしいですね。現代人の理性崇拝という馬鹿げた思想に、2000年の歴史を持つ国が屈することはない、してはいけないと私は思っています」と言います。すると、著者は「だから、聖徳太子が『和をもって貴しとなす』と言うし、日本の国家を歌うと『さざれ石の巌となりて』になるんですよ。さざれ石がどんな石かというと鹿島神宮にもあるんですけど、砂岩、礫岩、火成岩がガチっと固まって1個の岩になってるんですね。だから、人の出自だとかいろいろあるんだけど、ちゃんと団結しましょう、和しましょうというのが日本の国の根幹なんです」と述べるのでした。著者の「和」の国家論はわたしの考えとも同じであり、深く共感しました。
第6ラウンド「日本の税と政治家はどうなっているのか?」では、元衆議院議員で内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官を務めた安藤裕氏が登場。「国民を救う気のない政府」では、以下の対話が展開されています。
前田 自分は『アウトサイダー』という不良少年の更生のためのアマチュアの格闘技大会をやってたんですよ。その大会に出てる子たちとメシを食って話をすると、「学資保険を返してます」とか、「アルバイトしてやっと食ってます」とかね、そんな話ばっかりなんですよ。自分らの感覚とすれば、「若いんだからもっとアルバイトすればいいでしょ」って思うんですね。
安藤 いや、それはいまできません。
前田 そう。できないんですね。労働基準法が変わって、朝晩とか働けなくなって、「どこも雇ってくれない」っていうんです。でも、これっておかしいんですよ。自分らの頃だって、大した生活なんかしてなかったですよ。だけど、一点豪華主義で、車にバカみたいに金をかけて、そのために馬車馬のように働いてっていうのができたんですよ。そんな若い奴らがいっぱいいて、それはそれで楽しかったですよ。ところが今の子たちはそんなこともできない。ただただ、貧乏なだけ。彼らには青春がないんですよ、青春が!
「ザイム真理教は本当にあった」では、著者が「消費税だけでなく、相続税もおかしくないですか? だって、相続税がない国はいっぱいありますよ」と言えば、安藤氏は「おかしいと思います。相続って自分のつくってきた財産を子孫に渡すわけですよね? そこになぜ税金がかかるんですか? だって、生きてる間に所得税を払っているんですよ、ずっと。つまり、相続で渡す財産は税金払ったあとの純利益みたいなものです。なのになんでまた税金取るんですか? これは完全に二重取りですから、相続税は絶対に廃止するべきだと思いますね。だけど、財務省は相続税もまた増税しようとしてますから」と述べるのでした。この発言は、現在、昨年亡くなった父の相続にまさに取り組んでいるわたしにとって非常に考えさせられるものでしたが、これ以上書くとザイム真理教から圧力をかけられるといけないので、やめておきます。
「おわりに」では、著者は「対談を終えて痛感したことは日本の政権、つまり、与党は日本を治験国家にしようとしているということだ。例えば、鈴木宣弘教授の『日本政府は、日本では禁止の収穫後の防カビ剤を食品添加物というカテゴリーにして認めたんです』という言葉が象徴的だろう。防カビ剤は毒物だ。それを出荷直前にかけている食品が安全なわけがない。ところが、当時の日本政府はアメリカからのゴリ押しに負けて、『これは防カビ剤ではありません。食品添加物です』と言ってOKしてしまったのだ。アメリカ人の勝ち誇った笑い顔と、日本人の卑屈に頭を下げている場面が目に見えるようだ。これが60年前の話で、それがいまだに続いているという。日本人にがんやアトピー性疾患などが増加するのは当然の話だろう。アメリカ産の毒入り農産物を生まれたときから食べさせられていれば病気にならないほうがおかしい」と述べるのでした。まったく同感です。
本書を読んだわたしは、著者・前田日明氏のとどまるところを知らない知的好奇心、そしてどんな分野の第一人者とも対等に渡り合える知識量と教養力に感服しました。「総合格闘技」という言葉は著者の発明だということは有名ですが、本書はまさに「総合教養」あるいは「総合知的格闘技」の書であると言えるでしょう。6月5日、稀代の対談の名手である著者とお会いできるのが楽しみです!