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No.2493 哲学・思想・科学 『「かたち」の文化論』 産経新聞出版
2026.08.28
その日の朝、『「かたち」の文化論』(産経新聞出版)の見本を手にしました。129冊目の一条本で、「工芸と儀礼から考える」というサブタイトルがついています。陶芸界で最年少の人間国宝となられた十四代今泉今右衛門氏との対談本です。「日本文化」の本質に迫った一冊です!
本書の帯
帯には2人の写真が使われ、今右衛門氏には「伝統的な技術を継承しつつ、新たな表現方法を追求すること」、わたしには「文化の防人として、冠婚葬祭を通して儀式をアップデートしていくこと」という吹き出しがついています。また、「奇跡の対談が実現!」「日本文化の本質が浮き彫りになる」と書かれています。
本書の帯の裏
帯の裏には、内容構成と「十四代 今泉今右衛門」の紹介文があります。その内容は「江戸時代から続く『鍋島焼』の伝統を受け継ぐ。伝統と高い品格を持ち、赤絵の調合・技術を一子相伝の秘宝として伝えられている。現在は十四代。五一歳で人間国宝となる」です。
アマゾンの内容紹介には、「陶芸家として最年少で人間国宝となった十四代今泉今右衛門と、冠婚葬祭文化振興財団の理事長として儀礼文化を牽引し、作家としても活躍する一条真也による奇跡の対談が実現! 日本文化の本質が浮き彫りになる」「初めての著書がついに刊行! 人間国宝・十四代今泉今右衛門がその創作の秘密を語る」と書かれています。
本書より
本書より
本書より
本書より
本書より
まず、本書の口絵には「十四代 今泉今右衛門の世界」として、今右衛門氏の素晴らしい作品の数々がカラーで紹介されています。最年少人間国宝の「美」へのこだわりを堪能することができます。

本書の「目次」は、以下の通りです。
第1章 「技」を極める
■人間国宝という重み
■不安な時代ゆえに生まれた?
■父の教えと伝承
■永遠に変わらないもの
第2章 工芸と儀礼
■器が教えてくれる
■柳宗悦の思想
■師匠からの教え
■器と食文化
■光の変化を味わう
■月の聖塔
■セレモニーホールは器?
■「礼器」とは何か
■「礼人」とは何か
■儀式とは「文化の核」である
■「渋い」は
日本人のオリジナルの価値観
第3章 日本文化を守る
■作る人間と広める人間
■工作好きの少年時代
■作陶の作法
■有田の分業制
■冠婚葬祭は「日本文化の集大成」
■無形文化財は「心」を伝える
■五教科だけではわからない
■骨壺という器
■相互扶助で発展してきた
■自分が中心ではない
第4章 継承と伝統
■冠婚葬祭の志
■父親の仕事、自分の想い
■後継者の問題
■文化産業として見直す
■「口伝」の意味すること
第5章 未来への想い
■サラリーマンを経験
■グリーフケアという取り組み
■「美」はどう感じるのか
■好きと嫌い
■グランドカルチャー
■二つの文化
■季節を飾る
■少子化という問題
■使う側の美意識
■目線が変化している
■仏壇も器
■「生きろ」「やさしくあれ」
を伝えたい
■米不足が一番不安を感じる
■民藝に込めた想い
■「民禮」という言葉
対談を終えて 十四代 今泉今右衛門
対談を終えて 一条真也
十四代 今泉今右衛門氏と
「あとがきに代えて~対談を終えて」で、十四代 今泉今右衛門氏は、「じつは一条真也さんとは同じ九州ということもあって、お会いする機会が幾度かありました。今回の対談で、冠婚葬祭という人間の最も大切な節目に常に対峙されてきた一条さんの、一つ一つのお言葉の背景にある、人としての哲学と、私のたずさわる日本の伝統工芸がいかに交わることができるのかを楽しみにしておりました。多様なテーマに及んだ対談となりましたが、『こころとかたち』、『儀式と型』など、伝統工芸と重なる考え方も見い出すことができ、『文化の防人』、『礼器』、『グランドカルチャーの対』など新しく知ることも多く、同時に、それをいかに継承していくのかの問いなど共通することも多いと感じました。『継承』について、父・十三代今右衛門は『自分が継承するよりも、次に継承していくことがいかに難しいことか』と晩年語っていました。『文化の継承』はこれからの私の大きなテーマです。一条真也さんとの貴重な時間に感謝するとともに、今回、機会を与えていただいた方々に感謝しつつあとがきとさせていただきます」と書かれています。
対談のようす
本書『「かたち」の文化論』に収められている十四代今泉今右衛門氏との対談は、2026年3月23日と24日の2日間にわたって行われました。今泉今右衛門といえば、江戸時代から伝統に受け継がれている肥前国(現・佐賀県)の陶芸家の名跡です。しかも十四代は、陶芸界において史上最年少である51歳で人間国宝となられました。そんな凄い方と対談させていただくにあたり、わたしは冠婚葬祭の世界に身を置く者としてお話させていただきました。工芸文化と儀礼文化という二つの光線を当てることによって、「日本文化」の本質のようなものが浮き彫りになったように思います。
今右衛門氏を囲む「月見会」のメンバー
わたしが住む北九州市は「文化の砂漠」などと呼ばれていますが、その砂漠にひっそりと咲く花の一群があります。染織家の築城則子氏がご自宅で開かれる「月見会」への参加者(ヤクザでへんてこで粋な文化人連合=クザ連)の方々です。築城健義氏(築城内科医院院長)、岡野正敏氏(岡野バルブ製造顧問)、森川満氏(森川産業代表)、大迫益男氏(ゼンリンプリンテックス会長)、そして小生が名を連ねております。今右衛門氏が小倉に来られたとき、そのメンバーで会食し、その後はカラオケに行くというのがお決まりのパターン。ちなみに今右衛門氏と小生はいつもサザンオールスターズのカラオケ・バトルを繰り広げます。そんな親しみのある今右衛門氏との対談では、わたしの関心の赴くまま、さまざまな質問をさせていただきました。その中には人間国宝についての素朴な質問もありましたが、今右衛門氏は笑顔で答えて下さいました。工芸について、また日本文化について語るときの今右衛門氏の表情は真剣そのもので、思わずわたしは背筋を伸ばして拝聴しました。
父の銅像を挟んで今右衛門氏と
わたしは2024年9月20日に逝去した父から陶芸コレクションを相続しました。しかし正直言って、それほど陶芸には詳しくなく、関心も深くはありませんでした。わたしは、今回の対談を良い機会ととらえ、陶芸を含む工芸について猛勉強いたしました。その中で、対談の中でも紹介した宗教哲学者・柳宗悦が唱えた「民藝」の思想に深く共感したのです。そこから「民禮」「礼器」「礼人」といった新しいキーワードも生まれました。これらの言葉たちをザイルとして、儀礼文化という難所をクライミングしていきたいです。
自作の花瓶を背に語る今右衛門氏
わたしの背後には父の遺影が・・・
対談は、小倉にある松柏園ホテルの貴賓室で行われました。今右衛門氏の背後には、ご自身の作である「色絵雪花薄墨はじき稲穂四季花文花瓶」が置かれており、その美しさと存在感によって空間を豊かにしてくれました。一方、わたしの背後には、父の遺影がありました。陶芸好きだった父は、「人間国宝と自分の息子が語り合っている」様子を見て喜んでくれたのではないでしょうか。お忙しい中、小倉まで足をお運びいただき、有意義かつ楽しい時間を過ごさせていただいた十四代今泉今右衛門氏に、この場を借りて感謝申し上げます。『「かたち」の文化論』は9月8日に発売されます。ぜひ、工芸や儀礼に関心のある方、日本文化の本質を追求したいという方にお読みいただきたいです。