No.2316 グリーフケア 『ロマンティック・デス』 佐久間庸和著(オリーブの木)

2024.04.19

次回作の『ロマンティック・デス』(オリーブの木)の見本が届きました。「死をおそれない」というサブタイトルがついています。116冊目の一条本となりますが、著者名は「一条真也」ではなく、株式会社サンレー代表取締役社長の「佐久間庸和」となっています。

本書の帯

本書の帯には、作家・福聚寺住職の玄侑宗久先生の「日本人の古層に宿った物語が、いま佐久間さんによって新たに甦った。これは現代人の安らかな死を支える、ゆるぎない物語である。」と書かれています。ありがたいことです。

本書の帯の裏

帯の裏には「佐久間庸和の本」として、『ウェルビーイング?』が「個人・企業・社会が求める『幸せ』とは?」「40年前から取り組んできた企業が明かす、持続的幸福の真髄!」と紹介され、『コンパッション!』が「老い・病・死・死別を支える『思いやり』」「『サービス』から『ケア』へ。新時代を拓く究極のコンセプト!」と紹介されています。

本書の「目次」は、以下の通りです。
「まえがき」
序論 「死のロマン主義に向けて」
    ~本書のコンセプトと提案
死に関する美しい話
死を形容詞で飾ってみる
葬儀に求められる新たな要素
墓のイメージを変える
新しき「葬」
死生観が変わる
「葬」をデザインする
自死を美化しているわけではない
「月」との出会い
ムーン・ハートピアとは何か
「葬」を変える!
第一部 死
臨死体験と死の受容
二人のパイオニア
キューブラー=ロス博士の研究
人間が死を恐れる理由
死は永久的な出来事
死の恐怖は後天的なもの
ある男に訪れた奇跡
蝶にたとえられた死
臨死体験の法則
レイモンド・ムーディの臨死体験研究
全知全能感とは何か?
「エルの物語」の引用
アカシックレコード
バレットの研究
オシスの研究
死を美化していいのか
自死を美化しない
人智学の意見
不慮の事故や子どもの死は?
ブッダの死生観
死は夏休みのようなもの?
第二部 月
月と日本人
月を愛する日本人
日本人の月志向
宇宙と葬儀の本質
人間は星のかけらからできている
死後の世界のイメージ
月こそ墓をつくるべき場所
納骨堂を超えるイメージ
宇宙葬ではない
月を墓に「見立てる」
月面聖塔
月面聖塔のイメージ
巡礼団をサポート
地球を見ること
月面に誕生する理想の病院
第三部 葬
死と月
死後の幸福感は月のイメージ
死後の魂がたどる道
祖霊の道につづく
二つの死
ホモ・フューネラル
葬儀は遊びよりも古い
オリンピックと葬儀
演劇と葬儀
月への送魂
神道式で描く未来の葬儀
葬儀の演出に思う
新しき葬儀
月と葬儀
満月と幽霊
ゼロ・ポイント・フィールド仮説
ホログラフィー理論
「あとがき」

ロマンティック・デス」というコンセプトを33年も前に書籍として発表しました。いま、本書をリボーンしてみて、これは新しい死生観の提案だったのだと、改めて気づかされました。わたしは、「死を美化したい」、さらにいえば「死は美しくなければならない」と思いました。なぜなら、われわれは死を未来として生きている存在だからです。未来は常に美しく、幸福でなければなりません。もし未来としての死が不幸な出来事だとしたら、死ぬための存在であるわれわれの人生そのものも、不幸だということになってしまいます。わたしはマゾヒストではありませんから、不幸な人生など送りたくありません。幸福な人生を送りたいと思います

わたしたちは、この世に生を受けた瞬間から「死」に向かって一瞬も休まずに突き進んでいます。だからこそ、残された時間を幸福に生き、幸福に死にたい。これはわたしだけではなく誰もが願うことでしょう。言うまでもなく、わたしたち全員が「死」のキャリアです。ならば、あらゆる人々が「死のロマン主義」を必要としているのではないでしょうか。それが本書を書く発端であり、問題意識でした。わたしが経営する会社は冠婚葬祭業ですので、葬儀のお世話もさせていただいています。そのために、わたしが死を美化しているのではないかという意見もあるかと思います。しかし、はっきり言って、そんな単純な動機でも、考えでもありません。本書をお読みいただければ、いかに「死」が人生における最重要問題であり、「死」を考えることがそのまま「生」を考えることになるかということが、おわかりいただけると思います。

死は決して不幸な出来事ではありません。なぜなら、誰もが必ず到達する「生の終着駅」だからです。死が不可避なら、死を避ける、あるいは死を考えないのではなく、素晴らしい終着駅にするべきではないでしょうか。わたしは「終活(終末活動)」を「修活(修生活動)」と言い換えています。人生を修めるという意味です。「ロマンティック・デス」という考え方は、人生を美しく修めるためのイメージ・コントロールに役立ちます。かつて為政者たちは死後の世界を、知ることができない世界ゆえに不安視し、おびえました。エジプトのファラオたちは死後の世界をピラミッドという墓のもとに描きだしました。中国の始皇帝は自らの墓を無数の兵士たちに守らせました。ピラミッドや兵馬俑陵を作った行為を愚かな所業とは言えません。ですが、現代人は同じことをしないはずです。科学が発達し、さまざまな技術が生まれた今、いたずらにおびえる必要はないからです。

でも、相変わらず「死」はタブー視されています。人々は、死を恐れています。今こそ、人生の終着駅である「死」を考え、死までの「生」を充実させるべきではないでしょうか。わたしは「死」を考えることは人生をゆたかにする、心をゆたかにする行為であると信じています。死の不安や恐怖を乗り越えるために、前向きな死生観を現代人はもつべきではないでしょうか。わたしは本書に3つのテーマを与えました。まず第1は「死」です。人間にとって永遠の謎であり、不可知の死をイメージするための手助けになればという思いからです。第2は「月」としました。死後の世界観を示す試みです。そして、第3は「葬」。現代社会における「葬」の役割を、変わらないものと、変えていくべきものとの両面でとらえなおす作業となりました。誰もが幸福な死生観をもつことができるロマンティック・デスを目指して――わたしは恐れずに、今再びこのコンセプトを提案したいと思います。

ロマンティック・デス』(国書刊行会)

本書『ロマンティック・デス』を世に問うのは3度目です。最初は、440ページのハードカバーの単行本として国書刊行会から上梓しました。サブタイトルは「月と死のセレモニー」で、帯には「幸せな『死』を求めて」「空前のスケールで、新しい『葬』を提案する!」「死は決して不幸な出来事ではない! これが新時代の葬儀・墓地だ! 死にはじまる物語をかくも雄大に、かくもロマンティックに構想した例はない。あらゆる人々に夢と希望を与える光の書!!」と書かれています。わが求道の先達であり、魂の義兄弟である鎌田東二先生に捧げさせていただきましたが、その「あとがき」の最後には、「一ヵ月にも満たない超スピードで私に本書を書かせてくれた諸神仏に心からの感謝と祈りを捧げたい。最後に、すべての死者たちに愛を込めて、ペンを置こうと思う。一九九一年九月二二日、仲秋の名月の夜に」と書かれています。

ロマンティック・デス』(幻冬舎文庫)

2度目は、2005年8月に幻冬舎文庫化されました。
サブタイトルは「月を見よ、死を想え」でした。「出版寅さん」こと内海準二さんに編集プロデュ―スしていただきましたが、ハードカバーで440ページあったオリジナル版がコンパクトに圧縮され、大幅に改稿、再編集を行った結果、272ページの文庫版となりました。サブタイトルも改題しました。そのとき、芥川賞作家で僧侶の玄侑宗久先生から「月落ちて天を離れず」という素晴らしい解説文を書いていただいて感激いたしました。そして、3度目となる今回、本名の 佐久間庸和として上梓いたしましましたが、またしても玄侑先生には推薦のお言葉を頂戴し、心より感謝しております。

単行本の初版が出てから、33年もの時間が経ったことに驚くとともに、わたし自身が冠婚葬祭会社の社長として奮闘した日々がよみがえります。この間、日本で超高齢化社会は加速度的に進行し、今や多死社会を迎えています。葬儀という儀式も、「家族葬」「直葬儀」「0葬」という簡素化の流れが止まりません。その一方で、日本初の月面着陸を目指す探査機「SLIM」(スリム)などを搭載した、国産の「H2A」ロケットの打ち上げに成功しました。月面の開発が現実味を帯びてきました。「月への送魂」のデモンストレーションはもう数えきれないほど行なってきましたし、さらにはホログラフィーを使った葬儀も実際に行なわれる時代となりました。

ロマンティック・デス』と『リメンバー・フェス

葬儀はアップデートされ、大きく変わってきましたが、変わらないものもあります。それは未だに「死」をタブー視することです。「死は不幸ではない」というメッセージをさらに強く、さらに広く伝えるために、本書『ロマンティック・デス』の姉妹本となる『リメンバー・フェス』を書きました。葬儀の後に続く、法事・法要・お盆といった供養のイメージ転換となる新時代の幸福論です。両書とも、4月23日に発売されます。ご一読下されば幸いです。

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