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No.0376 人間学・ホスピタリティ 『人間力を養う生き方』 鍵山秀三郎&山本一力著
2011.07.10
『人間力を養う生き方』鍵山秀三郎&山本一力著を再読しました。
今や50年以上にわたり掃除の実践を続けている鍵山秀三郎氏が、江戸下町を舞台に庶民の心を描き続ける作家の山本一力氏と語り合った対談です。
寒さに耐えた柿の味 辛苦に耐えた人の味
山本氏が鍵山氏の存在を初めて知ったのは、NHKの番組でした。鍵山氏の掃除の活動がビデオで紹介され、それをスタジオで見た山本氏がコメントを述べたのです。
体調がすぐれないとき、気持ちにゆとりがなくて煮詰まっているとき、自分の身体から出てものにも顔をそむけてしまいます。ところが、赤の他人がひどい使い方をしている公衆便所であっても、素手で掃除する人物がいると聞き、山本氏は腰が引けたそうです。
鍵山氏が素手でガシッと便器をつかんだ姿に非常な衝撃を受けました。その後対談してみて、鍵山氏が語る余計な装飾のない話もまた素手であることに気づいたとか。
2度目の対談を終えた後、山本氏は対談に同伴していた夫人と一緒に自転車に乗って去っていきました。見送った鍵山氏の心には、爽やかな余韻が残されました。
それは小説家として、1人の人間としてのまっとうな道を、ひたむきに汗をかきながら歩んでいる山本氏の生き方に共感と好感を覚えたからです。
鍵山氏自身が山本文学の愛読者だそうですが、2人は互いの体験をもとに仕事と人生、生き方の美学を語り合っています。
本物が発した箴言の数々を心ゆくまで味わえる本です。