No.0375 人間学・ホスピタリティ 『日々これ掃除』 鍵山秀三郎著(致知出版社)

2011.07.09

『日々これ掃除』鍵山秀三郎著(致知出版社)を再読しました。

著者は、掃除を「人生福々、会社福々への道」ととらえます。その掃除哲学に共感する人は多く、全国の家庭や学校や企業で、大きなムーブメントを起こしています。

人生福々、会社福々への道

本書には、著者の半生が綴られています。特に感銘を受けたのは、著者が創業した会社の創業12年目を襲った修羅場のくだりでした。どんな業界でも事業でも、成長するまでには混乱期を経ているものです。

著者の会社も例外ではありませんでした。 多額の不良債権を心ならずも引き受けてしまったために、筆舌に尽くし難い、辛く苦しい経験をいやというほど味わったといいます。

何事も前向きにとらえることでは定評のある著者が「本当に毎日が苦しみの連続で、まるで苦しみが洋服を着て歩いているようでした」とまで言うのですから、その心労の大きさがただごとではなかったことがわかります。

しかし、著者は夫人をはじめ誰にも相談しなかったそうです。ヤクザに監禁されて家に帰れない日が何度もありました。服をカミソリで切られ、重い灰皿や花ビンをぶつけられたりもしました。しかし、それを家では一切話さなかったというのです。

会社でも、経理のわずかな者を除いては、当時の著者が死ぬほど追い詰められていたことを幹部たちでさえ知りませんでした。

たった1人で戦い抜き、わずか数年で多額の不良債権を完済した著者は、「苦労が顔に出なかったら勝ち」と言い切ります。

想像を絶する苦労を決して他人に悟られず、何事もないように笑顔で日々の掃除を続ける人。その姿に本物の事業家を超えた本物の人間を見ました!

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