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2012.04.23
大変長らくお待たせしましたが、『図解でわかる!ブッダの考え方』(中経の文庫)の見本がついに出ました。これまでにドラッカーやニーチェなどでベストセラーを連発した中経の文庫「図解でわかる!」シリーズの最新刊です。
これまでにドラッカーやニーチェなどでベストセラーを連発した中経の文庫「図解でわかる!」シリーズの最新刊です。
本書の「目次」は、以下のようになっています。
「まえがき」
序章:ブッダの人生を変えた出来事
第1章:ブッダの基本的な考え方
1.4つの真理に行き着いたブッダ
2.ブッダが否定してきたもの
3.ブッダが行き着いた「関係」
4.ブッダの幸福観
5.ブッダの恋愛観
6.ブッダが説く人間関係
7.ブッダの死生観
第2章:ブッダ、現代社会を考える
第3章:ブッダのプロフィール
第4章:聖人としてのブッダ
第5章:ブッダの言葉たち
「あとがき」
わたしは、現代日本人はブッダの本当の考え方を知るべきであると思います。
わたしたちは、大きな危機を迎えています。戦争や環境破壊などの全人類的危機に加え、日本人は東日本大震災という未曾有の大災害に直面しました。想定外の大津波と最悪レベルの原発事故のショックは、いまだ覚めない悪夢のようです。
そんな先行きのまったく見えない時代で、必要とされる考え方とは何でしょうか。それは何よりも、地域や時代の制約にとらわれない普遍性のある考え方ではないかと思います。普遍性のある考え方といえば、わたしにはブッダ、孔子、ソクラテス、イエスといった世界の「四大聖人」の名が思い浮かびます。
わたしは、『スッタニパータ』という原始仏典の翻訳書をよく読みます。実際のブッダが生前中に残したとされる言葉を集めた本ですが、わたしはそれを古典と思って読んだことは一度もありません。
ブッダの言葉に限らず、たとえば孔子の言葉が集められた『論語』でも、イエスの言葉が記された『新約聖書』でも、ソクラテスの言葉を記録した『ソクラテスの弁明』をはじめとするプラトンの諸著作でも、つねに未知の書物として、それらに接し、おそるおそるそのページを開いてきました。ゆえに、そうした書物に書かれてある聖人たちの言葉は、わたしにとって常に新鮮であり続けています。実際、読むたびに、新しい発見が多くあります。彼らは決して古臭い歴史上の人物などではありません。彼らの思想は今でも生きていいます。彼らの心は現代に生きています。
「四大聖人」という発想そのものが非常に日本的であり、そこには「何でもあり」や「いいとこどり」といった心学的要素が見られます。わたしは、四大聖人にモーセ、ムハンマド、老子、聖徳太子の4人をさらに加えて『世界をつくった八大聖人』(PHP新書)という本を書きました。それらの聖人の中でも、これからの人類社会に最も求められる考え方を残したのがブッダではないかと思います。
ブッダは、世界宗教である仏教を開きました。現在、仏教と現代物理学の共通性を指摘する人がたくさんいます。極微という最少物質の大きさは素粒子にほぼ等しいとされています。それ以下の単位は仏教でいう「空」しかありません。ですから、「空」をエネルギーととらえると、もう物理学そのものなのです。
また、かのアインシュタインは、「相対性理論」によって、物質とは生成消滅するものだということを説きました。これまで隠されていた物質の本性を初めて人類に明かしました。永遠不滅の物質など存在しないという彼の理論は、まさに仏教の「諸行無常」そのものです。このように、ブッダは今から2500年も前に宇宙の秘密を解明しているのです。
それでは、ブッダの考え方はスケールが大きすぎて、現代に生きる一般人にはあまり関係ないのでしょうか。いや、そんなことはまったくありません。
ブッダの考え方には、現代に生きるわたしたちが幸せになるためのヒントがたくさんあります。現在、「仏教ブーム」だそうですが、その背景には一神教への不安と警戒が大きくあると思います。キリスト教世界とイスラム教世界の対立は、もはや非常に危険な状態に立ち入っています。この異母兄弟というべきキリスト教とイスラム教の対立の根は深く、これは千年の昔から続いている業です。しかもその業の道をずっと進めば、人類は滅びてしまうかもしれない。それを避けるには、彼らが正義という思想の元にある自己の欲望を絶対化する思想を反省して、憎悪の念を断たねばならない。この憎悪の思想の根を断つというのが仏教の思想に他なりません。
仏教は、正義より寛容の徳を大切にします。いま世界で求められるべき徳は正義の徳より寛容の徳、あるいは慈悲の徳です。この寛容の徳、慈悲の徳が仏教にはよく説かれているのです。わたしは、仏教の思想、つまりブッダの考え方が世界を救うと信じています。
さらに、わたしたち日本人は特にブッダの考え方を学ぶ必要があります。日本人の「こころ」は仏教、儒教、そして神道の三本柱から成り立っていますが、日本における仏教の教えは本来の仏教のそれとは少し違っています。インドで生まれ、中国から朝鮮半島を経て日本に伝わってきた仏教は、聖徳太子を開祖とする「日本仏教」という一つの宗教と見るべきだと、わたしは考えています。
もちろん、日本仏教の中にも素晴らしい教えが多く説かれていますが、本書ではあくまでブッダが説いたとされるオリジナルの教えを豊富な図解入りで解説してみました。これまで知らなかったブッダの本心に気軽に触れて下さい。本書でブッダの考え方を知ったみなさんが、わたしたちの未来に少しでも希望を感じていただけたら、これに勝る喜びはありません。著者冥利に尽きます。
なお、本書の「あとがき」には、世界平和パゴダと昨年逝去された故ウ・ケミンダ大僧正への想いを書きました。わがメッセージを感じ取っていただければと思います。