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No.0327 コミュニケーション 『三六九の子育て力』 越川禮子著(ポプラ社)
2011.05.16
昨日、次女の小学校の運動会に行きました。そこには、幼いお子さんがたくさんいました。まだ小学校に入学していない幼稚園児もいました。その中には、行儀の良いお子さんもいれば、そうでない子もいます。あらためて、子どもの躾というものについて考えてしまいます。
そこで、『三六九の子育て力』越川禮子著(ポプラ社)を再読しました。
大人になって困らない人を作る
著者は、「江戸しぐさ」の素晴らしさを広く紹介されている方です。わが社でも、著者をお招きして、江戸しぐさの御指導を頂いたことがあります。
著者が語り伝える「江戸しぐさ」とは、いったい何か? それは、江戸の商人を中心とした町人たちの間で花開いた「思いやり」のかたちです。出会う人すべてを「仏の化身」と考えていた江戸の人々は、失礼のないしぐさを身につけていました。譲り合いの心を大切にし、自分は一歩引いて相手を立てる。けっして威張りもしなければ、こびることもしない。あくまでも対等な人間同士として、ごく自然に実践していたものが江戸しぐさなのです。
しぐさは、ふつうは「仕草」と書きますが、江戸しぐさの場合は「思草」と書きます。「思」は、思いやり。「草」は草花ではなく、行為、行動の意味。つまり、その人の思いやりがそのまま行ないになったものなのです。江戸では、子どもの躾も思いやりを基本としました。ただし、教えてばかりでは、子どもが自発的に考えないし育ちません。そのため、教育という言葉のかわりに「養育」という言い方を好みました。その根底には、わが子が自分の頭で考え、自分の言葉で話し、1日も早く自立してほしいという親の願いがありました。
そして、「三つ心、六つ躾、九つ言葉、十二文、十五理(ことわり)で末決まる」という言葉に表現される段階的養育を実践しました。すなわち、3歳までは心を育む。6歳になるまでは手取り足取り口移しで、繰り返し真似をさせる。9歳までには、どんな人にも失礼のないものの言い方で応対できるようにする。12歳では文章を書けるようにし、15歳では物事の理屈をわからせる。15歳といえば、「学に志す」と『論語』にあります。その後は30にして立ち、40にして惑わず、50にして天命を知る・・・・・とつながっていくわけです。
そう、江戸しぐさから『論語』へ。大いなる人生の基礎をつくる、まさに江戸の子育ての知恵がつまった一冊です。
ところで、本書の帯には森尾由美さんの写真と言葉が掲載されています。アイドル時代から現在に至るまで、本当に美しい方ですね。じつは、わたしの長女が幼い頃に彼女と話したことがあります。今からもう15年以上前のことですが、当時は東京に住んでいました。長女は広尾の愛育病院で生まれたのですが、そこに予防接種に行ったのです。
注射を終えて待合室にいたら、そこに森尾さんが自分のお子さんの予防接種のために森尾さんが来院されました。そして、森尾さんは長女にニッコリと微笑み、「もう、お注射チックンしたの?」と優しく語りかけてくれたのです。その姿を見て、わたしは森尾さんのファンになってしまいました。思わず、父親であるわたしが「はい、チックンしました」と言いたくなりました(笑)。
あれから時が過ぎ、長女ももう大学生になりました。本書の副題にあるように、「大人になって困らない人」になってくれたでしょうか?
明日の全互連総会に参加するために、今日は午後から東京に出張します。時間が合えば、夜は長女に会ってみたいと思います。