No.2487 ホラー・ファンタジー 『最恐ホラー 廃墟の映画館』 真藤順丈、梨著(講談社)

2026.08.13

「やっぱり、夏は怪談!」ということで、『最恐ホラー 廃墟の映画館』真藤順丈×梨著(講談社)を読みました。映画館をテーマにした短編小説が2作収録されています。「最恐のホラー饗宴!」として、「小説現代」2025年8・9月号で人気だったホラー特集を連続刊行した中の1冊です。1テーマに2人、12作。全6シリーズで構成され、その第4弾が「廃墟の映画館」なのです。

映画館をテーマにしたホラーということでは、最近、一条真也の読書館『ある映画の異変について目撃情報を募ります』で紹介した海藤文字氏の作品を読みました。同作が非常に面白かったで、本書『最恐ホラー 廃墟の映画館』をアマゾンで購入し、読んだ次第です。本書には2つの短編ホラーが収められているのですが、総ページ数は72ページ。それで価格は950円(税別)なのですから、ちょっと高いですね。このシリーズ、レビューを見ても「高すぎる」といった意見がほとんどです。ここは12作全部を1冊にして、2000円台にするべきでしたね。それでも、本書は1ページあたり35字×15行=525字。活字が大きくて、本自体も薄くて軽いので、寝そべって読むぶんには楽でした。

1作目は、真藤順丈による「キイストーンの幽霊」
作家の<私>が元同級生の犯した罪を聞いて思い出したのは、かつて彼が語っていた米軍基地の中の映画館での奇妙な鑑賞体験でした。そのとき上映されていたのは、先の大戦における凄惨な虐殺を描いたいわくつきの映画でした。「炎628」という1985年のソ連映画です。エレム・クリモフ監督作品ですが、戦争映画にしてホラー映画でもあります。第二次大戦中の白ロシアの村を舞台に、ドイツ兵により迫害される村人たちの姿を一人の少年の姿を通して描いています。村民たちを狭い納屋に閉じ込めて火を放つなどの狂気の暴虐をありありと綴った内容です。「キイストーンの幽霊」は、この映画を観ていた主人公が奇妙な傷痍軍人の幽霊を目撃する話で、怖かったです。冒頭の「私は心霊や超常現象の類いを信じていない。職業柄と個人的性格もあって凝り深いたちであるし、あの世とは俗悪な妄想、神は一つの単語、魂はせいぜい人間を動かす蓄電池のエネルギーにすぎないと思っている」という書きだしの一文も秀逸です!

もう1作は、梨による「ギニーピッグの瘡蓋」
舞台は福岡で、博多や北九州の繁華街も登場します。主人公の「私」が学生時代にバイト先の黒服仲間から聞いた話を中心に物語が展開していきます。戦後の福岡市のとある映画街の一角でひっそりと栄えた、ピンク映画を上映する映画館。劇場を訪れた者は支配人から「あるもの」を与えられました。それは「幽霊を惨殺するスナッフフィルム」なのですが、この設定そのものに無理があって、わたしは物語に入っていけませんでした。作者の梨は背筋と並んで、現代日本のホラー・シーンの旗手なのですが、ちょっとこの話は完成度が低いですね。ちなみに「スナッフフィルム」というのは、スナッフフィルムとは、娯楽や金銭目的で「実際の殺人行為そのもの」を撮影・流通させたとされる映像の俗称であり、多くは噂やフィクションの域を出ず、実在性にも強い疑問が持たれている危険なコンテンツ概念です。日本では、ビデオ作品シリーズの「ギニーピッグ」シリーズが有名です。1985年の第1作「ギニーピッグ 悪魔の実験」以後、オリジナル作品が全7作、総集編が全3作製作されています。