No.2490 ホラー・ファンタジー 『ポルターガイストの囚人』 上條一輝著(東京創元社)

2026.08.16

『ポルターガイストの囚人』上條一輝著(東京創元社)を紹介します。一条真也の読書館『深淵のテレパス』で紹介したホラー小説の続編ですが、前作に続いてこちらも非常に怖くて面白かったです。上條一輝は2作目にして日本ホラー界の絶対エースになりました!

本書の帯

チープ感漂う前作の表紙イラストとは違い、本書のカバー表紙には鏡を覗く人物の後ろに霊のような存在が立っているという恐怖感満点のイラストが描かれています。帯には「誰もいないはずの家で聞こえる襖が開閉する音、触れていないのに落下する遺影、ひとりでに動くこけし、そして鏡に映る黒い人影――」「『ベストホラー2024』(国内部門)、宝島社『このホラーがすごい!』2025年版(国内編)第1位の『深淵のテレパス』に続く〈あしや超常現象調査〉シリーズ待望の続編!」と書かれています。

本書の帯の裏

ちなみに、宝島社『このホラーがすごい!』2026年版(国内編)では本書『ポルターガイストの囚人』が第1位に輝きました。帯の裏には、「『さようなら、晴子さん』晴子と越野の調査は終わりへと向かう」「〈あしや超常現象調査〉、次作で完結。」と書かれています。せっかくの人気シリーズがあと1作だなんて、もったいないですね!


アマゾンより

カバー前そでには、以下の内容紹介があります。
「『あしや超常現象調査』の芦屋晴子と越野草太は、古い一軒家でポルターガイストに悩まされる人物の依頼を受ける。世界で起こったポルターガイスト現象から法則性を導き出し、独自の対策を編み出して超常現象に立ち向かう二人。やがて現象は収束した・・・・・・と思った矢先に、依頼人が失踪してしまう。さらに晴子と越野の周囲までもが奇怪な現象に蝕まれ始めーー。『ベストホラー2024』(国内部門)、『このホラーがすごい! 2025年版』(国内編)で1位に輝いた『深淵のテレパス』に続く、〈あしや超常現象調査〉シリーズ第2弾!」

コンパッション!』(オリーブの木)

前作『深淵のテレパス』では地下で壮絶なサイキック・バトルが展開されましたが、本作では一転して、その舞台が空中となります。詳しく書くとネタバレになるので控えますが、〇〇を使って「呪い」を増幅させるというアイデアには唸りました。あと、他人から心身をコントロールされる条件として「同調ではなく、同情してしまうこと」が指摘されている点が印象的でした。ある人物のインタビューで悲惨な生い立ちを聴いた人物が、「可哀そうな人」と心から同情することによって心身を乗っ取られてしまうというのです。これはわたしが重視する「コンパッション」の負の側面あるいは反作用を描いた珍しい視点であると思いました。

タイトルにある「ポルターガイスト」という言葉を知らない人は少ないと思います。ドイツ語で「騒がしい霊」を意味する言葉で、誰も触れていないのに物が動いたり、激しい音がしたりする超常現象のことです。スティーヴン・スピルバーグらが脚本を書き、トビー・フーパーが監督したアメリカ映画「ポルターガイスト」(1982年)は世界的に大ヒットしました。郊外に新築された家に越してきた一家を襲う異常な現象。幼い娘が行方不明となり、霊媒師は悪霊の存在を感じとった。やがてその土地は元々墓場だった事が判明します。スピルバーグが製作したホラー大作で、SFX・演出ともにこのジャンルの作品の中では最高峰です。2015年にはサム・ライミ製作でリメイク版も公開されました。

2023年には、ブログ「三茶のポルターガイスト」で紹介した心霊スポットに潜入取材を試みる日本のホラードキュメンタリー映画が公開されました。東京・三軒茶屋の雑居ビルにある、某芸能プロダクションがレッスンスタジオとして使用するフロアは、さまざまな心霊現象が起きる心霊スポットとして知られます。そこへ潜入した取材チームは、振動しながら点滅する照明器具、あらぬ方向へ飛んでいく壁掛け時計、水が吹き出す鏡など、数々のポルターガイスト現象に遭遇します。やがて、カメラの前に人間の姿をした白い影が浮き上がり、あり得ない場所から白い手が伸びてくるのでした。監督を務めるのは「真・事故物件」シリーズなどの製作に携わってきた後藤剛。

2024年にはブログ「新・三茶のポルターガイスト」で紹介した「三茶のポルターガイスト」の続編となるホラードキュメンタリー映画が公開。数々の超常現象が起こる、東京・三軒茶屋の雑居ビルにあるヨコザワ・プロダクション。天井や床から現れる白い手や、降霊術中に現れる黒い手、激しく揺れ動くホワイトボードなどの不思議な現象を、学者らが科学的な観点から解明しようとします。監督は「怪談新耳袋」シリーズなどの豊島圭介。出演はオカルト編集者の角由紀子や、ブログ「TENET テネット」で紹介した2020年のアメリカのSF映画の字幕科学監修を手掛けた物理学者の山崎詩郎、超心理学者の小久保秀之など。ナレーションを俳優の東出昌大が担当しています。

それから、本書には「ヒツジ・ヤギ効果」という言葉が頻出します。「山羊・羊効果」あるいは「シュマイドラー効果」とも呼ばれる超心理学の用語です。ESP(超能力)の存在を信じる人(ヒツジ)が良い結果を出し、信じない人(ヤギ)が低い結果を出す傾向がある現象のことです。超心理学的な現象やESPを信じるグループで、実験で平均よりも高い正解率を出す傾向があります。ESPの存在を信じない、または否定的な態度のグループで、偶然平均より低い得点になる傾向があります。アメリカの心理学者ガートルード・シュマイドラーが1940年代に発見・提唱しました。本書『ポルターガイストの囚人』の最後も、ヒツジ・ヤギ効果を確認するためにサイコロを振る場面でしたが、前作に続いて最高の超常現象エンターテインメントを堪能しました!