No.2491 ホラー・ファンタジー 『完璧な家族の作り方』 藍上央理著(角川ホラー文庫)

2026.08.22

『完璧な家族の作り方』藍上央理著(角川ホラー文庫)を読みました。北九州市が舞台のモキュメンタリー・ホラー小説と知って、「これは読まねば!」と思ったのですが、なかなか怖かったです。著者は、福岡県出身。「完璧な家族 首縊りの家」でnote主催創作大賞2024角川ホラー文庫賞を受賞。同作を改題・改稿した本作でデビュー。アマゾンには、「わたしもあなたも、完璧な家族、作れます。新人賞に応募された小説作品『完璧な家族の作り方』。角川ホラー文庫編集部は、著者のある目的のため、本作の書籍化を決定しました。※本作は、note主催・創作大賞2024〈角川ホラー文庫賞〉受賞作です」と書かれています。

カバー裏表紙には、以下の内容紹介があります。
「ある新人賞に応募された小説作品『完璧な家族の作り方』。ホラー小説を手がける某編集部は、著者の目的のため、書籍化を決定した。北九州に現存する一軒家で起きた凄惨な事件。その家で増え続ける行方不明者と、奇妙な怪談に関する取材記録の数々。応募原稿には1枚の家族写真が添付されていた――これらは、完璧な家族とその実例を通して、理想の家族のあり方を教えてくれるものです! わたしもあなたも、完璧な家族、作れます。note主催創作大賞2024角川ホラー文庫賞受賞」

本作は、かつて北九州市で起こった一家殺害事件の舞台となった宍戸邸という廃墟をめぐって、数々に怪異が続く物語です。「ド派手成人式」でイメージの良くない北九州市のイメージがさらに悪くなるので本当は指摘したくないのですが、明らかに1996年から2002年にかけて日本中を震撼させた「北九州監禁連続殺人事件」をモデルにしています。松永太と緒方純子による監禁・虐待・通電拷問・遺体解体・・・マインドコントロールで7人を殺害した犯罪史上最悪クラスの凶悪事件です。この事件にインスパイアされたホラーこそ、本作『完璧な家族の作り方』なのです!

KADOKAWA文芸WEBマガジン「カドブン」では、「本作が〈角川ホラー文庫賞〉に選出された経緯を教えてください」と言うインタビュアーに対して、編集担当T氏が「選考の際に、最初に読んだ作品が本作だったので、さすがに驚きました。どうしてこんなにも地獄のような、極限の状態を思いつくのか・・・・・・。凶悪な内容に翻弄されながらも、あっという間に読み終えていました。作品末尾に、1枚の家族写真が掲載されていたのですが、それを見て、改めて推薦を心に決めました。これだ、著者の目的はこれだったんだ、と。編集部でも全会一致でした」と語っています。

インタビュアーも本作を読んだそうですが、「ページをめくるたびに様々な人物の視点から見た情報が積み重なっていき、どんどん影が濃くなって禍々しいモノの実像がはっきりしていくような感覚を覚えました。家族写真は、書籍の巻末にも掲載されていますね」と語っています。それに対して、著者の藍上氏は「はい。あの写真、とても素敵な写真ですよね。もちろん、本書を読まれる前にご覧になられてもいいのです。ただ、その後、もう一度ご覧ください。この写真がとても慈愛に満ちた完璧な家族写真だと気付かれるはずです」と述べるのでした。

その家族写真を見た人が、何人も行方不明になっているとか。『完璧な家族の作り方』試し読み記事を掲載後、失踪したカドブン編集部員の女性の行方を追い、北九州市の宍戸邸へ向かうことに決めた元恋人の男性は、「宍戸邸に行けば。そこに彼女はいるかも知れない。俺を愛してくれていたころの彼女が。俺の言うことはなんでも聞いた彼女が。どんなにしつけても、なかなか壊れなかった彼女が。今度こそ、今度こそ本当の家族になれるかも知れない。(編集長より、表現要調整との指摘アリ)今一度、巻末の家族写真を見てみると、初めて見た時から少しだけ変化があるように思える。これも気のせいなのだろうか」などと書いています。

とまあ、こういう凝った設定のホラーなのですが、アマゾンのレビューでも指摘されているように、作中に登場する2010年の高校生カップルのくだりに違和感をおぼえます。男女どちらもスマホを使っているのですが、当時の普及率は約4%で、北九州の高校生カップルが2人とも所持しているというのは如何でしょうか。さらに2人は「バズる」という言葉まで使っているのですが、これはもう時代設定ミスとしか思えません。せっかく物語そのものはよくできていて怖く仕上がっているのに、残念です。「ホラー・ファンタジー・SFなどの非日常の物語ほど、細部にはリアリティが求められる」と考えているわたしはガッカリしたのであります。