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2016.10.02
『自分を変える読書術』堀紘一著(SB新書)を読みました。
「学歴は学〈習〉歴で超えられる」とのサブタイトルがついています。
本書の帯
カバー表紙には、ドヤ顔(?)の著者の写真が使われています。帯には「読書は学歴を凌駕する!」と書かれ、カバー裏には内容紹介があります。
「あの渡邉恒雄主筆に見いだされて読売新聞社に入社。その後、三菱商事、ボストンコンサルティング社長を経て、55歳でドリームインキュベータを起業。カリスマコンサルタントとして名を馳せる知の巨人は、幼い頃から”本の虫”だった。さまざまな本を戦略的に読むことで目標を達成し、自己実現をしてきた。そんな著者の人生に、仕事に効く読書術を初公開。本を武器に学歴さえ凌駕してしまう戦略的読書術の真髄を解き明かす」
本書の「目次」は、以下のような構成になっています。
序章 人生を楽しく生きる3つの方法
第1章 学歴より、読書で「学習歴」を作れ
第2章 読書の7つの効用
第3章 ビジネスパーソンが読むべき4つのジャンル
第4章 読書をすると運がよくなる
第5章 今日から始める<堀式>読書術
第6章 読書の効果を高める工夫
第7章 読書が私の進む道を決めた
第8章 Q&Aでさらに役立つ読書のコツを学ぶ
序章「人生を楽しく生きる3つの方法」の最後、著者は書いています。
「どこそこの大学卒だから学歴が高いという風潮、つまり大学受験における偏差値で評価する日本の学歴の捉え方は、諸外国とは大きく異なっていることを知っておくべきだ。だからといって諸外国の学歴に対する認識が正しいとは、私はこれっぽっちも思っていない。
『学歴なんてクソくらえ』ということが本書を読み進んでいくことによってわかってもらえると思う」
第1章「学歴より、読書で『学習歴』を作れ」では、「差をつけるには読書と耳学問しかない」として、著者は以下のように述べています。
「昔、学歴ではなく『学習歴』こそが重要だと親しい経営者から教わった。
地球上でヒトというちっぽけな動物が『万物の霊長』として威張っていられるのは、言葉を身につけて知恵の伝承ができるようになり、過去から学んで未来を切り開く学習経験ができるようになったからだ。同様にビジネスパーソンも、学習歴の幅と深さと長さが、その人の人生を決めるといっても過言ではない。その大事な学習歴を身につける方法は2つしかない。ひとつが『読書』であり、もうひとつが人の話を聞いて学ぶ『耳学問』だ」
第2章「読書の7つの効用」では、以下の7つの効用が紹介されます。
1.失敗を二度繰り返さない
2.表現力が磨かれる
3.ストーリー構築力が磨かれる
4.環境が変わって成功できる
5.読書は大学院入学に値する
6.読書は「超常識」を引き出す
7.本が師匠になってくれる
7つの効用には説得力がありますが、わたしには特に読書の効用2「表現力が磨かれる」についての以下のくだりが印象に残りました。
「読書で表現力が磨かれるのは、第1に本を読むとボキャブラリー(語彙)が増えるからだ。アメリカで行われたある調査によると、ウエストサイドの下層の人が日常的に使っている語彙は、たったの3000語。逆にいえば英単語を3000語知っていれば日常的な会話はだいたい成り立ち、ご近所さんと世間話ができる。
これが大学で学んだアメリカ人の語彙となると、その10倍以上の5万語にまで広がるといわれる。英単語を5万語知っていれば、新聞を読んだり、社会科学の本を読んだりしても理解できるだろう。
これが教養人といわれるレベルになってくると、語彙は一般的な大卒レベルの2倍の10万語になるといわれる。英単語を10万語知っていれば、かなりのインテリということだ」
また、読書の効用4「環境が変わって成功できる」では、「旅行で環境を変える」として、以下のように書かれています。
「昔から『転地療法』という言葉があるように、旅行は頭の切り替え、精神の切り替えに役に立つ。衛生面や安全面には十分な配慮が欠かせないものの、日本とはまるで環境が違う開発途上国へ出かけてみるのも悪くないだろう。物理的移動の欠点は、時間とお金がかかること。アフリカやインドまでいけば人生観まで変わるかもしれないが、1週間くらいの休暇と数十万円の出費を覚悟しなくてはならないだろう。これは気軽にできることではない」
第5章「今日から始める<堀式>読書術」では、以下の記述を興味深く読みました。
「ドリームインキュベータのベトナム拠点の責任者に『ミャンマー人は日本人と似ているね』といったら、『堀さん、それは当たっています。実はミャンマー人は東南アジアで唯一、日本人と同じモンゴロイドなのです』と興味深いことを教えてくれた」
読書には関係のないエピソードですが、わたしはミャンマーと縁が深く、日本で唯一のミャンマー式仏教寺院である「世界平和パゴダ」の支援をさせていただいています。ミャンマー人の友人や知人も多く、「どうして、ミャンマー人と日本人は気が合うのだろう?」と不思議に思っていましたので、これを読んで納得がいきました。こういう発見ができるのも読書のおかげです。
第7章「読書が私の進む道を決めた」では、「最低3冊の本で業界を知る」として、著者のノウハウが以下のように明かされます。
「私は速読も斜め読みも大嫌いなので、1ページずつ丁寧に読むことを信条としているが、このときばかりは速読的な読み方を強いられることも少なくなかった。
業界を知るときには最低3冊の本を用意する。1冊だけだとその著者の見解に偏りがあった場合、色眼鏡で業界を俯瞰することになりかねない。最低3冊読めば、三角測量のようにほぼ正確に業界の基礎知識が頭に入ってくる。とはいえ、本だけではコンサルティングはできない。コンサルティングで私が最も重視しているのは、つねに現場である。
現場では、企業や組織のあらゆる立場の人に話を聞く。そのインタビューを通じて立場の違いによる、現状把握や問題意識のズレを探していく。そのズレにこそ、課題解決のヒントが隠されているのだ」
第8章「Q&Aでさらに役立つ読書のコツを学ぶ」では、「欧米人を理解するのにどんな読書が必要ですか?」という問いに対して、著者は「欧米人を理解するためにはその背景にある文化について学んでおくべきなのだ。その根幹となっているのはキリスト教、ギリシア哲学、ローマ法の3つである」と答えています。わたしはこれまで欧米の理解のためには、キリスト教とギリシャ哲学が二本柱であるとは認識していましたが、そこにローマ法が加わるとは思いませんでした。なるほど、確かにそうですね。勉強になりました。
最後に、「これまで全然本を読んでいません。読書を続けるにはどうしたらいいですか?」という問いに対する著者の以下の発言が秀逸です。
「『忙しいから本が読めない』という声をよく耳にするが、それは読書が習慣化していない証拠。そんないい訳をする人だって、忙しいという理由で歯磨きをサボることはないだろう。それは歯磨きが習慣になっているからだ。
歯磨きが習慣化されているのは、『歯を磨くと口の中がすっきりして気持ちいい』という体験を何回も繰り返しているうちに、『また気持ちよくなりたい』と無意識に思うからである。
同様に読書を習慣化する近道は面白い本にどんどん出合い、読書の醍醐味を繰り返し経験することに尽きる」