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No.1899 プロレス・格闘技・武道 『アントニオ猪木 闘魂語録大全』 アントニオ猪木著(宝島社)
2020.06.20
19日、都道府県をまたいだ移動自粛もクリアになり、ようやくプロ野球も今シーズンの開幕を迎えました。日本に元気が戻りつつあるような気がしますが、こんなときは「元気ですかっー!?」が口癖のあの人のことを思い出します。
そこで、『アントニオ猪木 闘魂語録大全』アントニオ猪木著(宝島社)を読みました。これまで宝島社の昭和プロレス本は「これでもか!」というくらいに紹介してきましたが、「さすがにネタも尽きただろう」と思っていたら、まさかの猪木の名言本が出ました。これは読まねば!
本書の帯
本書の帯には、リング上で対戦相手にナックルパートを見舞う鬼の形相をした猪木の写真が使われ、「人生にもビジネスにも効く! 言葉の『闘魂ビンタ』108発」「馬鹿になれ」「恥をかけ」「一歩踏み出せ」「難局にこそ『非常識』が必要だ!」「常識を超えた発想と行動力を生む全思考」と書かれています。
本書の帯の裏
また帯の裏には、「人に気をつかって平均点とってるやつに光るだけのエネルギーなんかありっこない」「リング側に、カリスマ的な絶対性があってこそ、ファンの方がついて来るんです」「やっぱり人間、怒りがないとダメだな」「そもそも俺は詐欺師が大好きなんだ」「今日の絶対は明日の絶対ではない」「感じただけでもアクションを起こさなければ無意味」と書かれ、カバー前そでには「日本には、イノキが足りない――。未曽有の難局にこそ、‟過激な非常識”が必要だ」と書かれています。
猪木の語録は、これまでも何冊か刊行されていますし、本書と似たコンセプトの本として、一条真也の読書館『アントニオ猪木流「燃える」成功法則58』で紹介した本があります。同書は、2013年7月21日に行われた参議院選挙において、日本維新の会から出馬し、同会内最多得票となる35万6606票を獲得して当選、18年ぶりの国政復帰を果たした猪木の生き方から「苦しいとき、どん底の時にこそ、過激に生きなければならない」というメッセージを根底にした成功への指南書でしたが、本書は2019年6月26日に政界を引退し、2020年2月に喜寿を迎えた猪木自身の言葉を集めた本です。過去約40年にわたる新聞・雑誌などでのインタビューや連載から厳選した闘魂語録108個を収録。
本書の「目次」は、以下の通りです。
「はじめに」
第一章 仕事
真のプロフェッショナルに必要なこと
第二章 発想
大衆の心を摑む「非常識」という哲学
第三章 行動
一歩を踏み出さなければ何も始まらない
第四章 人間
修羅場を乗り越え辿りついた猪木流人間学
第五章 自信
自分の殻をブチ破るための勇気が出る言葉
第六章 組織
闘う組織のリーダーに求められる条件
〈完全年表 アントニオ猪木 過激なる77年の軌跡〉
〈出典一覧〉
全部で108ある言葉の中から、わたしの心に特に響いた12の名言をここに紹介させていただきたいと思います。なお、●に続く言葉は名言に添えられたタイトルです。
●力道山のDNAを受け継ぐプライド
「闘魂」とは何か。
俺は自分自身に
打ち勝つことだと
解釈している。
●「世間」を巻き込む環状線理論
プロレスは、ある意味、劣等意識がある。新聞も扱わない。じゃあ、どうやったら扱うんだ、書くんだ。そういう戦いがいろんな場面である。
●時代の空気を感じる
先導動物っていうのがいるんです。
アフリカの草原にね。
群れをなしている中でも、
必ず一頭だけが耳をそばだてて
風をうかがっている。
人間の社会もそうだと思う。
●運気のつかみ方
運のいいヤツ、
つまりラスベガスでギャンブルに勝つようなヤツというのは、勝ったら、あっさりその場を去っていく。その見切りが優れているのだ。
●日本人の悪しき国民性
今怒らないヤツは
後になって
こ文句言う資格はない。
●毒を食らわば皿まで
たとえ嫌いな相手でも
一度その人間を
飲み込んでしまう度量が
必要だと思う。
●時間を我慢できるか
本当に自分の目で見て体験している
世界さえ持っていれば、人が何を言おうとそれは変えられない。
それさえあれば待つこともできるし、
壁を打ちやぶることができる。
●本当の強さ
負けなければ
人間は強くなれない。
●猪木哲学の根本原理
バカになれ。
恥をかけば
本当の自分が見える。
●人と争うことを恐れるな
ケンカとは
全人格の放電である。
●未来を閉ざさないために
別れ際と言うのは
綺麗であるべきだ。
●猪木流の死生観
死というのは
素晴らしい世界だと思うね。
みんなは悲しく
しすぎるんじゃないかな。
この最後の「死というのは素晴らしい世界だと思うね。みんなは悲しくしすぎるんじゃないかな」という言葉には、非常に感動しました。解説ページで、猪木氏は「私は宗教家じゃないから、なんともいえないけど、死というのは素晴らしい世界だと思うね。みんなは悲しくしすぎるんじゃないかな。もうひとつの新しい世界というか、来世に向かって旅立っていくときは、もっと祝福すべきなんじゃないかって……」と述べています。まさに、「ロマンティック・デス」の世界ではないですか! もっと、早くこの名言を知っていれば、『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)で取り上げたかったです!
正直言って、わたしはもう昭和&平成プロレスの検証本は食傷気味でした。しかし、猪木とあれば話は別です。
天龍源一郎、長州力、前田日明、武藤敬司らを超えるプロレス界最大のカリスマといえば、‶燃える闘魂”アントニオ猪木しかいません。本書には、常識を超えた発想と行動力でカリスマとなった天才レスラーの思考が網羅されています。コロナ禍という前代未聞の難局を乗り切るためにも、わたしたちには「猪木の思考」が必要であると思った次第です。