No.2208 SF・ミステリー 『#真相をお話しします』 結城真一郎著(新潮社)

2023.02.01

早いもので今年も1月が終わり、2月になりました。
『#真相をお話しします』結城真一郎著(新潮社)を読みました。話題になっている短編小説集ですが、びっくりするほど面白かったです。最近のホラー・ミステリー・SFといった分野の作家の短編集は、のきなみフジテレビ「世にも奇妙な物語」の強い影響を感じますが、本書に収められた5作品にもそれを感じました。

本書の帯

カバー表紙には、まるで手でスマホを操作しているような少年の顔が描かれ、帯には「テレビ、新聞、ラジオ、SNSで話題沸騰!」「発売即大重版!!」「でも、何かがおかしい。」「小細工一切なし、二度読み不可避の新感覚ミステリ。」と書かれ、「『騙されて驚くためにミステリを読む』という読者に恰好の贈り物・有栖川有栖(作家)/凄い間違い探しに手を出してしまった! 始めた以上はやめられない。南沢奈央(女優)/『絶対に読者を騙してやろう』という凄まじい執念に恐怖すら感じました……虫眼鏡(東海オンエア/YouTubeクリエイター)」と書かれています。

本書の帯の裏

帯の裏には、「ミステリ界の超新星が仕掛ける、罠、罠、罠、罠、罠。」「家庭教師の仲介営業マンとしてしのぎ削る大学生。娘のパパ活を案じながらも、マッチングアプリに勤しむ中年男。不妊に悩んだ末、精子提供を始めた夫婦。リモート飲み会に興じる学生時代の腐れ縁。人気YouTuberを夢見る、島育ちの小学生四人組。微笑ましくて、愛おしくて、時に愚かしい。令和を生きる私たちのニュー・ノーマル」「――本当に? 読みながら覚えるかすかな違和感と確かな胸騒ぎ。それでも、あなたの予想は必ず裏切られる! 緻密で大胆な構成と容赦ない『どんでん返し』の波状攻撃に瞠目せよ。」「第74回日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作『#拡散希望』を収録」と書かれています。

著者は、1991年、神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業。2018年、『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、2019年に同作でデビュー。2020年に『プロジェクト・インソムニア』を刊行。同年、「小説新潮」掲載の短編小説「惨者面談」がアンソロジー『本格王2020』(講談社)に収録。2021年には「#拡散希望」(「小説新潮」掲載)で第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。同年、三冊目の長編作品である『救国ゲーム』を刊行し、第22回本格ミステリ大賞の候補作に選出されています。

アマゾンより

アマゾンの内容紹介には、こう書かれています。 「私たちの日常に潜む小さな”歪み”、あなたは見抜くことができるか。家庭教師の派遣サービス業に従事する大学生が、とある家族の異変に気がついて……(「惨者面談」)。不妊に悩む夫婦がようやく授かった我が子。しかしそこへ『あなたの精子提供によって生まれた子供です』と名乗る別の〈娘〉が現れたことから予想外の真実が明らかになる(「パンドラ」)。子供が4人しかいない島で、僕らはiPhoneを手に入れ『ゆーちゅーばー』になることにした。でも、ある事件を境に島のひとびとがやけによそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)など、昨年「#拡散希望」が第74回日本推理作家協会賞を受賞。そして今年、第22回本格ミステリ大賞にノミネートされるなど、いま話題沸騰中の著者による、現代日本の〈いま〉とミステリの技巧が見事に融合した珠玉の5篇を収録」

アマゾンより

本書に収録されている「惨者面談」「ヤリモリ」「パンドラ」「三角好計」「#拡散希望」の5作とも非常に面白かったです。最初の「惨者面談」は読みながらオチが想像つくのですが、それでも一気に読まされます。コーネル・ウールリッチの短編みたいな味わいがありました。「ヤリモリ」「パンドラ」「三角好計」の3篇はセックスというテーマに正面から取り組んでいて、それでいて読者の予想を大きく裏切る爽快さがありました。最後の「#拡散希望」はYouTuberの物語です。わたしは基本的にYouTuberという職業が好きではないので、この作品自体にも「つまらないテーマを選んだな」と偏見をもって読み始めたのですが、最後は「やられた!」と思いました。YouTuberが登場する物語としては最高傑作ではないでしょうか。動画投稿という職業の性(さが)をこれほど見事に描いた小説はありません。いやはや、楽しみな作家が登場したものです。

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