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2013.07.26
わたしの最新刊『死が怖くなくなる読書』(現代書林)の見本がついに出ました。
サブタイトルは、「『おそれ』も『かなしみ』も消えていくブックガイド」です。
長い人類の歴史の中で、死ななかった人間はいませんし、愛する人を亡くした人間も無数にいます。その歴然とした事実を教えてくれる本、「死」があるから「生」があるという真理に気づかせてくれる本を集めてみました。
これまで数え切れないほど多くの宗教家や哲学者が「死」について考え、芸術家たちは死後の世界を表現してきました。医学や生理学を中心とする科学者たちも「死」の正体をつきとめようとして努力してきました。まさに死こそは、人類最大のミステリーであり、全人類にとって共通の大問題なのです。
なぜ、自分の愛する者が突如としてこの世界から消えるのか、そしてこの自分さえ消えなければならないのか。これほど不条理で受け容れがたい話はありません。本書には、その不条理を受け容れて、心のバランスを保つための本がたくさん紹介されています。本書の読了後、そのことをよく理解されると思います。本書では、あなた自身が死ぬことの「おそれ」と、あなたの愛する人が亡くなった「かなしみ」が少しずつ溶けて、最後には消えてゆくような本を選びました。
死別の悲しみを癒す行為を「グリーフケア」といいますが、もともと読書という行為そのものにグリーフケアの機能があります。たとえば、わが子を失う悲しみについて、教育思想家の森信三は「地上における最大最深の悲痛事と言ってよいであろう」と述べています。じつは、彼自身も愛する子どもを失った経験があるのですが、その深い悲しみの底から読書によって立ち直ったそうです。
本を読めば、この地上には、わが子に先立たれた親がいかに多いかを知ります。また、自分は一人の子どもを亡くしたのであれば、世間には子を失った人が何人もいることも知ります。これまでは自分こそこの世における最大の悲劇の主人公だと考えていても、読書によってそれが誤りであったことを悟るのです。
本書では5つの章に分けて、50冊の本を紹介しています。以下の通りです。
第1章 死を想う
『メメント・モリ』藤原新也
『「死」の博学事典』荒俣宏監修
『死にカタログ』寄藤文平
『あした死ぬかもよ?』ひすいこたろう
『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』前野隆司
『日本人の死のかたち』波平恵美子
『日本人の死生観を読む』島薗進
『わたしが死について語るなら』山折哲雄
『そうか、もう君はいないのか』城山三郎
『ぼくがいま、死について思うこと』椎名誠
第2章 死者をみつめる
『今日は死ぬのにもってこいの日』ナンシー・ウッド
『先祖の話』柳田國男
『災害と妖怪』畑中章宏
『恐山』南直哉
『遺品』柳原三佳
『遺体』石井光太
『納棺夫日記』青木新門
『悼む人』天童荒太
『降霊会の夜』浅田次郎
『アミターバ 無量光明』玄侑宗久
第3章 悲しみを癒す
『おかあさんのばか』写真:細江英公、詩:古田幸
『人生で大切な五つの仕事』井上ウィマラ
『悲しんでいい』髙木慶子
『悲しむ力』中下大樹
『僕の死に方』金子哲雄
『伴侶の死』平岩弓枝編
『さよならもいわずに』上野謙太郎
『古事記ワンダーランド』鎌田東二
『人は死なない』矢作直樹
『天使のまなざし』ジャッキー・ニューカム
第4章 死を語る
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹
『小暮写眞館』宮部みゆき
『人質の朗読会』小川洋子
『スウィート・ヒアアフター』吉本ばなな
『その日の前に』重松清
『翼』白石一文
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾
『永遠の0(ゼロ)』百田尚樹
『ツナグ』辻村深月
『盆まねき』富安陽子
第5章 生きる力を得る
『幸せの遺伝子』村上和雄
『ありがとうの花』山元加津子
『こころの手足 中村久子自伝』中村久子
『夜と霧』V・E・フランクル
『人魚の姫』アンデルセン
『マッチ売りの少女』アンデルセン
『青い鳥』メーテルリンク
『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
『星の王子さま』サン=テグジュぺリ
『また会えるから』一条真也(あとがきに代えて)
本書を最後まで読まれたならば、おだやかな「死ぬ覚悟」を自然に身につけられることと思います。それとともに、あなたが「生きる希望」を持って下さったなら、著者としてこれほど嬉しいことはありません。