No.0716 人間学・ホスピタリティ 『獄中の人間学』 古海忠之・城野宏著(致知出版社)

2013.04.24

 『獄中の人間学』古海忠之・城野宏著(致知出版社)を再読しました。
 捕虜生活体験者同士の対談本です。著者の2人は、太平洋戦争当時、満洲国務庁次長と山西野戦軍副司令官でした。しかし、敗戦により戦犯として18年もの間、シベリア・中国で抑留生活を余儀なくされたのです。この2人が、獄中生活と極限下での人間の生き様を語ります。

 当然ながら、獄中生活はひどいものでした。かゆ一杯、トウモロコシの団子で一日二食、おかずはなし、なんてザラ。トイレも部屋のすみにツボが置いてあり、大小便、すべてこれですます。室内の臭気は想像にあまりあります。
 しかし、この2人はへこたれません。胎がすわっているのです。

 古海氏は、シベリアから中国に引き渡され、旧満洲国に連れて行かれた時について、「ここに理想的な国家を造ろうと本当に情熱を燃やし、真剣に働いたところだからね。その満洲に戻ってきた。ここでなら死んでもいいと思った。本当にそう思った。だから撫順監獄にはいるまでも恐怖というのは、そんなになかった。人間とはそういうものじゃないのかな」と語ります。

 城野氏も、悲惨な獄中生活にあって、「考えてみれば太源の監獄では、まわりを見渡せば中国人ばかり。中国語を学ぶにはこんな恵まれた環境はない。そこで積極的に中国人の話を聞くようになった。あらゆる地方からきているから、方言が覚えられる。閨房の秘語までマスターしましたよ(笑)」

 驚いたのは、本書にはやたらと(笑)という表記が出てくることでした。悲惨な思い出さえ笑い話に変える日本男児の心意気を見よ!

 ホリエモンは「みなさまは間違ってもこの様な場所に来ないように注意して生活してください。間違って入ってしまった。もしくは入っている人は、真面目に勤めて、できるだけ早く出られるようにしよう」と述べましたが、本書からはそんな弱気は見えてきません。

 「入れというなら、何度でも入ってやるぜ!」といった気概さえ感じられます。ここまでの境地に至れば、人間、怖いものはないと思います。そして、そんな境地に至れるのも、「自分は間違ったことはしていない」という自覚と誇りがあるからでしょう。

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