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2013.07.07
『希望は失望に終わらず』三浦光世著(致知出版社)を読みました。
本書には、作家・三浦綾子が遺していった愛情あふれる日々と、よりよく生きるための大切なメッセージが、最愛の伴侶であった著者によって綴られています。
妻が難病パーキンソン病にかかり、この世を去る日まで、夫は愛をもって寄り添いました。最終章では、「人生で最も大切な魂の問題」が語られています。
「どんなに大きな悲しみでも、やがて時が経てば、忘却という作用によって、悲しみが薄れていくものである。しかしそれは、決して悲しみの克服ではない。悲しみから立ち直ったことではない。真に人の命を惜しむのであれば、その死をきっかけに、人生で最も大切な魂の問題に立ち向かって、何ものかをつかむのが本当の意味での命を惜しむということではないだろうか」
天国に旅立った綾子がエッセイ集『天の梯子』に書いた言葉です。1人の死によって、自分が大きく変わることが、本当に人の死を悼むことになります。自らの死を前にして、綾子は「人を励まし、希望と勇気を与えること、これこそ本当の人間の生き方ではないだろうか」との言葉を『光あるうちに』に遺しています。
本書には夫妻の写真が数多く収められていますが、そのどれもから2人の深い愛情が偲ばれてきて、感動してしまいます。
こんなに深く愛し合った夫婦はいないのではないでしょうか。
夫婦という、かけがえのない人間の絆を、われわれは「希望」として、「失望」に終わらせてはならないのです。本書は、愛する人を亡くした人たち、またグリーフケアを学ぶ人たちにとっての必読書だと思います。
なお、拙著『面白いぞ人間学』(致知出版社)でも本書を取り上げています。