No.0809 小説・詩歌 『笑いあり、しみじみあり シルバー川柳』 みやぎシルバーネット+河出書房新社編集部編(河出書房新社)

2013.10.10

 『笑いあり、しみじみあり シルバー川柳』みやぎシルバーネット+河出書房新社編集部編(河出書房新社)を読みました。
 帯には、「川柳で元気もらったぜ! ババア長生きしろよ! 毒蝮三太夫」とあり、毒蝮氏ご本人の写真も掲載されています。また、「シルバー情報紙で16年 大人気の投稿連載、傑作選!」とあります。そう、本書は仙台の高齢者向けフリーペーパー「みやぎシルバーネット」の1997年からの大人気連載「シルバー川柳」を書籍化したものなのです。地元シニアから毎月180通あまりの熱い投稿が今も集まり続けるとか。高齢者の方々の日々の暮らしの断片が素朴に詠まれた川柳ばかりです。無粋を承知で、わたしが好きな作品を以下に紹介します。

かくれんぼ 孫見当たらず 大慌て(小林吉平・83歳)

「ほらほらとあれ」で進行 同級会(三浦和・78歳)

嫁が捨て 姑拾って 減らぬゴミ(江刺雄治郎・72歳)

あれっ俺は 何処に何しに 来たのかな(板橋幸弘・80歳)

セールスを 愚痴で断る 妻の知恵(江刺雄治郎・78歳)

わし良縁 妻の判定 腐れ縁(菅原薫・71歳)

小遣いを せびる孫には 惚けたふり(小白正敏・70歳)

共白髪 誓ったはずが 妻茶髪(鈴木信子・61歳)

ボケ防止 生保レディーと 禅問答(林忠夫・67歳)

 見ると、同じ江刺雄治郎さんの作品が2首あります。しかも、その間には6年の歳月が経過しています。いかに、このシリーズが仙台の方々に愛されてきたかがわかりますね。最後に、本書の中にも「お葬式」をテーマにした以下の作品がありました。

葬儀場 赤ちゃんがいて 笑いあり(山岡京子・75歳)

 わたしは、この作品を読んで、胸がジーンとしました。というのも、今年の1月4日に亡くなった義父のことを思い出したからです。義父は自分が亡くなる数ヶ月前、母親(妻の祖母)の葬儀に参列しました。自身の余命を知っていたでしょうから複雑な心境ではあったと思いますが、火葬場まで同行しました。そのときの写真が残っているのですが、焼き場で待っている間に親戚の小さな子どもを見て笑顔を見せている義父の姿がありました。

 先祖から子孫へ、親から子へ・・・・・命には続きがあります。けっして、「老い」も「死」も不幸ではないことを教えてくれる川柳でした。

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